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小説「哀愁のアクエレッロ」:八章・再会

 三年後の夏、再びヨーロッパに飛んだ。大学四年生として迎える夏である。就職の内定も決まった後の、人生で最も悩みの少ない時期であった。僕はヨーロッパを縦断してトルコに抜ける計画の中に迷わずフィレンツェを組み込んだ。言うまでもなく、Acquerelloを訪れるためである。

 あれから三年が経つ。ルイゼッラはどうしているだろうか?フランチェスコも少しは料理の腕をあげただろうか?いや、その前にAcquerelloはまだあそこにちゃんとあるのだろうか?あの客の少なさが続いていたら、ひょっとしたらつぶれてしまっているのではないだろうか?一抹の不安を胸に、またカテドラルを巻くようにして裏の路地へと入っていった。頭上にはやはり、ジョットーの鐘楼が威風堂々とそびえている。この鐘楼は何百年となく、そうして佇んできたのだ。たった三年の間にその威厳を失ってしまうことなどあるはずもなかった。

 三年前の夜、Acquerelloの三人に対して「チャオー!」と叫びながら別れたあの角にさしかかると、心臓の鼓動がにわかに早くなった。歩幅も自然と狭くなり、歩くピッチがあがる。その路地には三年前と変わらない優しい夕暮れの光が、あたりまえのように斜めに差し込んでいた。

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