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理学部物理学科での経験:進学前と進学後のギャップについて

私は私立大学の理学部物理学科を卒業しました。進学を決意した理由は、予備校時代の物理の先生の授業が非常に楽しく、物理に対する興味が湧いたからです。しかし、正直なところ、大学に進学する前に十分なリサーチを行っていなかったため、実際に学科で学ぶ内容や研究活動には驚きの連続でした。この記事では、私の経験をもとに、理学部物理学科での学びや日常について、進学を検討している方々に伝えたいと思います。


進学前の印象と現実:理学部物理学科と理工学物理学科の違い

進学を決意する際、私は「理工学物理学科」と「理学部物理学科」の違いをあまり意識していませんでした。そして、どちらも物理を学ぶことができるし特に調べていませんでした。しかし、実際に学んでみると、その違いは驚くほど大きかったのです。

理工学物理学科の特徴: 理工学物理学科は、名前の通り、理学と工学の中間に位置する学科と言えます。ここでは、物理学の知識を実際の応用に繋げるための学びが中心となります。具体的には、機械力学や材料力学といった、実際の機械や材料の動きや性質を学ぶ講義が多く設置されています。

理学部物理学科の特徴: 一方、理学部物理学科では、物理学の基本的な理論を深く、数学的に学ぶことが中心です。高校で学んだ力学や電磁気学の知識をさらに発展させ、より高度な理論を学ぶことになります。実際の応用よりも、物理の法則や理論の背後にある数学的な構造を理解することが重視されます。そのため、機械力学のような実応用に特化した講義は少ないです。

私の本心
理工学部をイメージして進学した結果つまらない、意味の無いことやってんなと感じることが多かったです。
やっていることのほとんどが高校数学の発展です。力学も電磁気学もすべて数学で語るようになります。

勉強法のアドバイスとして、一つの教科書で勉強することはできないと思います。教科書それぞれに得意分野があるので、図書館や研究室にあるいくつかの教科書を使って勉強することをお勧めします。(特に量子力学

1年生~2年生の理学部物理学科での学び:数学と物理の深い関連性

大学の理学部物理学科に進学すると、1年生から2年生にかけての学びは、高校時代とは一味違った深い内容となります。主に力学、電磁気学、物理数学、熱力学などの基本的な科目を学ぶことになりますが、これらの内容は高校の復習とは言えません。

数学が物理学の核心となる道具として頻繁に登場します。微分、積分、行列、三角関数、複素数、曲線など、数学の基本的な概念が物理の現象を記述するためのキーとなります。特に、電磁気学では、単なる回路の話ではなく、電荷の振る舞いを学ぶことになり、これは難しく感じるかもしれません。また、今後学習する量子力学、統計力学などはさらに使う数学が高度になるので、ここで怠けると後々苦労することになります。

また、力学では微分方程式、電磁気学ではベクトル解析、物理数学ではフーリエ変換やラプラス変換、偏微分方程式といった高度な数学的手法が必要とされます。これらの数学的な技術は、物理の現象を正確に記述するための不可欠な道具です。そのため、この時期は数学と物理の関連性を深く理解することが求められ、多くの学生が挑戦の連続と感じることでしょう。

しかし、その中での小さな達成感や発見は、学びの喜びとなります。例えば、高校で公式として覚えていたものを、自らの手で導き出す経験は、物理学への理解を一層深めるものです。さらに、過去の偉大な学者たち、例えばニュートンの業績を学ぶことで、物理学の歴史や背景を感じ取ることができ、自らの学問への誇りを深めることができるでしょう。

結論として、1年生から2年生の期間は、物理学と数学の関連性を深く学ぶ貴重な時期です。挑戦は多いですが、その中での発見や理解は、物理学への情熱を一層高めるものとなるでしょう。


3年生~4年生の理学部物理学科での学び:先端の物理学と研究活動

3年生:先端の物理学への挑戦

3年生になると、ようやく20世紀以降の物理学、すなわち量子力学、統計力学、(特殊)相対性理論といった先端の物理学に触れる機会が増えます。

  • 量子力学:量子力学は、微小な粒子の世界を記述するための理論です。古典物理学とは異なる非常に独特な性質を持ち、物質の波動性や粒子性、重ね合わせの状態、エンタングルメントなど、直感的に理解しにくい現象が多く存在します。また、シュレディンガー方程式やハイゼンベルクの不確定性原理など、数学的な側面も非常に高度です。

  • 統計力学:統計力学は、多数の粒子から成る系のマクロな性質を、ミクロな粒子の運動から統計的に導き出す学問です。ボルツマン方程式やフェルミ・ディラック統計、ボーズ・アインシュタイン統計などの理論を学び、物質の熱的性質や相転移を理解します。

  • 相対性理論:アインシュタインによって提唱されたこの理論は、高速で動く物体や重力の強い場所での物理現象を記述します。特殊相対性理論は、光速を超えることはできないという原則を基に、時間の進み方や物体の長さが相対的に変わることを示しています。一方、一般相対性理論は、重力を時空の歪みとして捉え、天体の動きやブラックホールなどの現象を説明します。

この時期、授業だけでは理解が追いつかないことが多く、自習が不可欠です。ぼっちで学生をしていると過去問が手に入らず、留年のリスクも高まるので注意が必要です。

4年生:研究活動と卒業論文

4年生になると、研究室に配属され、個々の研究テーマに取り組みます。研究テーマは多岐にわたり、宇宙物理学、物性物理学、磁性、レーザー科学、素粒子物理学などがあります。6月までに研究テーマが確定し、7月と12月には中間発表があり、翌年1月には卒業論文の提出、2月には最終発表が行われます。

この年度は、3年生で学んだ先端の物理学が研究に活かされます。研究は困難な場面も多いですが、先端の物理学に触れる貴重な機会でもあり、その価値は非常に高いです。卒業論文が形になっていれば、卒業できないことは少ないので、最後まで頑張りましょう。

総括

3年生から4年生にかけては、物理学の先端に触れ、研究活動を通じてその深みを知る重要な時期です。挑戦は多いですが、その中で得られる知識と経験は計り知れません。この貴重な機会を最大限に活かし、物理学への深い理解と研究への情熱を育んでください。


卒業後の振り返り:物理学から得たもの

卒業してしばらく経った今、私が得意としている数学のスキルは、一般的な人々と比べて「それなりにできる」という程度かもしれません。しかし、大学での学びは単なる数学や物理の知識以上のものを私にもたらしてくれました。

物理学や数学を学ぶ過程で、複雑で難解な問題に立ち向かい、それを解明するための論理的思考やアプローチの方法を身につけました。この「難しい問題を前にしても逃げずに取り組む」能力は、人生の様々な場面での問題解決スキルとして非常に価値があると感じています。

正直なところ、理学部物理学科を一概におすすめすることは難しいかもしれません。しかし、私自身はこの学びの経験を通じて得たものが大きいと感じています。特に、高校時代に数学や物理に興味を持っていた人にとっては、大学での物理学の探求は非常に魅力的で、楽しい経験となるでしょう。

最後に恩師の言葉を皆さんに送ります

人生に科学の視点を


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