K大橋の出会い
引っ越して何年経ったのだろうか?
知り合いがいない、この街にやってきた。
知り合いがいないと言うのは、少し語弊がある。Rに連絡をしたが、返事がなかったのだ。おそらく、この街の近くで働いているはずだ。詳しいことはわからない。
私は、引っ越してから、頻繁にK大橋を渡っている。
K大橋は、市と市を結ぶ大きな橋だ。ずいぶん先に高速インターがあるようで大型トラックもよく通っている。工場もその先にたくさんあるからだろう。また、工場で働く人が通う車、工場バスも走っている。大きな道路で繋がっている。
私は、この大橋を渡るたびにRもこの橋を渡っているのか?渡っていないかもしれない。など思っていた。
軽い気持ちでRに連絡したつもりが、返事がない。
変に気になってしまう。気になったら、余計気になってしまう。「自分が何かしたのかと…いや、してないぞ」と…答えが出ないのに、また考えてしまう。
そんなことを思いながら数年経った
私がバイクで橋を渡り終え運転していると、車が数台通り過ぎて行った。
車の行き来は多い大道路だ。そんなに珍しい光景ではない。
たまたま、「Rもこの近くで働いているのか?この橋を渡っているのか?」などの想いが頭に横切ったのと同時に
通り過ぎた車のバックミラー越しに運転手と目が合う。
直感でRだと思った。
ハザートランプが点滅し、停車した。
信じられなかった。
これは運命なのか、奇跡なのか、夢なのか、現実なのか
最初の会話が何だったか記憶にない。ただ、道路だったので話ができない。私たちは近くの喫茶店に行くことなった。
喫茶店で何を話したか記憶していない。喫茶店の名前は「コロンビア」だったか
一体あの時、私たちは、何を話したのだろう。なんの蟠りもなく自然な空気の中で時が過ぎていった、喫茶店内のセピアの映像が記憶に残っている。
Rとの会話で返事をしなかった理由を聞いた。
Rは「連絡しようと思ったが、返事はやめておこうと思った。すごく心配していたよ」と応えた。
Rは「心配したよ」
私の心は「寂しかったし、不安だった」
でも、そんな会話のやりとりも気まずくならず、なぜ自然な空気だったのだろうか。
それは夢だからか
いや現実なのか
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