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80年代末に失われた伝説(2)RCサクセション 〜 80・90年代日本音楽史「拾遺」Vol.3


90年代の始まりは、日本ロックシーンの大きな喪失からのスタートでもありました。80年代の偉大なる伝説が3つ終焉を迎えました。
今回は二つ目の伝説をご紹介します。


元々フォークグループだったRCサクセション

RCサクセションは元々はフォークグループでした。どちらかというと、メッセージ性を高らかに歌い上げるというよりは、世捨て人のような雰囲気で日常生活をそのまま歌う雰囲気がありました。素朴な感じの曲が多かったですね。

「宝くじは買わない」「2時間35分」「夜の散歩をしないかね」「僕の好きな先生」「忙しすぎたから」などなど


このフォーク路線は、成功したとは言えませんでした。たぶんこのままだと70年代末にはもはや解散で歴史に埋もれていたかも知れません。

しかし、出会いの奇跡がありました。ギタリスト仲井戸麗市が加入。これが大きな化学変化を引き起こします。

方向をボブ・ディラン由来で、日本風に加工されたフォークではなく、アメリカ南部のロックに移していくのでした。

面白いのは、チャボも前はフォーク路線だったんです。

フォークとフォークが融合して、アメリカ南部ロックを志向していくなんて、面白い。

何が起きたのか?という。まさに化学変化があったんでしょう。

80年代とともにロックバンドへと変化

そして発表されたのは「君は僕を知っている」「トランジスタラジオ」「雨上がりの夜空に」といった、これからの彼らを、というよりも日本ロックシーンを代表する楽曲たち。

ここから人気に火がつき、忌野清志郎の奇抜なメイクとファッション、ライブの盛り上げなどもあり、大きなロックバンドへと成長を遂げるのでした。

ここからは80年代のきらびやかな世相とともに歩むわけです。

80年代の絶頂期

糸井重里のコピーが載ったCMのテーマソング、坂本龍一とのコラボ(忌野清志郎として)などなど。

あまりにもド派手に変化していったRCサクセションですが、個人的には80年代の楽曲にあまり魅力を感じておりません。

装飾過多だし、音の数が多すぎる気もしますし、バブリーな音なのですよね。。なんというか聞いていて落ち着かないというか。。

この頃はアルバムの完成度もさほど高くないですし。本来はもっとシンプルなバンドだったと思うのですけどね。。

そして、フォーク時代はあまり表に出していなかった、政治や世相への批判が大きくなりました。原発問題とか、政治への皮肉とか、、そういう歌詞の洋楽カバーアルバムが一時発売停止になるなど、人気とは別の方向で話題になってました。

結果として、この80年代の反動なのか、70年代への回帰なのか、このバンドとして最後に発表されたアルバムは、大人のフォークというか、アコースティック風味の大人のロックという雰囲気の完成度の高いアルバムに仕上がっていました。

ラスト作『Baby a Go Go』

『Baby a Go Go』というアルバムが、RCサクセションとしてはラスト作になりました。


1曲目は「I Like You」。


シンプルながらもこういった楽曲のほうが、彼らの持ち味がでますね。実は忌野清志郎亡き後に出た別バージョンのほうが、アレンジもシンプルで名曲度が高いです。


この楽曲は、「さあ、うぬぼれてごらん」という歌詞が良いですね。通常、うぬぼれるな!なんてことを言われるわけですけど、「うぬぼれてごらん!」ですからね。このあたりが、ファンが清志郎に期待する部分でもあります。

「June Bride」もまた、シンプルな結婚を祝う歌で小春日和に聞きたくなる雰囲気。


「あふれる熱い涙」は、大人のラブソングですね。大切に思う人を思う気持ちが高まって涙があふれるという、、、。


そしてこのアルバムの中で、またRCサクセションの中でも個人的には最高峰と思うのが「空がまた暗くなる」です。


おとなだろ、勇気を出せよ、、、。

この曲に勇気づけられたバブル時代末期のパパやサラリーマンは多かったのではないでしょうか。シンプルだからこそ伝わるものがありますね。

装飾は過剰にしたところで、言葉の意味は伝わりにくくなるばかり。シンプルな音で、シンプルなメッセージだからこそ、思いは伝わって共感を生んでいくんですよね。

そういう意味では、80年代のゴージャスさから、一転シンプルムードに回帰したのも自然な流れだったのかもしれません。

90年代へ


そして1990年のこのアルバムを最後に、RCサクセションは無期限活動停止となります。

70年代を経て80年代にモンスターバンドになり、時代を駆け抜けたバンドも、80年代の終わりとともに、その役割を終えたかのように活動をやめていきました。

その後、忌野清志郎と仲井戸麗市のコラボはあれど、RCサクセションという名を冠しての活動は一切行われないまま、2009年の忌野清志郎の死で、それは永遠に不可能な夢となりました。

90年代以降は、忌野清志郎もシンプルな音の路線になっていきました。

そういう意味では、このラストアルバムは、RCサクセションというバンドとしてはラスト作でも、忌野清志郎という一人のアーチストにとってはスタートの作品といえるのかもしれません。


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