Aの家

10年来、Aに髪を切ってもらっている。

髪型もずっと変わらずだ。


Aは夫婦で美容院を経営している。

A自身もおしゃれで、美容院の店内も落ち着ける空間だ。


K駅の近くのAの自宅に招かれ遊びに行った。美容院の店舗とは別だ。


自宅に到着した瞬間、イメージと違った外観に驚いた。古民家風の外観だったからだ。

Aは「あっ、来てくれた。散らかっているけど、どうぞ」と言って私を迎え入れた。

玄関を入ると土間になっていて、まだ引っ越して間もないのか段ボールや荷物が雑然と置かれている。


家の構造が複雑で、1階と2階の間に中2階という空間があって、その空間がとても狭い。まるで忍者のようにすり抜けられる隙間がある。

Aの子どものHとYもいて、一緒に遊んだ。

中2階の空間は布団も敷きっぱなしで、そこでじゃれあいながら遊んだ。子どもたちは、隙間から1階を行ったり来たりしている。


私はAに「お店とはだいぶ違った雰囲気だね」と口にした。

Aは「だいぶ古い家でこれから作っていくつもりだ。子どもも小さいしゆっくりリフォームするよ。お店も始めたばかりで大変だけど…」と言った。

確かにリフォームは必要かもしれない。お世辞でも心が安まる空間ではなかったからだ。かろうじて家族4人が過ごせる寝室とキッチン&ダイニングがあったからだ。


Aのプライベートの住居と職場である店舗の差に驚いた。

どちら本来のAなんだろう


どちらもAなんだろうか


そこで記憶は途絶えた

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