学究

話が違うじゃないか! ~ミスマッチングとSVR理論~

1、地域おこし協力隊のミスマッチング

「こんなはずではなかった」
「話が違うじゃないか!」
「もっと来る前に情報を集めるべきだった」

地域おこし協力隊のミスマッチングの問題がクローズアップされています。

制度が拡大され、隊員が増えるにつれ、その問題も「見える化」されてきています。隊員は、情報発信(SNSやブログなど)を好みます。自分自身の考えや出来事の経緯を世に問うことが、他の立場の人よりもやりやすい。

過去のnote記事でも、ある地域おこし協力隊の隊員が経験したことの事例を挙げて、その事例に対する様々な立場からのコメントがあることを取り上げました。良くも悪くも、注目されて、コメントがしやすくなってきている時代です。このnote記事も、そのうちの1つかもしれません↓。

どちらが正しいか正しくないか、これは容易には答えが出ませんし、それぞれの立場で考えて、今後に生かしていくべきでしょう。実際はもっと色んな事実や考えが錯綜していたでしょうから、第三者が断片的な情報(もしかしたらバイアスがかかった情報)で、軽々しく判断あるいは断罪すべきことではないのかもしれません。

しかし、もう少し良い方法があったのでは…、とは誰もが思うところ。

ミスマッチングそのものを、どう防ぐべきか?

「こんなはずではなかった」
「話が違うじゃないか!」
「もっと来る前に情報を集めるべきだった」

とお互いが思わないためには、どうすれば良いのか?

2、ミスマッチングを防ぐSVR理論

以前のnote記事で、「SVR理論」をご紹介しました↓。

「アレンジ」「置き換え」をテーマに、2つの記事で小説仕立てにしています。一部、引用します↓。

S=刺激、V=価値、R=役割。直訳するとね。SはStimulus、VはValue、RはRole。要するに、第一段階は刺激、あっ、ちょっといいなと思う感じかな。それを第二段階では価値、それぞれの価値観をすり合わせて共有できるか確認するの。で、第三段階で役割、お互いがお互いを補い合える関係になって初めて、結婚という共同生活に至るという感じかな。就活も同じだよね。説明会でいいなと思って、面接で価値観を確認して、役割をお互いこなせるかなと思ったら就職という共同生活、というか労働に従事する」

【SVR理論】
◆S=刺激(Stimulus)=あっ、ちょっといいなと思う
◆V=価値(Value)=価値観をすり合わせて共有できるか確認
◆R=役割(Role)=お互いがお互いを補え合えるか、役割をこなせるか

簡単に言えば、「この3つの段階をしっかり踏めば、スムーズな結婚生活に至る」という、心理学的な理論です。note記事の中では、この理論を「就活」にあてはめて、3段階を置き換えたりしています。

食べ物で置き換えると…。

【SVR理論=カレ麺汁理論】
◆S=刺激(Stimulus)=カレー=匂いにひかれる
◆V=価値(Value)=ラーメン=どのラーメンが好きか、すり合わせる
◆R=役割(Role)=味噌汁=刺激や価値だけでなく毎日役割をこなせるか

「ゲキ」で統一して置き換えると…。

【SVR理論=ゲキ三つ時理論】
◆S=刺激(Stimulus)=刺「激」を受ける:ふつうではない感情の揺れ
◆V=価値(Value)=「檄」文を受け取る:価値観を共有してともに行動
◆R=役割(Role)=演「劇」を行う:役割を演じて共有生活を始める

いずれにせよ「3つの段階を踏む」ということです。

3、協力隊の採用プロセスは?

さて、地域おこし協力隊の採用において、この3つの段階は踏まれていますか? もちろん、雇用する自治体によって、採用プロセスは様々でしょうけど、この3つの段階が踏まれているかどうかが大事です。

ちょっといいなと思っただけ(S)で、価値観をすり合わせて共有できるか確認したり(V)、お互いがお互いを補え合えるか、役割をこなせるかを確認したり(R)という段階を、すっ飛ばしていないでしょうか? このSVR理論で言えば、SだけでVRをすっ飛ばしていないでしょうか?

