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栄光に向かって走る列車は自分自身 〜 「Train Train」 ザ・ブルーハーツ。 漫画の世界✖︎音楽

少年ジャンプのこと

あの少年の頃、傍らにはいつも少年ジャンプがあった。Dr.スランプや、キャッツアイが終わり、ドラゴンボールやシティハンターが始まっていた時期。

キン肉マンは悪魔騎士編が進み、剣桃太郎と大豪院邪鬼が雌雄を決し、三杉くんのひたむきさが日向小次郎を覚醒させ、聖闘士たちは黄金聖闘士に立ち向かっていた。

擬音タップリの吸血鬼が全ては無駄無駄無駄と叫び、闘志が生涯に一片の悔いを残さず舞台を去っていった。

その頃。東北地方では、犬が熊と戦っていた。

そんな中、変わらず両さんはいつものように暴れている。

平和である。

少年たちは架空の世界に入り込んで、様々な形でそれを体現していた。

カメハメ波の動作をするのは8才までで、そこから先はスタイリッシュなドドン波が人気になった。

意味はわからないが、かっこいい響きのオーロラエクスキューションやスカーレットニードルに憧れ真似をしたが、バルゴのシャカのオームΩには馴染めなかった。

タイガーショットは実践しやすかったが、トライアングルシュートは大概の場合、膝をポストに打ちつける自爆に終わった。

タワーブリッジ、パロスペシャル、キャメルクラッチに至っては学校全体に禁止令が出され、さながら戒厳令の様相を呈していた。

平和である。

そして、これらが終着駅に到達し、もはや、ジャンプにはドラゴンボールしか無いか、、となった頃、あの漫画が登場する。

スラムダンクである。

スラムダンクはある意味、特殊な背景があったように思う。そう、徹底的にリアルだったのだ。

スラムダンクは徹底徹尾、今ここに、この物理的社会に起こり得る内容を描いていた。

リアル。

ひょろっとした体型の男が反復練習を毎日続けた結果、天才的3ポイントシューターになり、ガリ勉型で運動音痴だった男はひたむきに練習をしていた事で信頼を得、最後の大会で出番が回ってきた。3年間頑張ったメガネ君には最後に女神が微笑んだ。

これだけを軸にした漫画だったなら、あしたのジョーや、巨人の星になり、あの時代には大衆的な人気にはならなかっただろう。

華やかなレギュラー陣の陰にこのような努力型を配した事がリアルを引き寄せたと考える。

自分でもそう成れる。流川や仙道には成れないが、頑張れば結果がついてくる。

リアル。

ただ個人的には、頑張るためのベースには、ワクワクした楽しさが必要と感じる。先の文章を言い換えるなら、流川や仙道には成れないが、こんな面白い連中と一緒にいられるし、楽しいから良いやという感覚か。

ドラゴンボールもサイヤ人、人造人間と、当初の楽しさがなくなり、悟空のストイックな修行と辛そうな顔ばかりになっていた気がする。サタンを出したのはその雰囲気の柔和だろう。

そして、ジャンプに架空の世界のファンタジーが戻って来た。

海賊王になる!

なってどうするのかは、誰も問わない。問わなくていい。

その系譜に、煉獄さんもいる。

少年とジャンプのこと

ジャンプは少年のバイブルだった。

少年はジャンプを読み、ジャンプの登場人物の言葉に憧れ痺れていた。世界の偉人の名言よりも、世界中に定められているどんな記念日なんかよりも、少年にはジャンプの言葉が意味があるものだった。

漫画はまた別の教科書だったと言っても良いだろう。

強敵と書いて「友」と呼ぶことを学び、ライバルこそ友だと理解した。→大人になってみれば、それは自分の反映であることがわかるのだが。

クサイくらいの友情は時に人生の荒波を乗り越える力を持つことも理解した。

犬も協力して作戦をたてれば、チームワークが機能し、熊をも倒せるし、

自分の中にある内的動機を、自分の中にある光・小宇宙を灯して動かせば、どんな困難にも立ち向かう勇気やエネルギーを手にできる事も理解した。

民明書房刊と、もっともらしく出典を書けば、なんとなく納得感があるというマジックも学んだ。

平和である。

漫画はもう一つの教科書。少年は多くのことを学び、思春期に向かっていく。

ここは天国じゃないが地獄でもないし、良い奴ばかりじゃ無いけど悪い奴ばかりでも無い。見えない自由をつかむために見えない銃を撃つ。そんな社会の仕組みや矛盾をも、感じとっていた。

そのマインドに、ブルーハーツのトレイントレインは染み入ってきた。

13才、14才。世の中にはいろいろな思惑があり、漫画の主人公のようには成れはしない。そんな感情を持ち始める世代にブルーハーツは響いた。

リアル。

そうあの頃の少年にとってブルーハーツはリアルだった。大人への入り口で背伸びをしていたのかもしれないが。社会というやつに争うよりも、受け入れる強さをブルーハーツの曲から受け取っていた。

栄光に向かって走る列車。

その列車をリアルの中に探していた。外部に求めていた。

その列車は実は自分自身であると気がつくのは、もう少し先のことだった。





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