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母は私の箸を誰に売ったのか。

たまに思い出す「お箸」がある。

私は20代はじめ頃に家族の暴力から逃げるために精神科に入院させてもらったことがある。

入院してひと月くらいは病院の関係者も、私が母たちから逃げるために入院してきているのを理解してはいなかった。
しかし、私の母を見た瞬間から看護師さんたちは「理解」してくれた。

私がシェルターとして入院しているわけだから、当然 母側は野放しだった。

私が帰宅をしたとき、私のお茶碗もお箸もコップもなかった。
私がいままでコツコツ集めたお気に入りの食器とお気に入りのインテリア(大抵は工芸品の小さな置物)たちが忽然と消えていた。

あのひと勝手に売ったんだそうな。

フリーマーケットだかガレージセールだか知らないが、お金にかえたそうな。

確かにおそろしく高価なものではなかったかも知れない。

10代の女の子だった頃からコツコツ集めたんだから超絶高価というわけではない。

だけど、ひとつひとつ私は作った方から買ったのだ。

私にはどれも大切なものだった。

人間不信で友達が作れなかった私はデパートなどで行われる民芸品や工芸品、焼きものなどの即売会によく出掛けていた。
そういうところに出店する作家さんたちとお話をするのが私にとって楽しみであり、『会話能力を保つ方法』だったのだ。


私が使ったお箸を誰に売ったのだろう?
私の母が、どんな気持ちで『自分とそっくりな顔をした二十歳の娘が最近まで使っていた箸』を売ったのか…


私、こればっかりは理解る(わかる)日は来ないと思ってる。

わかるつもりもないけれど、どういう心理だったのかと、ふと考えるときがある。

そしてあの麺箸と同じ性能のお箸を探してしまう(スーパーの入り口とかでたまにやってるやつ)。

…ないよなぁ。

そもそも中古の箸って誰か買うのか?
そう考えると、あのお箸は母が捨てたり折ったりした可能性もある。


塗りの箸ではなく、木目の綺麗な大きな角箸で珍しいものだった。


※※※※※おまけ※※※※※

私の場合高くても一つ3000円くらいの作品ばかりだったけど、仮に数万円するような作品を実母が勝手に売り払っていた場合はどうなるのだろうか?変な話に聞こえるかもしれないけど、昔は注目されていなかった民芸品なんかはプレミアがつくこともあるのだ。

ー検索、検索。

…おお、やはり罪に問えないのか。
細かい取り決めはあるが、夫婦間ですら器物損壊罪にも窃盗罪にも横領罪にも問うのが難しいみたい😓

親子なら尚更不可能に近いな。

そもそも、訴えを起こすのに一苦労なのか…。


まあ、金額の話じゃないし。

きっと自分の古着を売るのと変わらない感覚で売ったんだろうね。

いま、私が使っている湯呑と土瓶は、私が入院する際に別な場所にしまってあったから助かったんです。
この子たちもサバイバーだったんだね…😭

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