カラオケ

予備校に通っていた

ある夏休みの休日、その仲間とK駅近辺のカラオケ屋に行った


メンバーは、カラオケを発起したヤンキー風のM、ガンダム好きのG、少年のようなA、そして私だ。他にも何人か誘ったが、用事があるとのことだった。

私たちは、学校という環境であれば、おそらく交わらなかっただろう。予備校という、似たような夢や同じ目標に向かっている集団だから、心の中で通じるものがあったから、出かけることになったのだろ。

カラオケボックスに入ると、Mが「よっしゃー」と意気込んでタッチパネルで選曲していく。その後、続いて皆、曲を入れていく。

4人ともジャンルの違う曲を選び歌っていたと思う。

案の定、ガンダム好きのGは、ガンダムの歌を歌っていた。マニアックで曲は知らなかったが、その映像のアニメが衝撃的だった。また、印象的だったのは、Gは、真剣な眼差しで一生懸命タッチパネルの操作をしていた。私が「G、カラオケはあまり行かないの?」と問うと、口数少なく「ぉおお、まぁ」と応えた。

そんなことはお構いなしに、Mはカラオケを楽しんでいる。

時間が迫ってくると、Mが、BLANKEY  JET  CITYの「赤いタンバリン」を歌った。その歌を知っているAが一緒に歌っていて、私とGはタンバリンを鳴らし一緒に参加した。Gは真剣な表情で、しかも、ぎこちなくタンバリンを鳴らしている。

ラストコールが鳴った

最後に、少年のようなAが選曲したBUNP  OF CHICKENの「天体観測」のイントロが流れた。

「オレオレ」と言い、マイクを手にする。私は、Aがこの曲を選ぶとは意外だった。

「最後にこの曲、いいね」とMが言った。私も、この曲は知っていて馴染みのある曲だったので、頷いた。

Aは、「エヘヘへ」と目をそらし恥ずかしそうに笑った。

Aの歌声や横顔を見ると、少年の印象を持っていた私だが、少年ではなく別の人物のような印象を抱いた。

とても不思議な感覚になった。

カラオケ屋を出ると、「赤いタンバリン」の曲を気に入った私が、Mにバンド名を尋ね、次回会う時にCDを借りる約束をした。この時、Aも「ブランキーいいよなぁ」と、微笑みながら言っていた。

記念にプリクラを撮ることになった。Mは、お気に入りのハットを被り慣れた感じでポーズをとる。Gは、カメラの位置を確認しながら、ややおどおどしている。Aは、確か赤いチェックのシャツを着ていた。そして、撮り終えた写真に、Mが、慣れた手付きで私たちの名前や文字を書いていった。



もう、あのプリクラはない。

確か、去年の年末に、この思い出を捨てたのだ。

ただ、夏が来ると「赤いタンバリン」と「天体観測」を歌った光景、そして、少年のようなAの意外な印象と不思議な感覚が甦える。

Gはどこで何をしているのだろう。Mとは付き合いがある。Aとは連絡は取れないが、何をしているかは知っている。

あの夏の思い出

皆んな、覚えているだろうか


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