見出し画像

開発の現場から: 担当者の手抜き事件が開発ヒントになった話

こんにちは。ヒトラボジェイピーの村上です。Note初投稿になります。
よろしくお願いします。

弊社では、私は主にソリューションの開発・実装を手掛けています。
いわゆるプログラミングやAIの実装ですね。

じゃあSEやプログラマーかと言われると微妙なところでして、人事・人材マネジメントに関するコンサルティングやリーダーシップ・マネジメント研修など、タレントマネジメントや採用コンサルティング、人材アセスメント、コーチング、組織開発、それらに付随するピープルアナリティクスやデータ分析などがむしろ本業と言えます。

流行の言葉で言えばデジタル人事や人事DXになるでしょうか。

さて第一稿で何を書こうかと思ったのですが、ちょうど弊社渡部の書いた先日の記事(心理学の話:差別がなくならない理由)を読んでいて触発されたので、実際に私が偶然知ってしまった事件(?)、そしてその事件が新規開発を進める上でのヒントになった事をお話ししたいと思います。


とある合理的な担当者の手抜き事件

とある会社の人事部長(Xさん)から聞いた話です。Xさんは、業界の人事交流会で他社の人事部長(Yさん)から聞いたそうです。

そうですね、その会社(Yさんが所属する会社)はだれもが知る有名企業です。採用時期には、毎年相当数の応募があり、動画面接などのテクノロジーも積極的に導入していました。

それで学生から送られてくる動画を、ある程度スクリーニングした後に人事担当者が手分けして視聴して、合否を決めていたらしいのですが、事件はそこで起こったそうです。

なんとある担当者Zさんが、自分の担当分動画を全く視聴せずに全部不合格にしていたらしいのです。おいっ。

勿論、企業の人事部としてはあってはならない事ですし、学生の立場に立っても、一生懸命用意した動画を全く見もせずに落とされているとは夢にも思っていないでしょう。実際不合格にした学生の中には、有望な学生の方も含まれていたそうです(結局、Zさん担当の全ての動画を再度見直したそうです)。

なぜこのような不幸が起きたのでしょう?

担当者Zさんが白状した事によると、

・採用時期は業務ピークで忙しい

・忙しい時期に動画を1日に何十本も見ていられない

・合格にすると、「何故この人を合格にしたのか」を説明しないといけない

・だったら全員不合格にしてしまえば、時間の節約にもなるし、説明責任も生じない

この話、担当者が全面的に悪いかと言われれば、実はそうとも言いきれない微妙な事情があると考えました。(勿論、かなりの割合で悪いのでしょうが)

というのは、その後「御社ではこういう事ないですか?」と他の会社にも聞いたところ、「いや実はうちも・・・少しはあるかも・・・」「エントリーシートの時もそうでしたが一日200枚も読んでいると後半ぼっーとしてきますし、動画も1日7時間みていると最後の方は自信がない・・・」という感じだったからです。つまりZさんのような極端な例はなかったものの、グレーゾーンの事例は結構ありまして、どうやらこの会社だけの話ではない様なのです。


採用担当者にやさしい動画面接データに変換

つまり、全面的に個人のせいにできないような、何かがあるんじゃないかと思い、考えてみました。そして、罪を憎んで人を憎まず、ではないですが、この事件の根底にあるのは結局こういう事だと思うんです。

1:動画面接や自己PR動画のおかげで、学生の負担は軽減、応募者の増加など明らかなメリットは学生側・企業側双方に確かにあった

2:一方、どんなに先進的なテクノロジーや技術を取り入れても、業務負担の増大とそれを扱う側のヒトが、それを台無しにしてしまう事があるのは悲しい事実

3:人間は量的負荷と疲労に耐えられず、個人的合理性を追求した結果、手抜きが生じる。手抜きは、差別や不公平な評価という形で顕現する

4:手抜きしていたことは、短期的には問題化しないが、長期的にジワジワその企業へのダメージを蓄積する

5:既存の業務プロセスをそのままテクノロジーで代替しただけでは業務負担は減らず、逆に増える事もある。業務負担を減らしつつ、効果・質をあげる両面作戦を目指していかないと駄目

6:じゃあ全部テクノロジー任せにすればよいかと言えば、それも危険。テクノロジー・AIと人の最適な役割分担を追求していくのが重要

一方でこういう事件というのは、弊社のような立場の者にとっては、開発のインスピレーションや強い動機にもなるわけです。

こういう現場をなんとかしたいなという想いですね。

つまり、動画面接のメリットを生かしつつ、学生の取り組みも尊重して、担当者の負担は抑えられるようなサービスを提供できないかと考えて、皆で議論を重ねました。

そして、実はヒントはその議論そのものにあったのです。

弊社はコロナ以前からテレワーク化が常態していました。なにせ社員の一人は海外にいるので、そうならざるを得ないんです。そして全員がディスカッション好き。毎回ディスカッションの動画を録画していたのですが、録画アーカイブは月日が経つごとに膨らむばかり。

「そういえば適材適所について何回か前に有意義な議論してたよね?」

となった際に、さっとこの動画、この動画と検索できると良いよね、という事で動画解析技術をちょうど研究・作成していたんですね。

あとはそれを応用するだけでしたが、当然細かいチューニングは必要で、ひとつひとつ問題を潰していきました。

その結果として誕生したのが、「マシンアセスメント for movie 」です。

現在β版ではありますが、自己PR動画をマシンに読み込ませ、その内容を解析し、その方の能力的特徴やコンピテンシーを抽出するというエンジンを開発する事が出来ました。

これまでは、

①テクノロジーによる効果的な情報収集

⇒②人間による大量判断(ここで問題が起こりがち)

というプロセスだった訳ですが、これが、

①テクノロジーによる効果的な情報収集

⇒②テクノロジーによる効果的な情報整理・分類

⇒③人間による優先順位付けに関する判断軸・ポリシーの提示

⇒④判断軸・ポリシーに基づいた優先順位づけ(テクノロジーを使った情報処理)

⇒⑤解析結果を参照しながらの人間による効率的判断 

という形で、より重要な領域である判断領域にリソースを集中的に投入できる訳です。

限られた時間の中で、優先順位づけをして動画を視聴できるようになったというのが大きなポイントですし、各動画を解析し、似たコンピテンシー・タイプの方をグループ化・カテゴライズ化してタグづけするような機能もあるので母集団の全体像が見えるようになるという点も大きいのです。勿論まだ完全ではないので、これから機能改善していきたいと思っていますが、少しでも上述したような事件が減れば良いなと思っています。

まだ正式リリースではないため、弊社のホームページにこのサービスは掲載されていません。もしご興味があれば、弊社のお問い合わせ欄よりご連絡ください。


他にも色々と開発秘話はあるのですが、少し長くなりましたので、また次の機会にお話しできればと思います。


文責: 村上 朋也

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?