卑太郎(ひたろう)

初めまして卑太郎(ひたろう)です。自作の小説を投稿して行きます。

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マガジン

  • 140字小説

    Xに投稿中の140字小説を、noteでは一言作話意図、雑感等を添えてまとめています。

  • 短編集『犬嬢と花の荷車の女』

    連作短編『犬嬢と花の荷車の女』 2023年10月6日完結済です。

  • 【小説】Lonely葉奈with学

    小説『Lonely葉奈with学』の一覧です。全15話、2023年5月16日完結済です。

最近の記事

叔母、ほたえ、走る①

 「叔母」と書けば父母の妹であり「伯母」と書けば父母の姉であるという。 ところで両親の姉か妹かの違いは伯母と叔母で書き分けるとしてそれが父の姉・妹なのか、母の姉・妹なのかを分ける言い方があるのかとちょっと調べてはみたけれど、すぐには答えが見つからなかった。  今日は、叔母のことを書こう。つまり両親の妹のことを書くのだね。けれどもこれでは父の妹なのか母の妹なのかは判然としないから、母の妹のこと、と書いてやっと、志穂子のことなのだろうね、と読者は分かる。分からない。分かるわけが、

    • 【短編小説】春は、ドブにて

       どうもならんかったね。何だろうこれは。どん詰まり、というのとも違う。詰まるような何かすら、なかった。  行き止まり、これも違う。止まる所まで、歩いてもみなかった。  外的な要因ではなくて、要するに、自分の中にパワーが足りなかったんだろうと思う。生まれつき。突破しようとか、踏み越えて行こうとかする力が、身体的にというよりは、気分の問題として、なかった。何もかもが、ならん。  「どうもならん」  ――と、ドブにきは、呟いた。  仕事――という程立派なものでもない、合法的に人を脅

      • 140字小説✖3(⑬⑭⑮)

        生活指導の先生に、「何だその髪の色は!」怒鳴られて、民子は「地毛だよ!」と言い返す。 「学校はおしゃれをする場所じゃないぞ!」 「私はおしゃれをする人間だ!」と民子はフラミンゴピンクの髪を掻き上げる。 結局地毛なの。おしゃれなの。どっちなの?って思いながら僕は民子から目が離せない。 ――140字小説⑬『優等生の初恋』2023.12.05  (民子は、「地毛」と言い、「おしゃれ」と言う。どっちなのだろう、と、「僕」は冷静に突っ込みながら、 「わたしはおしゃれをする人間だ!」と、

        • 【タロット占い】占ってもらいました【みぜさん】

           この度、占い師の、みぜさんに、タロット占いをして頂きました。占い結果の詳細については上記記事を是非ご覧になってみてください。(卑太郎以外の占い記事もあるようなのでそちらも是非!)  そして、今回敢えて「占い師」と紹介させて頂きましたが、もともとみぜさんは小説の投稿をされている方であり、作風としては幻想小説、……という所になるのでしょうか、文体、内容ともにとがり切っており、その上でどの作品もレベルが高く、ちょっと狼狽えてしまうくらい才気走った作品群になっています。  私の記事

        叔母、ほたえ、走る①

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        • 140字小説
          5本
        • 短編集『犬嬢と花の荷車の女』
          21本
        • 【小説】Lonely葉奈with学
          15本

        記事

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑧【最終話】

           傘なんて、ない。  涙を防ぐ傘なんて。 「スズキ・・・・・・。スズキ・・・・・・。スズキ・・・・・・」  と川島が壊れたように繰り返す。  私は静かに泣きながら教室の中をぐるりと見渡してみた。どこかにカメラがある筈だった。必ずある筈だった。だってそうじゃん、文部省じゃん。  今、教師が間違ったことをしている。されている生徒は俯いて顔を真っ赤にして屈辱に耐えながら今にも貧血か過呼吸になりそうだ。おかしい。こんなことがあっていいわけがない。だから文部省でしょ。元締めが助けるべき

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑧【最終話】

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑦

          1999年10月 水浦市立第五中学校二年G組 座席表      【教卓】    〇〇〇ス〇〇〇〇    〇真〇〇〇〇〇〇 校庭 民〇〇〇〇〇〇〇 廊下    〇私〇〇〇〇〇〇    〇〇〇〇赤〇〇〇 「ス」→スズキさん 「民」→富良民子 「真」→真壁さん 「赤」→金髪銀ラメ赤特攻服 「私」→私  図を見て頂ければ分かるとおりスズキさんはど真ん中の一番前の席だった。目が悪いので、いつも最前列の席だったのだと記憶している。 「スズキ・・・・・・。スズキ?・・・・・・。スズキ・

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑦

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑥

           目隠しをした人に、「これからあなたの皮膚に熱した鉄の棒を押し当てます」と告知して、実際には常温の、(だからどちらかと言えば冷たく感じる筈の)鉄の棒を押しつける。すると、不思議なことに、押しつけた部分が本当に火傷になるという。  あるいは何の変哲もない水だか粉だかを劇薬または妙薬と偽って飲ませると、本当に苦しくなったり、痛みを和らげたりする効果が現れる。プラシーボ効果、ナシーボ効果。これ、気のせい、とかいうレベルでなく、本当に病気が治ったり逆に病気になったりするというのだから

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑥

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑤

           五月下旬、満天の下、太平洋西端を北上する大型フェリー船の甲板上で、我々は和解した。我々とは、私と、富良民子。あれは和解だった、と思う。少なくとも私はあの日、あの夜、民子を許す気になったのだ・・・・・・ ・プリントの渡し方がおかしいこと ・民子の落とした消しゴムが、特に私の席の方へ転がってきたわけでもないのに何故か反射的に私が拾いに行って民子の机に置いてあげた時に礼がなかったこと ・たまたま登校時に下駄箱で出会わし勇気を出して「冨良さんおはよう」と声をかけた時の返しが「す」一

