マガジンのカバー画像

大学教員・研究者になるには

109
卒業研究・修論研究を経て研究者になろうと考えている方々向けの記事を集めていきます。大学教員・企業研究者など。
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

第5章 「好きなことを仕事に」上級編−アカデミックポストを獲得する(1)大学院に進学して修士論文・博士論文を書く

これまで、大学教員を目指す上で役立つ勉強法について説明してきました。 ここからは、大学教員になるための具体的テクニックのお話しを進めたいと思います。 大学教員になるための資格というものは、実はありません。「日本植物学の父」と呼ばれ、『日本植物図鑑』など数多くの業績を残した牧野富太郎(1862-1957)は高知県に生まれ、1912年から1939年まで東京帝国大学の講師を務めます。 その間、1927年に東京帝国大学(現在の東京大学)で理学博士の学位を得ています。博士論文は『

素直に目の前のことに取り組む 岡山大学 藤岡 春菜 先生

石川先生にご紹介いただき岡山大学 藤岡先生にインタビューさせていただきました。 幼いころから研究者への憧れがあったという岡山大学の藤岡先生。 大学院生時は毎日泣きながら論文や申請書を書いてたこともあったそうですが、博士課程時の留学で海外の考え方やメンタルケアに触れ、自分の働き方を見直したそうです。留学のきっかけも教えてもらったからとのことでした。助言にひたむきに取り組んでいる人にはよりアドバイスしたくなるし、応援したくなるものですよね。自分で損得勘定せず、まずは取り組んでい

大学教員目線の学士・修士・博士の違い ~工学系の場合~

これから大学入試を控えている高校生や,入学したての大学生にとっては,学士・修士・博士という言葉は馴染みがないものだと思う。 また,大学院進学を目指している学部生にとっても,「実際,大学院ってどんなところなのか」イメージしづらい人は多いと思う。 今回は国立大学の工学系において,それぞれにどういった特徴と違いがあるのか大学教員の視点から整理したい。 はじめに最初に,基本的な大学と大学院の構造から。 まず,一般的な4年制の大学を卒業すると,学士と呼ばれる学位が与えられる。

文系大学教授になる5:英語

 学部生の頃は、大学教授はみんな英語ペラペラと思い込んでいて、そんなこと自分には絶対に無理と思って、進路をまずは食べていくためにという発想で公認会計士に舵を取りました。大学院の5年間を修了(単位取得満期退学)した頃、オーバードクター(大学院研究員)になっていましたが、恩師から地方大学の専任講師のポストを紹介されて、あれこれと自分なりに努力をした結果(=本当は周りの支援がほぼほぼ全部)、無事に着任。公認会計士としてぼちぼち社会活動をして、この地方大学で教育に従事させていただき、

文系大学教授になる7:指導教授

 社会人が博士の学位を取得するケースが非常に増えてきました。そのまま、実務家として企業や官庁その他で活躍されるだけでなく、博士学位取得をきっかけに、大学教員としての転職を目指す方も増えてきています。人材の流動性が芳しくない日本では、学位を取得して、転職することを前向きに評価しない風潮があることは残念ですが、それでもこの流れは変えられないと思いますし、日本社会を良くするためには、この流れを強化すべきであると考えます。  リクルートや最近ではビズリーチなど、転職を支援するサイトの

「思考力は大事」と言うだけの教育者に伝えたいこと

まあ、ひとりごとだと思って聞いて(読んで)ください。 私がそう言えば誰もが頷くわけですが、しかし世の中には実際にトレーニングするコンテンツはほとんどなく、「誰かの思考の結果」だけが表現されたセミナーや書籍で溢れている。だから私は徹底的にトレーニングができるコンテンツを作り続けたいのであります。 しかしそれって(実は)とてもめんどくさい作業でして。 例えば因数分解を説明することはとても簡単なんだけど、それを身につけるための問題を考えることはまあまあパワーが要る。だからみんな

大学教員になるための就活

時々、「大学の先生ってどうやってなるの?」といった質問を受けることがあります。実は、大学教員になるルートは多様なので、一概には言うことができません。ただ、私自身の経験談は書くことができるので、一例として紹介してみようかと思います。 前提として、私が就職活動を始めたのは、博士課程2年の終わり頃から3年生にかけてになります。今は博士課程の方のキャリアも多様化していますが、私はアカデミックのポストに絞って就職活動をおこないました。 基本的には、「求人情報を調べる→書類を書いて応

