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みんな寂しさに涙していた時がある 〜 長渕剛 「Myself」


向田邦子さんがそのエッセイの中で「手袋を探す旅」(=自分の我を通して、自分なりの人生を歩むこと)に出ることができたこと自体を財産と語っているように、我々は誰もが、何かを求める旅に出ているのでしょう。

それは、自分で考え、自分で決定して、自分で歩み出していくということ。最初は誰もがひとり。生きていく過程で、その道に共感する仲間を得て、家族を得て、人生は少しずつ彩りを帯びてくる。

「夢はなんですか?」
と聞かれる事がこの世で一番怖く思えた
(歌詞一部引用)

仲間ができて、家族ができて。でも、なかなかやりたいことは見つからない。やりたくないことはなんとなくわかるけれど。だから、「夢はなんですか?」と聞かれることに怯えてしまう。

大学を卒業して就職に向かうとき。日本では大多数の若者がこのタイミングで将来のことや「夢」を意識する。

そして、それが無いことに、見つからないことに気が付いてしまう。

おそらく、若者のこういう悩みが増えてきたのは1980年ごろから始まった、ある意味での大学のための集団上京物語に端を発しているのではないだろうか。

それまでは、生まれ育った家庭の周辺で学び、働き、出会い、そこに根差した暮らしがあった。でも集団上京物語が始まった途端、見た目は大人でも心はまだ幼い若者がひとり、都会という荒波に放り出されることになってしまった。

「夢」を探すよりも、都会のリズムに同調していくことの方が重要で。

寂しさに涙するのは
お前だけじゃねえ
(歌詞一部引用)

そんなときに、心の支えになるのは、自分と同じ感情を抱いている存在。ゆえに、我々は仲間を自然とみつけていく。そして、それが家族になり、家族がまた家族を生み、生命の循環が続いていく。

だから、この曲は、ひとりで「夢を見つけようと」もがいている方への応援歌なのだ。

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