【現代詩】月と遺灰


父が死んだと電報があった

Mは一人息子

この10年家族と話をしていなかった

嫌な匂いがしたので

前の晩の飲み残しのワインを飲んだ

オリが舌に張り付いた 


島には久しぶりに雹がふり

仮想通貨が暴落した


一週間後 

骨がFedExで届いた

Mはそれを磨砕機で粉々にし 

小舟で海に運び

両手で空に放った

強い青東風が吹いて

Mは灰まみれになった

鼻から吸い込み

上咽頭に死灰が残った


港に戻ると 

対岸の森から虹が伸び

Mの住む家の庇を溶かした 

バルコニーの鸚鵡が唸る

その声は若かった頃の父親を思い出させた

ラム漬けの月の下

Mの頭の中に

スティールパンの幻聴が

いつまでも響いていた





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