3つの段階での採用プロセスを予想してみると…

◆S=刺激(Stimulus)=説明会、履歴書提出、現役隊員との面談
◆V=価値(Value)=面接で実際に話して人となりや価値観の確認
◆R=役割(Role)=活動範囲や権限、活動におけるルールの確認

ミスマッチングが起こっているということは、この採用プロセスにおける3つが「形式的なもの」に終わっており、「深く価値観のすり合わせや役割のすり合わせができていなかった」ということが予想されます。

例えば、形式的な採用プロセスだと…

◆S=刺激(Stimulus)=「この地域、何となくいい」「ルックスがいい」
◆V=価値(Value)=それぞれ価値観があるからね、ありのままで!
◆R=役割(Role)=ま、うまく臨機応変にやってみてよ!

こんな曖昧な感じで採用されたら、ミスマッチングで任期途中で退任、結婚生活なら1年もたず離婚、となりませんでしょうか? 食べ物で例えると、カレーに惹かれてやってきたけれど、自分の嫌いなタイプのラーメンばかり食べさせられ、しかも味噌汁はいまいち、ということになりませんか?

そうではなくて、もう少し深い採用プロセスはいかがでしょうか。

◆S=刺激(Stimulus)=「この地域、ここがいい」「技能がいい」
(お互いがお互いの長所短所を知った上で採用プロセス開始)
◆V=価値(Value)=地域おこしに対する価値観のすり合わせ
(どのような地域にしたいか、現状と課題は何か、
何に価値を感じるか?)
◆R=役割(Role)=隊員活動に対する双方の要望とルールの確認
(行政は何ができるか、隊員は何ができるか、報連相は? 許可は?)

人を採用するということは、大げさに言えばその人の人生を左右することです。地域おこし協力隊ならば、その地域の今後を左右する、かもしれません。少なくともミスマッチングで双方とも嫌な気持ちで別れるのは、避けるべきかと思います。となると、せめてこの3段階は踏むべきでは。

あなたなら、次のAとBの、どちらの地域に行きたいですか?

A:とりあえず採用できれば、あとは野となれ山となれ
「ごちゃごちゃ言ったって、そもそも応募者が少ないんだから…」
「上からは採用実績上げろと言われているから、来た人は拒まずだよ」
「こっちも忙しいんだから、採用にそんなに時間はかけられないよ!」
「見栄えが良くて一芸さえあればいい。合う合わないはやってみないと」
B:人となりをしっかり見極めて採用したい
「応募者がいくら多くても、合わなければ採用ゼロもありえます」
「採用実績を上げるのが目的じゃない、地域や施策に合った人を!」
「こういう地域にしたい、足りないのはこの部分、このスキルが必要」
「こういう活動をしてほしい、活動の権限と報連相は書面で確認」

…とりあえず採用されたいならAでしょう。もぐりこみやすいですから。何か適当に自由にやらせてくれそうですから。しかし、実際に現場に入ってミスマッチングが起こりやすいのも、Aのほうでしょう。

結局は、採用する側が、どこまで採用方針や採用後の活動の予想を考えられるかどうかだと思います。そのためには、募集云々の前段階として、まずは採用する側が、どのように地域をしっかりと分析できるかだと思います。

4、まずは自分を知る

いかがでしたでしょうか? まずはお互い、分析ですね。

とは言っても、そもそも自分のことがよく分からない、という人もいると思います。

そこで、最近よく人事の問題でクローズアップされている「FFS診断」を紹介します。FFSとは”Five Factors & Stress”の頭文字で、その人の潜在的な強みを知ることのできる理論・診断です。ベストな人材の組み合わせはどれか? など、色々な企業の人事で、既に活用されています。

詳しくは、相原有希さんの記事をどうぞ↓。

ただ、この診断は凄く良さそうなんですけど、勤め先の企業などで採用されていないと、なかなか受けられなさそうですね…。

相原有希さんは、自分の強みを見つけることができる、他の2つの診断ツールも紹介されているので、興味のある方はぜひ↓。

「地域の強み診断ツール」とかあれば良いんですけどね…。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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