雀の気持ち

学生時代に現代美術論という科目を履修していた。

うる覚えだが、確かそんな名前の科目だった。

とても興味があったわけではないが、単位稼ぎと空きコマを埋めることを兼ねて履修していたのだ。

とはいえ、私はこの講義にのめり込んでいってしまった。

教授が、現代の芸術家の作品を映像で流し説明していくというもの。教科書もレジュメもなかったと思う。

そして、この講義の試験はレポートであった。

大抵は、時期になれば試験のレポートの内容を掲示板で貼り出されるのだが

教授はその3週間前から、「あ〜皆気にしている試験だけどね、レポートです。筆記ではありません。掲示板には『○○○・・・・○○▲▲について述べよ』とテーマが貼り出されるが、レポートのテーマは『あなたが思う美とは何かを述べよ』だ。なんでも美のテーマは良いのです。間違わないでね」と講義の始まりや途中、終わりに言っていた。

それは、もう耳にタコができるくらい言っていた。


その現代美術論のレポートのテーマだが

私は「雀の気持ち」というテーマで論じた。

雀目線(主体)になって、登場人物に合わせて雀が一番美しいと思う場所はどこだろうか?ということを論じた。

あくまでも、主体は雀であり、それを客観的に分析するのが私である。

例えば、「Aであれば、雀は彼女のトレードマークのメガネの縁に止まる。なぜならば、雀は…思ったからだ。」「Qであれば、雀は彼の頭に留まろうと考えたが、薄毛なためツルッと滑ってしまった。だから、雀は…と思い…した」のような論じ方である。

レポートに登場する人物は、すべて教授が知っている実在する身近な人物で設定した。


一見馬鹿げているレポート内容だが、A評価だった。


そのレポートは、データとして残っていない。

もう、思い出して書くことはできない。

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