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いつまでも、、と願ったあの夏の日のこと 〜 あいみょん 「マリーゴールド」

麦わら帽子

「人間の証明」という松田優作主演の映画がある。70年代の日本映画や文学には、例えば「点と線」、「ゼロの焦点」などに顕著だが、戦後数年の時期の混乱に起因した秘事が全ての発端となっていて、この「人間の証明」も同様。

さて、この「人間の証明」では、少年時代の母との思い出の一場面が事件解決の重要なストーリーとなっていた。

それは、とある夏の暑い日のこと。どこか山奥の丘の上、麦わら帽子をかぶっていた少年は、風に帽子をさらわれてしまう。

このシーンを、詩人の西条八十をモチーフにしながら、以下の様に語っていた。

「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね。ええ、夏、碓氷から霧積へいく道で、渓谷へ落としたあの麦わら帽です。」

風に乗って飛んで行く麦わら帽子、深い山と渓谷のイメージが、暑い夏の日差しと重なりあって、強烈な印象を残している。

マリーゴールド

マリーゴールドには、この花にまつわる神話が存在している。これはドイツの神話。

とある女性が太陽の神に恋い焦がれてしまった。あまりにも激しく深く愛してしまったが故に、身体は耐えきれず消耗していき、次第に朽ち果てていったが、年月がたち、そこには魂だけが残ってた。その魂は一筋の白いもやとなって天上、太陽に吸い込まれていき、その後には、一本のマリゴールドが残るだけであったという。

マリーゴールドの花言葉は、悲しみ・嫉妬なのだそうだ。

マリゴールドと、風に舞った麦わら帽子は、どこか似ている様にもみえる。内に抱えた象徴的な意味合いも。

あいみょんのマリーゴールド

あの夏の日。
少年と少女は人生の何事かを経験し、一つ成長の階段を登った。その思い出の残像が蜃気楼の様に漂っている。風に飛ばされ、虚空に舞い、夏の空の青に映えていた麦わら帽子がいつまでも記憶に残り続けるように。

いつまでも、いつまでも一緒に、、と願った、その想い。
空を覆いつくさんばかりに立ち上っていた雲が徐々にその姿を小さくしていくように。夕暮れ時には、しだいに2人の影が残らなくなっていく様に。その想いは少しずつ消失していく。

夏の終わり。
こんな風な夏から秋への移り変わりの風景は、ぼんやりとした将来への不安を募らせ、さらに悲しみを掻き立てる。

暑い夏の日の終わりの季節
マリーゴールドが象徴する花言葉
風に舞って渓谷に消えていく麦わら帽子

これらが2人のストーリーを作り上げていく。

それはどこか懐かしく、
そしてどこか切なく。


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