初夏の旅行

高校時代

一学期の期末試験が終わり、翌日の朝、登校中だった

Dが自転車で走りながら「あ〜、なんかもう。。。。」とモゴモゴ、何かを言ってくる。

通っている場所が、高架道路の下でちょっと薄暗い。ちょうど曲がり角でガードレールに沿って走っていく。

少し前を自転車で走っていた私が「え?まぁまぁ、何かあったのかぁ?」と軽く受け止め返事をする。

Dが「今日さ、旅行に行こうよ」と突然誘ってきた。

私は少し驚きながらも「行こうか」と同意した。

学校が終わり、駅で待ち合わせた。

どうやって行き先を決めたかは分からない。ただ、二人で行くと思っていたのが、Nも一緒だった。Nは、とても嬉しそうにはしゃいでいた。

電車に乗ると、他にもクラスメイト3名いた。どうやら一緒に行くようだった。もちろん、私は構わなかった。


電車は空いていて、車両には私たち以外は誰もいない。

私たちは、向かい合わせで3人ずつ。お互いの距離はまばらだ。窓の外を見る者、雑談する者。携帯電話をいじっている者。様々だ。

私たちの行き先は、九州のA島だ。


私とDは、少し距離を保ちながら隣同士で座っていた。

私がDに「今日さA島に行くよね、宿とか取っているの?」と聞くと

Dが「まぁ、何とかなるかな。行ってから聞いてみようか」と能天気に応えた。

私は、あまり宿のことは心配しておらず『Dらしいな』と、Dが何だか可愛く見えてきた。


真っ暗な長いトンネルに入り、皮膚感覚は何だかじっとりしていた。



すると、突如、晴天の蒼い空と海が目の前に広がった。その瞬間、最高の気分だった。


トンネルを抜けたのだ。


目的の駅に着き電車を下車すると、各々に砂浜に駆けていく。中には、麦わら帽子をかぶっている者もいる。夏を満喫する気満々な雰囲気である。

私とDは、先に行く4人を後ろから眺めていた。陽射しは強くて私たちを照らすが、風もあってそんなに暑くはない。

腰掛けるところがあって、二人で一休みした。

Dが、おもむろに観光マップを取り出し、「明日行くところだけど」とマップを広げ指差す。「今、ここね。で、明日はC島に行ってみたいな。くるっと回れるみたいだよ。」と嬉しそうに話し始めた。

2人でその場で寝転びながら地図を見た。黄色の薄いブランケットを二人で共有しながら。

私たちはブランケットの下で優しく手を握っていた。

ブランケットの黄色が夏の光に反射して、優しく黄色に包んでくれる。私たちが繋がった手を。

そして

目の前に蒼い空と海が広がって、私たちは一緒にそれを見ていた。


それが、夜になって星空に変わっていた。



DやN・・・あなたたちは誰ですか?


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