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テクニック・スキル・アート・テクノロジー!

…全部「技術」と訳される。
もちろん、アートは「芸術」や「美術」、
テクノロジーは「科学技術」と
訳されることが多いのですが。

いったい、何が違うんでしょう?

日本人は日本語で何となく
「わざ」「匠の職人」「スキルアップ」
などと、ほわほわっとした理解で
使いがちなんですが(私自身も含めて)

調べてみますと、
特に元々の英語から考えれば
語源も意味合いも違っていました。

本記事では、この「技術」についての
四つの言葉を深掘りしようと思います。

①テクニック:technique
②スキル:skill
③アート:art
④テクノロジー:technology

①テクニック:technique

古代ギリシア語の「technē」、
「テクネー」から来た言葉です。

古代ギリシアの哲学者プラトンは、
ソクラテスの言葉として、
「テクネー(技術)」と
「非テクネー(追従)」との
違いを語っている。

◎テクネー:技術
理論の力によって最善を目指すもの
例:医術、体育術、司法術、立法術
◎非テクネー:追従
理論を欠いた熟練で快楽を目指すもの
まるでテクネーであるかのように擬態
例:美容、料理、弁論、詭弁

同じく哲学者のアリストレテスは
こうも言っています。

『テクネー(技術)とは、
真なるロゴス(分別)をそなえた、
制作にかかわる性向なのである』

…要は、もともとはテクネーとは
「理論・分別などに基づいた」
技術
であって、芸術や知識や理知も
含んだ言葉だった。

これがtechniqueになります。

「目的達成のための技術、方法」
をあらわす、広い範囲の言葉…!
理論や分別などに基づいているので
「再現性」がある。

②スキル:skill

これに対して、スキルとは何か?

元々は古期北欧語の「skil」から
来ている、と言われています。
「区別・見分ける能力」の意味です。

これが「物事を行う能力」となった。
ゆえに、能力、という側面が強く、
技術、よりも「技能」と訳されがち。

『小手先のテクニック』と対比して
『スキルを身に付ける』と言われる。

つまりスキルとは、
「訓練を通して」身に付けた技能、
という意味合いがある。
技そのものではなく、能力。
できるか、できないか。

仕事上においても、ビジネススキル、
コミュニケーションスキル、などと
使われることがありますよね。
能力に長けた人のことを、
スキルがある
と表現する。
ビジネステクニックがある、
とは、何となく言いづらい。

③アート:art

元々はギリシア語の「テクネー」に
相当するラテン語の「アルス」が語源。

ars。

…となるとテクニックとアートは
同じ、ということになります。
でも、違和感がありますよね。

中世ヨーロッパで生まれた「大学」では
『リベラル・アーツ』を学んでいた。
これは直訳すれば
『自由人の諸技術』という意味。

リベラル・アーツには
絵画や音楽などの「芸術」だけでなく、
文法とか算術とか歴史とか
法律や天文学なども含まれていました。

つまり「art」とは、
いま私たちが想像するようなアート、
「芸術は爆発だ!」的なものだけでなく、
「教養」とも言える幅広い技術を
指した言葉
だったんです。

では、なぜ今日、私たちは
「アート」=芸術、美術だと
思いがちなのか?

…次の「テクノロジー」という言葉に
深く関係があります。

④テクノロジー:technology

これまでの三つの言葉が
比較的古い歴史があるのに対して、
テクノロジーは新しい言葉です。

17世紀初期にあらわれた表現。
元々は、造語だった。

テクニックの語源「テクネー」と、
「~論」「~学」という意味の
「ロジア」(-logia)を
組み合わせて作られた言葉なんですよ。
テクネロジアがテクノロジー。

ヨーロッパでは、中世~近世で
「錬金術」が発展します。
ここから「科学」が生まれた。
特に、17世紀に。

コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、
ニュートンなど、優れた科学者の登場!
宇宙観が変わり、力学的な発見がされ、
「17世紀科学革命」と呼ばれる。
ここから『産業革命』へと
突き進んでいく歴史があります。

この流れから
「近代科学」に基づく「技術」を、
特にテクノロジーと呼ぶようになった。

つまり、色んなものを含むアートから、
テクノロジーが分離していった。
分けられていったんです。

…さて、ここまで
テクニック・スキル・アート・テクノロジー、
technique・skill・art・technologyの
語源に基づいて、違いを書きました。

なんでわかりにくいのか?

それは、明治維新後の「文明開化」の際、
こういう違う意味を持つ言葉が
「どっと一斉に」日本の文化に
流入してきたから
です。

当時の人は困ったでしょう。英語で
technique・skill・art・technology、
などと言われても、よく違いがわからん…。

技術・技能・芸術・科学技術と
訳してみたところで、
ぴったりしっくりくるとは限らない…。

「…とりあえずカタカナにしちゃえ!」

と思ってもおかしくない。
だから、カタカナ英語になっている。
日本語でない概念は、
とりあえずカタカナになりがち。

なお、「科学技術」という言葉も、
この流れでできた日本独自の造語です。

ヨーロッパでは、科学と技術は
元々は厳然として違うものでした。
科学者(学者・理論家・研究者)と
技術者(職人・加工者)は、別の階層。

それが産業革命で曖昧になった。
その曖昧になったところに
「文明開化」で流入してきたので、
「科学技術」という、欧米から見れば
よくわからない言葉が生まれた…。

最後に、まとめます。

本記事では四つの「技術」という言葉の
語源から考えて、違いを書きました。

①テクニック:(広い分野での)技術
②スキル:熟練した「技能」
③アート:特殊技術、独特の「わざ」
④テクノロジー:科学技術

あえて日本語、熟語にすれば
このようになるでしょうか?
このうち、

①テクニックや④テクノロジーは
「理論・分別」に基づく
「テクネー」に由来していますから、
再現性がある。複製・コピーしやすい。
個人間や国境を越えて
幅広く「実用」されやすい面があります。
iPhoneは全世界で使われている。

その一方、

②スキルや③アートは
体格差、個性、感性、文化によって
違いが出やすい技術と言えます。
ゆえに個性的で、複製・コピーしづらい。
個人間や国・文化圏によって
違いが如実にあらわれる。
いわば、ガラパゴスのガラケー。

しかし「個の時代」と言われ、
SNS全盛、個性伸長の現代では
②スキルや③アートもまた
百花繚乱の如く、咲き乱れている…。


さて、読者の皆様は、
どの「技術」を伸ばしていきますか?
何の「技」や「術」をお持ちですか?

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