特別な存在になりたい
しばらく忙しく更新が途絶えてしまいました。お久しぶりです、お元気ですか?
今日は最近読んだ本についてお話しします。
朝井リョウ『何者』を読んで。
中学生の読書感想文みたいなタイトルになってしまいましたね。
映画化もされたこの小説、読んだことがある方も多いのではないでしょうか。
就活を遠くない未来に控えている大学二年生の私には心に突き刺さる言葉ばかりで少し読んでいて苦しかったです。
一言で言ってしまえば、私は拓人です。
この物語の主人公。苦しくて、苦しくてしょうがないのに、「自分はカッコ悪いことはしなくても大丈夫」というプライドからいつも一歩引いた位置から人間観察をしている大学五年生。
彼はとにかく言葉が巧い。不思議な説得力を持って私たち読者に彼の仲間の「カッコ悪い」ところを語る。
私はとにかく彼の言葉に共感しました。
「想像力のない人間が嫌いだ」
「頭の中にあるうちはなんだって傑作なんだよなあ」
「ほんの少しの言葉と小さな小さな写真のみで自分が何者であるかを語るとき、どんな言葉を取捨選択するべきなのだろうか」
私は、私をほんの少しの言葉で語るとき、どんな言葉を選ぶだろうか。
考えても、浮かばなかった。
私は何者にもなれない。そんな不安が心にこびりついて離れない。
奇妙な不快感。
拓人の目線から見る『何者』の世界は、そんな奇妙な不快感がページを繰るごとに色濃くなっていく。
仲間との衝突。それぞれが隠していたかった秘密。じわじわと明らかになる価値観の齟齬。
誰もが特別な何者かになりたくて、必死にあがいて、でもどうにもならなくて。
みんながバラバラになってしまった、そのあと。
拓人は、必死にごまかしてきた自分をさらけ出され、糾弾され、自分が「カッコ悪い」という事実を突きつけられます。
「想像力のない人間が嫌い」と言っておきながら、自分もその一人であったことに気が付きます。
中身のない自分を必死に独自の言葉で取り繕って、自分は大丈夫だと言い聞かせて―そしてそれは、私も同じなんです。
思えば匿名でこんな文章を書いていることも、「私は他のみんなとは違う」と思いたいだけかもしれない。
堂々と顔をさらして「私の言葉」を叫ぶ勇気はかけらもなくて。
私は特別な存在になりたいのかもしれない。
私は、私が凡庸であることを認めたくないのかもしれない。
そのために、他人よりほんの少しだけ得意な「言葉」という武器を振りかざしているのかもしれない。
私は、私がわかりません。
本当に、からっぽ。
考えても、考えても答えは出なくて、出口のない迷路にいるみたいで。
私の言葉は所詮二番煎じなのだけれど、それでも書かずにはいられなくて。
そう、それはまさに拓人の人間観察のようで。
取り繕った世界―そのすべてが破綻したそのあとで、拓人は自分の「カッコ悪さ」を認めます。
それが、私と彼の「違い」。
私はまだ自分が「カッコ悪い」ことを認められない。
しょうもないプライドが邪魔をしてそうすることを許さない。
いつか、私も認めることができるだろうか。
自分を知る。それは簡単なことじゃない。
でも誰もが直面する、決して避けては通れない問題で。
私も拓人のように醜くあがいてみたい、と思います。
本当の意味で「想像力のある人間」になりたいです。
最後に付け足して、少しだけ私の「カッコ悪い」話を。
私は、なにかそれらしいことを書くとき、必ず言い切りの形になってしまいます。ですますが抜ける、といった方がわかりやすいでしょうか。
これはもう完全に無意識なのですが、おそらく「文章を書いている私」を創り出しているのでしょうね。
匿名で、ここだけの私で。そうやっていくつもの仮面をかぶって、本当のワタシを隠そうとしているのだと思います。
醜い。本当のワタシをさらけ出せたらどれだけ楽だろうか。
でも、これは一つの「逃げ道」なんです。
知り合いが誰もいないこの場所で言葉を吐き出せることが、私の数少ない「逃げ道」なのだと思います。
見れば見るほど「カッコ悪い」。嘲笑ってしまいたいほどに。
しかしやはり、ここでの私もワタシの一部なのでしょう。
「想像力のある人間」になるにはどうしたら良いだろうか。そう、毎日のように考えます。
きっとそれは答えのない問いで、おそらく凡人である私には答えになんてたどり着けなくて。
大げさな言葉でからっぽな自分を護る私は、たぶん傍から見れば「寒いヤツ」でしょう。
そんなカッコ悪い私だってワタシなんだから、と正直に受け入れられる「大人」になりたいですね。
就職活動をする未来の私へ。
そのころのワタシはそんな大人になれていますか?
きっとなれていないでしょうね。
未だにちっぽけなプライドに振り回されている様子が目に浮かびます。
でも、そんな私もワタシらしいね。
ゆっくり、ゆっくりと、大人になっていこう。
まだ人生、始まったばかりなんだから。
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