牛蛙
梅雨
ずっと雨が降っている。
洗濯物も乾かない。部屋が湿気ている。
夜になると、どこからか雨蛙の声が聞こえる。
網戸がなく、虫が入るから開けられない。
それはとは別で、「モーモーモー」と全然違うリズムで聞こえてくる。
牛蛙だ。
誰も住んでいないと思われがちな古いアパートの3階
そこの一室から、カエルの声を聞く。
牛蛙の声が聞こえるが、アパートから下を眺めると、今はもう使われていない古い牛舎がある。
一瞬、牛の霊かと思ってしまう。
雨が降らない日は、別の虫の声が聞こえてくる。
誰もいないかのように、カエルや虫の声のみが聞こえてくる。
私は、この世で一人の人間なんだろうかと。
錯覚する。
そして、寂しく感じる。
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