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オオツカヒサオ コラム

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オオツカヒサオのコラムです。
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2022年10月の記事一覧

彼女を元気にしていたものは、

彼女を元気にしていたものは、

たまに家族で行く洋服屋がある。

妻が何かを買う日もあるし、娘の何かを買う日もある。などと言うとよほどの常連かのようだが、せいぜい半年に一度くらいの客である。そんな店にその日は私がロンTを探しに行った。

すると若い女性店員さんが話しかけてきた。

「(娘さん)〇〇ちゃんですよね?」

半年に一度のハンイチ客(んな言い方はない)であるにも関わらずよく覚えている。

「とても可愛かったから」

娘は

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別れたと思っていたら、

別れたと思っていたら、

タバコを辞めてもうすぐ一年が経つ。

禁煙アプリでは今日時点で6,476本禁煙し、174,853円の節約ができているらしい。俺は禁煙に成功したと言えるだろう。意志の強さ、としておきたいところだが、飲みに行く(私は飲めないので正確には飲み屋に行く)機会が激減して誘惑がなくなったのも一因であることは認める。

禁煙に成功したいま、俺にとってタバコとは何であったかということを一度総括する必要があると思っ

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世界一のクレーム

娘(3歳半)がプリンを食べていた。

妻はアイスを食べていたのだが、美味しいからと自分のアイスを娘にわりと無理やりひと口あげた。プリンに夢中ではあったがママが差し出してきたひと匙のアイスにももちろん興味はある。ぱくりと食べた。美味しそうではあった。しかしそのあとまたプリンを食べた3歳児は表情を変えた。

「ママがアイスクリームを食べさせたからプリンのお味が変わっちゃったじゃないか!!!」

アイス

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俺はそのとき「信じてくれよ」と妻に言った。

俺はそのとき「信じてくれよ」と妻に言った。

何度買ってもカーテンは難しい。

引っ越しをするたびにカーテンは買ってきた。10回近くは買ってきた。しかし、買い方に関しては上手くなっている実感がまったくない。まず事前の測り方が雑になる。いや、雑なつもりはない。そもそもレールから床までをまっすぐメジャーで測るという行為自体が私にはかなり難しい。そして長さをどうにかこうにか測ってお店に行くと「Aフックでしょうか、Bフックでしょうか」とか「測り方はレ

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偶然たちの大運動会

偶然たちの大運動会

運動会は好きではなかった。

嫌い、というほどではなかったが、足も遅かったし、球技も得意ではなかったから、特に自分のための日ではないという感じで毎年受け入れていた(他に自分のための日があったわけではないが)。

中学に入ると、運動会には時間割に縛られない非日常的な雰囲気(つまり授業がない)とか、友人との意味のない会話(つまり遊べる)とか、付随する楽しさが「運動」以外にもいろいろあることを知っていっ

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「映像の世紀」は誰のために。改訂

「映像の世紀」は誰のために。改訂

NHK「映像の世紀」シリーズの「映像の世紀 バタフライエフェクト」が放送中である。今までのシリーズよりさらに個別の人物や出来事に焦点を当てた短編集のような構成で、相変わらず眼福のある番組となっている。

二十数年前、中学生だった私は学校の歴史の授業中にシリーズ最初の「映像の世紀」を観させられた。NHKへのイメージが相撲中継と大河ドラマくらいだった当時の私にとって「放送局」というものへの新しい視座と

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「鎌倉殿の13人」が面白すぎるので誰かと話したすぎたが相手がいないので書きすぎた。

「鎌倉殿の13人」が面白すぎるので誰かと話したすぎたが相手がいないので書きすぎた。

鎌倉殿の13人、いよいよである。
と、ずっと言っている気がする。

「いよいよ頼朝が挙兵」「いよいよ源平合戦」「いよいよ鎌倉幕府」「いよいよ13人の合議制」そして今回のいよいよは「いよいよ北条義時」であるわけだ。つまりいよいよ主役が真ん中にきたのだ。「鎌倉殿の13人」の主役は北条義時である。

しかし、タイトルは「北条義時」ではない。

タイトルで主人公が分かるかどうかは、その年の大河ドラマが描こ

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