【学部生向け】研究者を目指す方へ

本記事は、研究者を志す主に大学1~4年生に向けたものです。人生の10歳ほど先輩からの小うるさいメッセージとしてお読み流しください。 私自身、研究者として身を立てようとぼんやり思ったのは大学4年生の頃、より現実的に考え出したのはM1の頃でした。今覚えば、大学1~3年ともったいない時間の使い方をしてしまったと後悔しています。 「研究者になりたい」という志を持つのは、早ければ早いほどいい。研究者は自身の専攻に特化したスペシャリストであると思われがちですが、浅く果てしなく幅広い知

文系大学教授になる2:博士課程指導教授

 大学院に進学して(新卒と既卒のいずれが適当かという問題は後日ノートします)、大学の教員(大学教員組織についても後日ノートします)を目指すと意思決定をした場合、まず大切なことは、大学院での指導を受ける指導教授を見つけるということです。博士論文の指導から大学教員への就職まで色々と親身になって指導を行うのが、博士課程後期課程指導教授です。博士課程後期課程指導教授は、博士課程後期課程を設置している大学院研究科に所属(通常は学部とのダブルカウント)し、教授に昇任してかつ博士の学位を取

文系大学教授になる3:教員組織

 大学の教員組織が助手・専任講師・助教授・教授とされたのはすでに過去の話です。現在は、助手・准教授・教授が基本で、シニア助教を専任講師として処遇するケースも一般的です。なので、大学の教員組織は、助教・専任講師・准教授・教授と理解している方が、大学生のなかにも多いと思います。この理解は大学の教員組織を理解するときの基本です。  最近はこれに第三の職種とでも言うべきでしょうか、教員と職員の間のミッション(主として研究や研究支援業務)を担う教職員がおられます。職員サイドではたとえば

[研究室運営] 質問のハードルを下げるには?

どの先生に伺っても、重要だという認識だけれど、なかなか学生さんたちはやってくれないもので、どうしたものかと思案している方が多い「学生さんがなかなか質問してくれない問題」。学生さんからすると質問しにくい理由にも色々とあるので(先輩に対してこんなこと聞くのははばかれるとか、知らないのは自分だけでは?とか、理解できていないと呆れられるのでは?とか、恥ずかしいなどなど)、なかなか難しいものだなとも思います。 ちなみに、何もしなくても学生さんは質問するよとおっしゃる先生もいらっしゃる

学部・修士・博士における「研究」の違いから見た博士に進学する理由と注意点

あくまで個人の見解ですけど、落ちこぼれ博士だった私の中ではこんな感じ。 前置きまず、ざっくりだけど、情報系の研究は以下のような作業から成り立っている。実験系だと、装置の使い方なども入ってくると思うが、情報系で必要となるプログラミングは学部1〜2年で学んでいるのでスキップ。 知識獲得:文献調査を通じて、過去にどんな研究がなされていたのかを網羅的に調べる。特に最新の動向を把握していないと、最後に学術的価値のない研究だね、と言われてしまう確率が高くなる。 課題発見:1で広く文

研究が公開されるしくみ「査読」について【研究者日記】

今月になって共著者にいれてもらっている論文が4本もアクセプトになって焦っているあおきです。 さて、早速難しいですね、共著者?論文?アクセプト?といろいろな言葉が出てきます。今日は「研究がどうやって世に公表されるか?」について話します。 大学に所属しておりますので、研究者として、研究成果を公表する最高峰と言えるのが「論文」です。 研究はなかなかひとりではできませんので、たくさんのひとの研究チームでおこないます。 論文を書く際には、筆頭著者と言ってメインで論文を書くことに

「良い」発表・論文・研究の実現のために大切なこと

「良い発表だったね。良い研究をして、良い論文を書いたね。」と言われるのはとても嬉しいものです。自分でも「我ながら良い発表ができたなあ。」と思いたいものですね。そんな風に自分にとっても相手にとっても「良い」発表・論文・研究を実現したいなら、「研究者(発表者、執筆者)自身にとっての良さと、読み手や聞き手にとっての良さは違う」ということを認識し、両者にとっての良さを両立できるように進めることが大切です。この記事では、「良さ」が自分と相手にとってどのように違うのかを解説し、それを踏ま