賛否を明らかにしない共有者がいる事例における管理事項の決定 共有解消ドットコム 弁護士 高谷滋樹
社会経済活動が広域化する中で、共有者が共有物から遠く離れて生活し、共有者間の人間関係が希薄化する事例が増えてきました。
これにより、共有物の管理に関心を持たず、賛否を明らかにしない共有者が出てきてしまい、共有物の管理が困難になっていました。
そのため、賛否を明らかにしない共有者がいる場合には、裁判所の決定を得て、その共有者以外の共有者の持分の過半数により、管理に関する事項を決定することができるよう、改正がなされました(改正民法252条2項2号)。
この規定は、賛否を明らかにしない共有者の持分が、他の共有者の持分を超えている場合や、複数の共有者が賛否を明らかにしていない場合であっても利用できます。
ただし、変更行為や、賛否を明らかにしない共有者が共有持分を失ってしまうことになる抵当権の設定といった行為には、利用できません。
手続の流れは、①事前の催告、②申立て・証拠提出、③1カ月以上の賛否明示期間・通知、④他の共有者の同意で管理をすることができる旨の決定、⑤共有者間での決定となります。
まず、①事前の催告では、共有者は他の共有者に対し、相当の期間を定め、決定しようとする管理事項を示した上で、賛否を明らかにすべき旨を催告する必要があります。
ここでいう相当の期間は、通常2週間程度とされます。
また、法律上、催告の方法が定められてはいませんが、裁判で証明するという観点から、書面等で行って証拠化しておくことが重要であるとされています。
次に、②申立て・証拠提出についてです。
まず、管轄裁判所は、共有物の所在地の地方裁判所となります。
また、賛否不明であることの証明をする必要があり、つまり事前催告に対して対象の共有者が賛否を明らかにしていないことを証明する必要があります。
さらに、対象行為である、決定しようとする管理事項を特定する必要があります。
そして、③1カ月以上の賛否明示期間・通知では、裁判所が対象共有者に対して賛否明示期間内に賛否を明らかにするよう通知します。
その期間内に賛否を明らかにした共有者がいた場合、当該共有者については、④において裁判所が認容決定をすることができません。
そのため、⑤共有者間での決定において、当該共有者を排除することはできません。
もしも、賛否を明らかにしない共有者に加えて、所在等不明共有者がいる場合には、本手続とあわせて、所在等不明共有者の手続をすることによって、これらの手続で排除される者以外の共有者で決定し、管理することができます。
実際には,具体的・個別的な事情によって法的な分類が異なることもあります。
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