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ⑤

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ④

           プリント、……、  始業式後一発目のホームルームのことだったからクラス名簿的なものだったか、年間予定表的なものだったか、まあそんな所だろう、重要なのはその内容ではなく、その紙質でもなく、配られ方だ。  いわゆる「プリント回し」。教師がプリントを最前列の席の生徒にその列の人数分だけ渡し、渡された最前列の生徒は一枚を自分の分として手元に残し、余りを二列目の生徒に渡す。そうすると渡された二列目の生徒も一枚を自分の分として取り置き、余った分を更に一つ後ろの席の生徒つまり三列目に渡す

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ④

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ③

           2―G初日――。入学式の日のようなミスは今度こそ犯さない。せめてウサギの群れに混じりたい。あわよくば王になりたい。朝食は控えめにして来た。  まずは初期配置。できれば普通の子の近くが良い。不良の近くは嫌だ。  私の席は、廊下側(右)から三列目の後ろから二番目だった。そうして右隣も左隣もまあ何と言うことはない女子生徒。何なら後ろの席(真壁さん=ポニーテール)がちょっとかわいい。斜め右前左前、斜め右後ろ左後ろも何てことない生徒だった。ウサギなのかどうか分からないが、まあ虎じゃぁ

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ③

          連載中の短編についてご報告という体の雑文

          イレギュラー投稿失礼します。 ――結論―― 現在連載中の【短編小説】2-Gのフラミンゴは、今後、記事タイトルとしては、【連載小説】2-Gのフラミンゴとします。 それに伴い、過去の2記事についても記事タイトルの記載を【短編小説】→【連載小説】に訂正致します。 以上、ご報告でした。 以下は、理由という体で言い訳をしていくという体の【雑文】です。お時間に余裕のある体の方のみ読んで頂ければと思います。 ――理由―― 『2-Gのフラミンゴ』は、一般的に、短編小説の部類になる予定で

          連載中の短編についてご報告という体の雑文

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ②

           一九九九年四月、私は中学二年に進級した。水浦市立第五中学校、全校生徒数は1200人超。各学年に400人の生徒がいることになり、クラス数としては十、乃至十一で、一年の時には各クラスに一人ずつ茶髪の生徒があり、二年になると各クラスに一人ずつ金髪、二人ずつの茶髪、それから赤とか、色は黒いままリーゼントだったりするものが例外的にいたりいなかったりし始める。そうして三年にもなると各クラス少なくとも七人は変な色の髪になり、紫とか青とか、それにスキンヘッドなんて者もあった。耳朶に穴を穿ち

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ②

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ①

           私が育ったのは北関東のとある県の隅っこの方、吹き溜まりの窪地、・・・・・・光の弱い土地だった。  土地の空は、原則として、曇っていた。仮に晴れたとしても、太陽は小さかった。  関東ローム層の圏外、土壌も荒んで木々、草花に生気は欠け、人心もまた、荒廃し切っていた。土と空と人心と、水と、全てが色褪せた窪地で、てっきり世界はおおむね灰色の構造体なのだと思い込んで十四歳までを育った私は、一九九X年四月、正確には一九九九年四月、即ち中学二年に進級した時機に、初めて色彩というものを知っ

          【連載小説】2-Gのフラミンゴ①

           【掌編小説】鮎を食べたかった夫婦

           世間の夏休みと紅葉の季節の境目、九月半ばを狙って四、五日の温泉旅行をするのが私達の慣習だった。  私達というのは、私と、当時婚姻関係にあった女のことだ。仮に名前を凍子とでもしておこう。  この女とは結局別れることになるのは、前にも一度小説にしたし、この女と私のひととなりもある程度はそっちで書いたことだから、ここでは詳しく述べまい、ただ二人ともが、何事にも「冷めていた」とのみ認識しておいて頂ければ足りる。わざわざ読む必要もない。 別れたのが七年前のことだから、今日書こうとする

           【掌編小説】鮎を食べたかった夫婦

          140字小説×3【⑩⑪⑫】

          ねぇまゆちゃん、 と、富岡君があたしの名を呼べば、 あたしの芯をくすぐり、 桃灰色の糸、 目頭からるーーーん! 「まゆちゃん大丈夫?まゆちゃんまゆちゃん!」 連呼。もうだめだ。 るん!りぅん!りるるーん!糸糸糸あたしは繭。富岡君ごと繭ん中。こんなにくっついて糸糸糸糸一生止まる気配ない。 ――140字小説⑩『絹糸の瞬間』 (好きな人から名前を呼ばれれば、それだけで、絹糸の瞬間) 夕映えるドブに紐を垂らしているので「何か釣れますか」と問えば老人、「入れ喰いさ」と応えた。やがてふ

          140字小説×3【⑩⑪⑫】

          140字小説×3 【⑦⑧⑨】

          とある小さな家の屋根に白羽の矢が立った。翌朝村に大蛇が現れた。米俵に括りつけられた貧しい娘が花嫁姿で差し出される。絵柄が汚い。構図が嫌だ。私は独断、縄を解き娘を懐に抱いて走る。が、追い付かれ、大蛇に喰われる。娘ごと喰われる。村ごと滅びる。勢い余って国まで滅び、星も砕けて宇宙が壊れた。 ――140字小説⑦『さっぱり』 2023.09.05 (誰かを犠牲にしてまで村を守るくらいなら村ごと国ごと宇宙ごと滅びた方がいい、と子供のようなことを言っております) 一切の言葉を封じられた少

          140字小説×3 【⑦⑧⑨】