3つのテンとひとつのホシ

夢の記録とエピソード記憶の記録。空想と現実の世界を行ったりきたり。心のつぶやき、言葉が…

3つのテンとひとつのホシ

夢の記録とエピソード記憶の記録。空想と現実の世界を行ったりきたり。心のつぶやき、言葉が溢れて、それを文字にする。そう、三つ目の作業、記録として残しておこう。

最近の記事

団地

高校生の夏休み、ちょうどお盆の時期だっただろうか 友人のYに誘われて、Yの自宅に行くことになった。家族が不在で気兼ねなく遊べることが動機だった。母親は実家の東京に先に帰省し、父親はどこかの大学で働いていてお盆なのに出勤しているとのことだ。 Yの自宅の最寄り駅はT駅。あまり使わない沿線で、初めてこの駅にやってきた。私の家からは県を挟むので少し遠い。 Yが「やぁ」と片手を振り挨拶を交わして自宅に向かった。 公園みたいな広場の横道から入り、少し薄暗い建物の団地がYの自宅だっ

    • Aの家

      10年来、Aに髪を切ってもらっている。 髪型もずっと変わらずだ。 Aは夫婦で美容院を経営している。 A自身もおしゃれで、美容院の店内も落ち着ける空間だ。 K駅の近くのAの自宅に招かれ遊びに行った。美容院の店舗とは別だ。 自宅に到着した瞬間、イメージと違った外観に驚いた。古民家風の外観だったからだ。 Aは「あっ、来てくれた。散らかっているけど、どうぞ」と言って私を迎え入れた。 玄関を入ると土間になっていて、まだ引っ越して間もないのか段ボールや荷物が雑然と置かれてい

      • 高校1年生

        高校に入学した当初 隣の列の前斜め向かいにOが座っている。 Oはオレンジの髪の毛に、派手なピンクかオレンジのフリースを着ていた。 笑うとエクボができて、まだまだあどけない表情だ 性格はサバサバしていて、わからないことは「わからない」とはっきりいうタイプだ。誰とでも仲良くなれて、かと言ってどこかの集団には属さない、そんな人だ。 とても頑張り屋さんで、大変な課題が出ても黙々とこなしていく。努力家だ。 Oとは長い付き合いで、とても親密なわけでもないが、ちょうど良い距離感

        • 満員電車

          早朝から通勤のために電車に乗り込む。 あぁ、またこの中に自分が吸い込まれていくのかと気持ちが落ち込む。 電車の扉は口 車内は口腔内 たくさんの人が口の中に押し込まれていき、所々で吐き出されていく 終点駅で大量に吐き出され、電車の車内は空っぽに そんな毎日だ。 実際に呼吸がしにくい。 口腔内いる私は、いつ外界へ出られるのかと時が経つのを待つ。 下車したら、フーとひと息。脱出できた気持ちだ。 そして新たな、満員電車に乗り継いでいく。 あぁ、今通り過ぎた人も同

          13歳になったら

          いつだろうか、スタジオジブリの魔女の宅急便を見たのは… 13歳になったら、もしかしたら魔法が使えてホウキで空を飛べるかもしれないと考えていた。 そして、13歳になってもホウキで空を飛べなかった。 わかっていたけれども、現実に直面した。 13歳というのは、何かの節目なように感じる。 13歳の私は、空は飛べなかった。同時期に、英語の学習が始まった。新しい世界に飛んでいく時期だったのだろうか。 魔女はよく耳にするが、男性なら魔王になるのだろうか?大きな意味では魔法使いだ

          Tokyo

          夕暮れ時だろうか、高速バスに乗って私は東京にやってきた いつもは新幹線の利用だが、なぜこの時はバスだったのだろうか?覚えていない。 たまたま、小学校の同級生Uも同じバスに乗っていた。 私は目当ての美術館に行くのが目的であった。Uは、どうやら仕事のようだ。何十年も月日が経っての偶然の再会だ。 小学生の頃のUの面影はあるもののすっかり大人になっている。 小学生のUは、少し色が黒くて物知り博士、走りも早かったように覚えている。ガリ勉という感じではなく、自分の知りたいことを

          K大橋の出会い

          引っ越して何年経ったのだろうか? 知り合いがいない、この街にやってきた。 知り合いがいないと言うのは、少し語弊がある。Rに連絡をしたが、返事がなかったのだ。おそらく、この街の近くで働いているはずだ。詳しいことはわからない。 私は、引っ越してから、頻繁にK大橋を渡っている。 K大橋は、市と市を結ぶ大きな橋だ。ずいぶん先に高速インターがあるようで大型トラックもよく通っている。工場もその先にたくさんあるからだろう。また、工場で働く人が通う車、工場バスも走っている。大きな道路

          百足

          屋内と屋外の狭間の空間がある そこに学生らが、たむろしている 暑くて埃っぽいその空間は、夜になると夏場でも少し涼しい 学校が山に隣接しているせいか 突然「うわぁぁぁ、ぎゃー」と声が響く。 皆、一斉に何事かと思い、Cを方を見る。 Cの靴の中にムカデが入っていて、Cは気づかず履いてしまったのだ。 比較的大きいムカデである。 Cは、作り笑いで「どうしよ…びっくりした。刺されたかもしれん」と言っている。 救護室に行くように勧められ、MがバイクでCを送っていった。

