夜アニばかり見ながらお酒をすすり泣いていた父の話。
少しスケベ要素の強い物もあり、父の下着を干させられながら見るには耐えかねるものもあった。
「おっぱいボインボイ〜ン!」
「〇〇くんだーいすき!」
みたいなスケベ系ラブコメを娘の前で見ている父の神経が理解できなかった。
鉄仮面の父が、酒をドバドバすすりながらアニメ見て泣いている姿は、私を複雑な気持ちにさせた。
(ちょうど進撃の巨人や化物語、フェイトあたりかな…)
当時付き合っていた男性が、
「今のアニメは一筋縄ではいかない人間の内面を描いたものが多い。
不遇なキャラクターも多く、俺は共感する」
アスペルガー症候群の彼が言うのだから、「共感を呼ぶ」のは間違いないのだろう。
そう思いつつ、私は自分自身の治療や仕事、父の世話、彼氏の世話、家事、大掃除…と簡単に言えば、治療と仕事と家事に追われアニメを見る時間は取れなかった。
父は複雑な家庭に生まれた。
父親はそこそこの企業の転勤族。
おねえちゃん、おにいちゃんだと思っていたら実は2人は養子で、自分だけこの家庭の実子だと知った少年父は、母親に甘えるのをやめたらしい。
でも、人の気持がわからない障害だったため、幼稚園や小学校ではお友達を泣くまでいじめたり、からかったり…。
「可愛いな!」と思った女の子には泣くまで手を出したりして、結構な問題児だったらしい。
唯一の実子である父を祖母は大変可愛がり、私が仕事に就いても必ず電話をしてきた。
「うちの〇〇さん←父
はね!
お酒が大好きで高血圧になりやすいから、塩分控えめでレモン汁で味付けするように!
高血圧向けレシピ本送ったからね!
参考に毎日ご飯作るんだよ!」
はいはい…。
息子にお酒を控えるように言ったほうが早いのではないかと思ったが、私が子供の頃の手の骨折で料理が出来なくなった際、父は一気に16キロ太って産業医にボッコボコに怒られた。
私の毎日の一汁三菜は、効果てきめんだったのだ。
まぁ、60になってもカカァが生活に口出ししてくる父もある意味毒親育ち。
子供の頃に好きだったアニメは❝みなしごハッチ❞だったというから、本当は母親に甘えたかったのだろう。
だから、不遇なキャラクターの戦う姿や、敗れて消えゆく姿を見て、泣くんだろうな…
「ランサー…死んじゃった…可哀想…」
60のオジサンが酒飲みながら泣いてる…
私パンツ干す💧
未だアニメが人気を博しているのはそれだけ不遇な人や、アダルトチルドレンが増えた証だと思う。
私は父が許せない。
暴言、暴力で家庭を破壊した彼を許せない。
母を脳まで破壊し廃人にした父を許せない。
妹を血まみれの人間噴水にした父も祖母も許せない。
人間を潰す無神経さが、
「俺は悪くない」と虐待を止めず傍観していた無神経さが許せない。
ただ、彼もアダルトチルドレンだったのだ。
だから私は家族を許さない。
けれど、憎まないスタイルを理想としている。
チョロっと書いた発達障害持ちの相談員と支援員が鬼滅の刃で盛り上がって、私のモニタリング時間にも関わらず、そうならなかった時も「この子たちも被害者なのか」と諦めた。
呆れはしたものの、腹は立たなかったのだ。
不遇な人が増えたのか。
不遇に「病名」や「カテゴライズ」がなされる時代になったのか。
涙を流しながら焼酎を浴びる父…
その視線の先には戦い抜いて消えゆく不遇なキャラクターが映っていた。
だが、父の視線の先に私はいなかったのだ。
家事を全て10歳から担ってきた私は、彼にとっては不遇ではなかったのだろう。