元HRC会長

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「ドキュメント72時間」個人的ベスト回のはなし

NHK「ドキュメント72時間」の「歴代ベスト10スペシャル」放送(8月予定)にあたって、視聴者投票が実施されている。投票は明日6/24まで。 そこで、個人的に印象に残っている回をいくつか取り上げてみたいと思う。ちなみに、私は伊達や酔狂で「ドキュメント72時間」を見てはいない。 定番回 まずは定番回。アンコール放送が多いのは【秋田 真冬の自販機の前で】(2015/3/6・2016/4/29)あたりだと思う。吹雪の中でわざわざうどんを食べに来る人たち、皿がぐるぐる回るダイナ

    • 一日一マッチ売りの少女 1・マッチ売りのショーゴ

       マッチは要りませんか? マッチは要りませんか?   ここ新宿二丁目ではマッチといえば木の棒ではなく肉の棒、擦って出るのは火ではなくこれ以上は当局による検閲が入るので察してほしい。人間には察する力がある。そこに賭ける。  ブルースシンガーを目指して上京したはずが、気づけば謎のコント集団「ズババ本舗」の前座コミックバンド「ぼんくらじゃん」でボイスチェンジャーのスイッチを入れたり切ったりしながら女性の陰部の名称を連呼しているうち、ショーゴは三十を迎えていた。  ストリップ嬢と暮

      • 僕はもう3回も勝手にふるえている

        『勝手にふるえてろ』、最高。自分の「名刺代わりの一本」を見つけたような気にさせられた。一度観て、原作本を読んでもう一度、大九監督のトークがあるというのでもう一度、計3回観に行った(まだ公開中だから、もう1,2回行くかもしれない)。  彼氏をつくったことがなく、中学時代の憧れの存在「イチ」を何度も脳内に召喚することによって日々妄想をふくらませている、いわゆる「こじらせ女子」である江藤ヨシカ(=松岡茉優)。そんなヨシカが会社の同僚に告白され(イチに次ぐ男としてヨシカの脳内では「

        • 2人1組の苦行 『さよなら渓谷』

           3度目の『さよなら渓谷』を観ていて、ふとノートを取ってしまった。普段は大事な感想を3つほど覚えておいて、観た後すぐにiPhoneのノートにそのキーワード3つと、それをもとにした短評を書くことにしているのだが、今回は家で観ていたこともあって、すっと近くのノートに手が伸びた。  そんなわけで、読む人もいないことは承知で、ここにも映画評を書いてみることにする。もう25だし、そういうことの一つでもやっておかないとダメだという気がなんとなくしたので。 ---  Filmarks

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        • 日記
          5本

        記事

          祖父のにこにこ

           大型連休に地元へ帰った。その中の一日で、父方の実家に行った。実家は北海道の南側に位置する港町で、大型プラントのぐねぐねやら、クリームソーダの色に塗られた大きな球形のタンクやらが在りし日の鉄工業の賑わいを遠く感じさせる。今は五月の爽やかな風が吹いている。風が爽やかだということは、鉄工業が渋っているということの証左に他ならない。  母方の実家は当時の住まいから遠くなかったこともあって、入院していた祖父を見舞うために毎週末訪れていたし、祖父を看取ったあとは同じ町に祖母を抱き込ん

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          ぱきらくん、あるいは私がおかしくなった訳

           私の創作はぱきらくんで始まったといっても過言では無い。思えば、物語を創る喜び、とか何とか言ってしまうとなんともナルシスティックで面映いのだが、おそらく他人に語って聴かせることに面白さを見出すことができたのはぱきらくんのおかげなのである。  と、ここで私はある感傷に浸りながら、実家の小汚いカーペットに平積みにされている小中学生時代の教科書の山の中にある、「さんすう 2」を思い出す。  あきらくんは、1こ300円のりんごを2こ、1こ200円のみかんを3こ、かいました。ぜんぶで

          ぱきらくん、あるいは私がおかしくなった訳

          気難しい友人の話

           僕には気難しい友人がいる。「友達」と呼ぶにはどこかこちらに「落ち度」があるようでいたたまれないので友人だ。  彼とは高校で出会った。深い低音を持つ彼は、その声のせいなのかクラスでは大きい声を出すこともなくいつもじっと佇んでいる生徒だった。「『雨ニモマケズ』だ」とその時は思っていた。  中学の同級生12人に対しクラスは6つ。最低でもひとりは同じクラスに顔見知りがいるだろうと高を括っていた僕は、見事に知らない34人だか35人だかそのくらいに囲まれた。「しまった」と思った。俺だ

          気難しい友人の話

          セザンヌとおばさん

          「科学的に理解して、論理的に喋れる人が一番出世するんだって」と僕を抜かしながら歩く二人組が話していた。 話題を出していた方を見やると、なるほど非科学的で幾何学的な体型だった。セザンヌだったら円筒形で表現したに違いない。 僕はエクス=アン=プロヴァンスの風に吹かれた事はないが、札幌の緯度がロンドンと同じだという事は知っている。スイスの冬は札幌のそれのように根暗なものではなさそうだ、ということも。 「考えと話でそれぞれ右脳と左脳で分けてるから賢くなるんじゃないかな」 さきの円筒形

          セザンヌとおばさん

          とりあえず花子を置いてみる

          まず、花子という女性をひとり置いてみる。ここから物語風景は立ち上がる。「花子はどこにいるのか、どこにいるのが適切なのか」を考えれば良いのだ。そうすると、新宿や渋谷では少し華美に過ぎることが容易に想像できる。花子はおそらく化粧下手である。それは、鬼瓦権三が毛むくじゃらで汗臭いのと同じ理由からである。ニュアンスはそれぞれ固有に意味を持ちうる。化粧下手な花子を渋谷や新宿に置いても、おそらくは街の色に押し潰されるか、向かいから歩いてきた新宿サブナードで働くアパレル店員二人組に笑われる

          とりあえず花子を置いてみる

          人間に疲れたあかつきに

          一日が悠久の如く長く感じられる。曇天曇天の二日間から打って変わってびっくりするほど晴れた神宮球場ヤクルトオープン三連戦の最終日。実際にびっくりしたのだが、「びっくりするほど」というのは、まあ表現のあやだ。ここで「言葉のあや」ではなく「表現のあや」としたところに自分の成長を感じる。いつもならやはり「言葉のあや」とするか、「宮間あや」などやって興ざめなのであるが、良く我慢している。 我慢しているといえば、今日のヤクルトも良く我慢した。というより、お互いに貧打で決め手を欠いた

          人間に疲れたあかつきに