          順化

          ある場所まで、ほぼ毎日車で通っていた 毎日毎日、おおよそ同じ時間に同じ場所を通って通っていた 毎日毎日、同じ風景を見ていた。特にかわり映えもしない 1日が始まり 1日が終わる 私は決意して車を手放した。 私は車種にこだわりはない。順調に動けばなんでも良い。 車を運転するのは好きだ。どこでも自由に行ける。 でも、私は手放した。 車が手元からなくなると、その不便さを目の当たりにする。 いつも数分で行っていた、あの店まで徒歩20分。 また、あっちの店まで徒歩3

          サンピンチャ

          沖縄に行った7月 Qも一緒だった 「あっ、ちょっと待って」と呼び止められ、私が振り向くと Qは自動販売機の前で迷わずボタンを押す。 そして、一連の動作かのように、すぐに取り出し歩きながらペットボトルのキャプを開けてグビィッと、ひと口飲む。 そこには『さんぴん茶』と、派手派手しい黄色のパッケージをバックに書かれていた。 Qは「やっぱり、沖縄に来たからさんぴん茶だよね」と嬉しそうに話している。 今では、ジャスミンティーは普通に売られているが、当時は、そうでもなかった

          6月

          昔住んでいたところは市の外れで、公共交通機関もなく不便であった。 私は、自転車と原付バイクで移動していた。 梅雨時期は、雨に打たれながらバイクで片道30分のイオンまで買い出しに行っていた。スーパーは平日5時で閉まるからだ。 休みの日もだいたい暇していた。雨なら尚更だ。 6月のある日、ランチのお誘いがあって近くのコンビニまで迎えに来てもらう。ランチと言っても、そんな洒落たものではない。 ある時はラーメン、ある時はパスタ…という感じである。 だいたい決まってその後はド

          雀の気持ち

          学生時代に現代美術論という科目を履修していた。 うる覚えだが、確かそんな名前の科目だった。 とても興味があったわけではないが、単位稼ぎと空きコマを埋めることを兼ねて履修していたのだ。 とはいえ、私はこの講義にのめり込んでいってしまった。 教授が、現代の芸術家の作品を映像で流し説明していくというもの。教科書もレジュメもなかったと思う。 そして、この講義の試験はレポートであった。 大抵は、時期になれば試験のレポートの内容を掲示板で貼り出されるのだが 教授はその3週間

          牛蛙

          梅雨 ずっと雨が降っている。 洗濯物も乾かない。部屋が湿気ている。 夜になると、どこからか雨蛙の声が聞こえる。 網戸がなく、虫が入るから開けられない。 それはとは別で、「モーモーモー」と全然違うリズムで聞こえてくる。 牛蛙だ。 誰も住んでいないと思われがちな古いアパートの3階 そこの一室から、カエルの声を聞く。 牛蛙の声が聞こえるが、アパートから下を眺めると、今はもう使われていない古い牛舎がある。 一瞬、牛の霊かと思ってしまう。 雨が降らない日は、別の虫

          好きな季節そうでない季節

          好きな季節は3月の終わりから5月頃まで。 この時期は、天気も良くて気持ちいい。 桜のピンクを筆頭に、花も色とりどりに鮮やかに話しかけてくれる。 桜が終わって、次は新緑の時期である。緑がいろいろな表情を見せてくれる。注意が必要なのは、桜の木から(頭上から)毛虫が糸伝いに落ちてくることだ。そこさえ、気をつければ気持ちの良い季節だ。 6月は雨が降って湿気がこもる。部屋の本棚や机、キャビネットにカビが繁殖する。好きではない季節である。 カビを繁殖させまいと、5月の天気の良い

          好きな季節そうでない季節

          初夏の旅行

          高校時代 一学期の期末試験が終わり、翌日の朝、登校中だった Dが自転車で走りながら「あ〜、なんかもう。。。。」とモゴモゴ、何かを言ってくる。 通っている場所が、高架道路の下でちょっと薄暗い。ちょうど曲がり角でガードレールに沿って走っていく。 少し前を自転車で走っていた私が「え?まぁまぁ、何かあったのかぁ?」と軽く受け止め返事をする。 Dが「今日さ、旅行に行こうよ」と突然誘ってきた。 私は少し驚きながらも「行こうか」と同意した。 学校が終わり、駅で待ち合わせた。

          カラオケ

          予備校に通っていた ある夏休みの休日、その仲間とK駅近辺のカラオケ屋に行った メンバーは、カラオケを発起したヤンキー風のM、ガンダム好きのG、少年のようなA、そして私だ。他にも何人か誘ったが、用事があるとのことだった。 私たちは、学校という環境であれば、おそらく交わらなかっただろう。予備校という、似たような夢や同じ目標に向かっている集団だから、心の中で通じるものがあったから、出かけることになったのだろ。 カラオケボックスに入ると、Mが「よっしゃー」と意気込んでタッチパ