140字小説×3 【⑦⑧⑨】

とある小さな家の屋根に白羽の矢が立った。翌朝村に大蛇が現れた。米俵に括りつけられた貧しい娘が花嫁姿で差し出される。絵柄が汚い。構図が嫌だ。私は独断、縄を解き娘を懐に抱いて走る。が、追い付かれ、大蛇に喰われる。娘ごと喰われる。村ごと滅びる。勢い余って国まで滅び、星も砕けて宇宙が壊れた。
――140字小説⑦『さっぱり』 2023.09.05
(誰かを犠牲にしてまで村を守るくらいなら村ごと国ごと宇宙ごと滅びた方がいい、と子供のようなことを言っております)


一切の言葉を封じられた少女が一切の言葉を信じぬ少年に惚れた。少女は赤いビー玉を口にふくみ七日間、想いを沁み込ませ、ある夕、帰路の少年の前に立ちはだかった。決死、とろり、少年の掌に赤を吐き落とす。少年の掌は閉じられる。二人、無言だった。一方言葉だけを信じた私は今日も独り語り続ける。
――140字小説⑧『明日も私は語り続ける』 2023.10.26
(語り続けます。
 前フリの告白のお話はいつかもう少し長いものとしても書いてみたいと思っているモチーフです。)


気の進まない仕事を引き受けた帰途、花屋と床屋の間の路地に、立派なハーレーダビッドソンが駐輪されており、その陰に水溜りができており、一匹の汚いネズミが水を吸うておる。そんな水を吸うてまでと思いかけてから、こんな仕事を引き受けてまでと天を仰げば秋晴れの、空。青く、青く、高く。
――140字小説⑨『バッくれたい季節』 2023.10.28
(季節関係なくバッくれたい気もします。)


最近は何かネタらしきものを思い付くと、まずそれを140字としてやるか、2〜3000字の掌編でやるかから考え込んでしまいます。
考えている内に、どちらも手つかずのまま季節だけが過ぎていきました。すっかり、冬ですね。

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