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精神的に成長した新しい彼女の姿を十分に表明しているベストアルバム ~「anytime」小泉今日子

80年代のアイドル全盛期。

当時は今とは違い、誰もがアイドルになれるわけではなく、どこかに卓越した何かを備えている人が、その道を歩んで行っていたように思う。

それは歌唱力でもあり、表現力でもあり、つまりは実力という言葉に集約しても良いかもしれない。

この本質的な部分が「IDOL」という名称そのもののイメージに隠されて、いわばステレオタイプ的なイメージが先行していたような気がしてならない。80年代からの単身世帯が増えることによる視聴率確保の戦い、マスメディア隆盛期と重なっているのも、それを助長していただろう。

このイメージというのは、やっかいなもので、小学生時代にはアイドルの〇〇が好きと言えば、それは、冷やかしの言葉を受けることを意味していた。なかなか、特定のアイドルファンとは言いにくい、どことなく恥ずかしい環境があった。こんな経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれない。

80年代のアイドルとは、実力といった本質的な部分が、アイドルという言葉のもつイメージによって覆い隠され、一人の個性がアイドルという言葉そのものの偶像にすり替わっていってしまったとも言えまいか。

そんな80年代を経て、90年代を迎えた小泉今日子は一人の個性を持った人物、一人の実力あるアーチストしての一歩を歩みだした。

この時期の楽曲を集めたベストアルバムを聞いてみるとそれが良くわかる。

「優しい雨」「あなたに会えてよかった」という楽曲は、精神的に成長した新しい彼女の姿を十分に表明している。勝手に誰かがつけた偶像というイメージからの自然な脱却だったと感じる。

80年代から90年代と時代の変遷とそれに伴う楽曲の変遷をリアルタイムで体験してみると、このことが良くわかる。

アーチストの成熟と歩調を合わせ、自分自身も年齢を重ねていくことができたことは僥倖だと思っている。


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