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長続きするブランドの作り方〜【読書感想文】ブランドで競争する技術

「ブランドで競争する技術」という本を読んだ読書感想文です。約10年前に出版された本ですが、現代でも役立つヒントが多々書かれています。

内容としては、経営視点で特にアパレル業界に特化し記載されていましたが、BtoCビジネスに携わる方(卸から商品を仕入れ販売する方々)は全て通じる話です。




この本の概要

  • 製品ライフサイクルが増します短くなり、あらゆる業態でファッション化してきた。(商品の寿命が短く、模倣が一般的になってきている。) 
    →この本で取り上げるブランド戦略は、いかに参入障壁を築くか、またいかに競争優位に立つかという視点から書かれている。

  • かつては、とにかく市場に出せば商品は売れた。しかし時を経て、その反動から、顧客が商品を選ぶ仕組みを追い求めた結果、市場は同質化に陥った。(例: ファストファッション)→これが、著者が日本企業に共通した課題=ブランドである、と考える理由


ブランドが提供する3つの価値

  1. 商品そのものの機能価値(家電であれば、テレビの薄さや操作性など)

  2. 商品に付随するサービス価値(分かりやすいのは、ホスピタリティを前面に押し出しているケース)

  3. 商品やブランドが持つ世界観などのイメージ価値(その商品が持っている世界観やストーリー)

機能価値とサービス価値は、価格との関係性において、やや種類が異なっている。機能価値とサービス価値は、価格との関係において相対的になりやすい。したがって、ビジネスにおいて機能価値、サービス価値で競争優位を確立したい場合は、価値の大きさを一定にしながら競争相手にたいして価格を下げる戦略が一般的。→なぜなら、顧客は価格が安い方に流れるから。

機能価値やサービス価値を進化させ続けると、同一線上の機能軸にある価値は、顧客が必要としている臨海点を超える瞬間が必ず来る=過剰価値

顧客から見て、競合商品との差別化ポイントが見えなくなってくる。

イメージ価値のような、値段をつけられない価値による差別化、or それまでに前例のない新しい機能価値の提供 or サービス価値の開発が、新たな競争ポイントとなる。

イメージ価値の構築は、Know Howではなく、Know Whoだと言われる理由。それは、自分が実際に体験をしたり、感じることで得られる能力(=センス)が必要だから。


ブラントの競争戦略

ブランドビジネスの正しい経営というのは、あるブランドが流行っているときに、その利益を異なる複数の事業の種まきとして使うこと。

ブラントの競争戦略は、絶対的優位を持つ3つの価値のいずれかを、自社が保有する複数のブランドに共通して持つこと。そして、その共通した価値軸を持った複数のブランドをターゲットとする市場全体に、カテゴリーあるいはチャネルで分散化させることとなる。


不確実性の高いブランドビジネスに携わる人が留意すべきポイント6つ

  1.  まず絶対的優位性を持った3つの価値を生み出すプラットホームづくり

  2. ただし、生み出されるブランドあるいは販売チャネルは分散させる

  3. 新ブランドの立ち上げは、事前調査の蓋然性より立ち上げ後の努力の方が大事、と割りきる。

  4. ブランド立ち上げ後は事業評価(ものさし)を整備し、状況把握を正確に行う。

  5. 撤退の判断は迅速に行い、むしろ失敗から次の学びに生かす。

  6. 以上のようなサイクルを回すだけの体力(資金力、ミルキング事業=これ以上成長力は難しいが、安定的に現金を生み出し、他の事業への投資原資になる事業=たるブランド)を保有していること。特にキャッシュフローは正確に追い続ける。


新しい事業を立ち上げ成功した人

成功要因は、とにかく市場を見ていたこと。新しい価値観にたどり着いた人は、なにかを始める前に見えているという感覚を持つという。なにが流行るのかを、店へ行ったりするなどして、自分の五感で感じることにより、次の一手が見えるそう。

トレンドの先を読む考え方

  1. まずは事業責任者の頭の中に、到達地点のイメージがきっちりあること

  2. そのためには、常に街や人を見て、商品を見て、次のものにアンテナを張り続けること。

  3. 実務ベースに落とし込むときには、クリエイターとのイメージの擦り合わせは徹底して行うこと。クリエイターのアウトプットそのものではなく、時にクリエイターそのものの感度を選定基準とする。

  4. 最終的には、クリエイションに関する裁量権をクリエイターに持たせ自由にやらせること。


社内に出島をつくる

大きな組織を変えようとするとき、組織全体を対象に上から変えるよりも、組織のなかに人工島である小さな出島をつくり、既存組織は別の体制で事業を推進しながら、小さい組織で大きな変革をやりとげ、成功体験を徐々に組織全体に浸透させていくやり方が、近道になることが多い。

例: 西友から独立した無印良品←←一方で、ダイエーから独立したセービングは無印良品とコンセプトは似ているが、販売チャネルをダイエーとその系列店で設定。既存事業との大きな違い(イノベーション)は生まれなかった。

例: スシロー→スシローは、その時において最も旬で強い人、組織と結び付くことで、既存組織の弱点を補完することに力を入れ、外部のプロフェッショナルを積極的に活用している。ただし意思決定権は外部にしない。


ブランドリニューアルの鍵となるTICS

  • target(対象顧客)

  • icon(継承される象徴)

  • channel(販売チャネル)

  • system(仕組みを下支えするシステム)

ブランド再生に成功した事例は、この4つを意識して変化、進化させている。

TICSのうち、I(icon)は変えずに、マネジメント体制は変えるべき。マネジメント体制は、そのブランドの企画を組み立てる人の頭の中がそのままの形で具現化されるため、新しいチームを構成する人員を中途半端に変えるが決済者は変わらないというのは、ブランドリニューアルがなされない。


ここからは、私がこの本を読んだ感想です。

この本を読んで思ったこと

今回、経営視点そしてアパレル業界に特化して説明された本でした。本自体、分厚いので最初から最後まで読むのが億劫になりますが、実際読んでみるとスラスラ読めます。

著者が冒頭指摘していたように、同業他社との差別化がかなり難しい時代となりました。商品の質はそんなに変わらない(最低限の機能価値は満たしている)点、そして今や個々人によって嗜好がかなり異なる点で、マーケティング施策も工夫が求められる状況です。

SNSでバズれば、売上が上がるかもしれませんが、それは一時的な結果に過ぎません。この本に挙げられていた、ファストファッションの事例も似たような状況で、今やファストファッションの代表として挙げられるブランドは、10年前と異なるでしょう(もしくはもうファストファッションブランドを忘れてしまっている方もいるかも)。

中長期的に売上を上げ続けるには、この本で述べられているように市場環境を常に観察し理解し、差別化ポイントを明確にしていくことが重要です。これは私の経験上激しく同意します。


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今回ご紹介した本と同じ著者の方が連載で書かれていた記事です。


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