【1935年台湾博覧会 #3】毎日お祭り状態の50日間!その魅力とは? 第二会場・中編
当時の会場地図を参考に、現在のGoogleマップと照らし合わせて、分かりやすい地図を作ってみました。
そして、今回は新しい試みとして、google mapの機能を使いて、現在の228公園に当時第二会場にあった展示館や設備をマークしてみました!
さて、旅を続きましょう!
「東京館」から出て、「大阪館」との間の道を通り、左側に池があり、右側は台湾茶業協会が出品する「台湾茶特設館」です。
台湾茶業協会は、総督府特産課、台北茶商公会、台湾茶共同販売所の三者が今回の博覧会で台湾茶を宣伝するために組まれた団体で、この特設館では、台湾人(当時は本島人と言う)女性を「サービスガール」に採用し、お茶の無料接待を行っています。
さらに池の上の橋を渡ると、右側には「栄町門」があります。
突き当りまで行って、「来々軒食堂」と「水族館」が見えます。
「水族館」では「正面左右には各々人魚と魚と戯れる夢の海と、深海の怪物大ダコが潜水夫と格闘する海の恐怖とを描き分け」、また「フカ」「アラ」そして「色とりどりの世界的な熱帯の珍魚や奇魚や理科の教科書にある様々の魚」も展示されています。
「水族館」の向こう側には、「台中案内所」と「台南新報休憩所」があります。
「台中案内所」では、即売部と喫茶部があり、即売部は台中州の物産紹介も兼ね、土産品を陳列即売しています。
文献によると、売れ行きが好調だった商品は
大甲帽、草履表、煙草入、手提袋などの大甲藺製品
鳳眼糕、蜜餞、龍蝦餅等の菓子類
梓洋杖
台中州農会農産物販売斡旋所出品に係る乾筍、斗柚、文旦、レモン等の農産品
喫茶部では、紅茶、烏龍茶、レモンティー、筍蕎麥、バナナ酢寿司を提供しています。
台南新報は先述の台湾日日新報と同じく、日本統治時代の台湾では3大新聞社のうちの一つでしたが、官報の台湾日日新報より、台南新報のほうは庶民の日常生活に関するニュースも取り上げられて、当時の台湾実態をより反映しています。
道に沿って少し歩くと、「ネッスルミルク宣伝休憩所」があります。
この休憩所は、ネッスル(現在のネスレ)及びアングロスイス煉乳株式会社が設置したものです。
もっと前へ進むと、「特産館」が見えてきます。
「特産館」に関する記載が少ないですが、当時の観覧客から以下のような低い評価が記録されています。
「特産館」の向こう側には、一つ大きくて目立つ建物がありまして、それは「専売館」(総督府専売局出品)です。
当時台湾の専売事業は、阿片、食塩、樟脳、煙草、酒の五種類です。「専売館」の展示内容は、これらの製品に関する栽培、製造過程、包装、販路や製造実演となります。
さらに、館内には休憩所があって、展示館自体は台北公園既存の噴水池を囲んで建築されたものなので、噴水池の近くに和洋料理場、バー等を設置し、女給40人と料理番6人で食事や酒類を提供しています。
なお、付属施設として館外に「脳寮」を建築し、こちらで製脳の実演を行っています。
「専売館」の横には、株式会社資生堂薬舗が設置した「王冠赤十字葡萄酒休憩所」と「森永製菓出張販売店」があります。
「森永製菓出張販売店」に関しては、博覧会準備期間にこんな記事がありました。
台北公園内既存の後藤新平像の後ろに、「演芸館」があります。
建物自体は木造平家一部二階建てで、333坪で約1,000人を収容できます。
こちらでは以下の演目が上映されます。
台北検番芸妓出演の「蓬莱踊り」
台北、基隆両検番出演の「呉鳳」「三人上戸」「台北四季」
台北南カフェー組合所属女給連出演のレビュー
大阪吉本演芸団のヴァラエティ(独創ジャズ、奇術、音曲競技、グランド・ワイヤ・アウクル(綱渡り)、吉花菱舞踊、曲芸、高級万歳、冒険体育曲技)
開会中に毎日午後二回繰り返して出演し、土日はさらに午前に一回の追加公演があります。夜間開場が行われる期間には、こちらで「各種の大衆演芸」も催されます。
次は、「特許館」「海女実演館」「祇園茶屋」を見てみましょう。
この3つとも、協賛会取扱の施設になっていて、民間の人が運営する展示館・売店です。博覧会誌には、売店や土地使用者の住所と氏名が記載されていて、「特許館」は石田惣一郎、神崎熊太郎(兵庫県西宮市今津)、「海女実演館」は藤井種夫(台北市築地町一ノ一九福原方)、「祇園茶屋」は山田小三郎(京都市同志社高商前)が運営することがわかりました。
そのなか、「岩にくり抜いた竜宮の外観」をもつ「海女実演館」は特に注目され、三重県志摩真珠湾から六名の海女をお招きして、観客の前で大きな水槽に実際もぐってもらって、その素晴らしい水泳技術を実演してもらいました。新聞紙には、海女たちが台湾に到着するニュースからインタビュー記事まで掲載していますので、とても話題性のある展示館の一つです。
次は「映画館」です。
一部二階建ての木造西洋小屋で、収容人数は約600名です。ここで放映される映画は、台湾教育会、各州教育会、陸海軍、文部、鉄道の各省、その他の団体よりフィルムを借用したものなので、政策宣伝の色が強い映画が多いではないかと考えられます。
例えば、開会する初日に放映された映画は「皇国の栄」「吉野山」「陽光を仰ぎて」「海底の話」「タヌ吉の話」で、10月12日には「ダツタン海峡氷上航海」「空襲」「聖職の輝」「御大礼観艦式」「国防と婦人」でした。さらに10月23日に「火筒の響」「満洲国と帝国海軍」「守れ台湾」「朔北の皇軍」「台湾学校号竝製糖号命名式」「忠吉は帰った」「台博第三報」が放映されて、戦争に連想されるタイトルが多かったようです。
第二会場・中編はここまでとなります。
引き続きは「後編」(近日公開)をご覧ください。
参考資料:
台湾の旅, 台北市, 始政四十周年記念臺灣博覽會協賛會, 1935.
豪華版臺灣記念博の全貌, 月刊臺灣, 1935, 6(10), p.31-47.
鹿又光雄, 始政四十周年記念 臺灣博覽會誌, 台北市, 始政四十周年記念臺灣博覽會, 1939.
始政四十周年記念 臺灣博覽會協賛會誌, 台北市, 始政四十周年記念臺灣博覽會協賛會, 1939.
始政四十周年記念臺灣博覽會, 大阪市, 細谷真美館, 1936.
須田一二三, 始政四十周年記念 臺灣博覽會ニュース, 始政四十周年記念 臺灣博覽會事務局, 1935.
野村幸一, 臺灣博誌上見學記 =第二會場= 府縣館, 臺灣警察時報, 1935, n240, p.80.
池上清德, 始政四十週年記念 臺灣博覽會寫真帳, 台北市, 實業展望支社, 1935.
1935年台湾博覧会シリーズ記事
#1 第一会場編
#2 第二会場・前編
#3 第二会場・中編
#4 第二会場・後編
#4.5 食欲の会場 “うまい名物”を漁る
COVER:演藝館
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