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キヨメの慈雨

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現在投稿中の小説『キヨメの慈雨』をまとめたものです。 三年前の豪雨災害をきっかけに増え始めた『コトナリ』と呼ばれる不思議な生物が潜む地方都市で繰り広げられる事件を、豪雨で父親を亡…
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2023年4月の記事一覧

【小説】キヨメの慈雨 第三十八話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

【小説】キヨメの慈雨 第三十八話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

↑これまでの話をまとめたものです。

「国府西中学から来ました、速見早苗です。よろしくお願いします!」

 中学二年の夏休み明け、早苗は天領市に引っ越してきた。天領駅から徒歩10分のところに新しくできたマンションを両親が買い、一家で移り住んだのだ。新しいクラスに拍手で迎えられ、早苗は嬉しくなる。

(良かった、みんな優しそうで。ひどい災害があったからちょっと暗いイメージがあったけど、そんなことなさ

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【小説】キヨメの慈雨 第三十七話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

【小説】キヨメの慈雨 第三十七話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

↑これまでの話をまとめたものです。

「······つまり速見を助けて、速見をさらったその大伴ってやつを倒せば勝ちなんだな」

「そういうこと。でも良かったの?武蔵野くんがついてくる必要は無いのに」

 藤高神社へ走りながら、武蔵野は意澄から一通りの説明を受けていた。

「······俺、邪魔か?」

「いや、そういう訳じゃないけどさ。特民室に連絡しようとしてもなぜか圏外だし、味方はいるに越したこ

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【小説】キヨメの慈雨 第三十五話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

【小説】キヨメの慈雨 第三十五話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

↑これまでの話をまとめたものです。

 敵に背を向けていることがまずいということは、流石に小春も理解している。必死に身を翻して凍りつきそうな背筋を白壁にくっつけると、更級がにこやかな表情のままショルダーバッグの中を探っていた。

(な、ナイフとか出されたら詰みなんだけど、ホントにまずいんだけど!)

 顔を強張らせる小春の予想に反して、更級が取り出したのはゼリー飲料だった。その蓋をのんびりと開け、

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【小説】キヨメの慈雨 第三十六話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

【小説】キヨメの慈雨 第三十六話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

↑これまでの話をまとめたものです。

「はぁ··················疲れた」

「まだよ小春ちゃん。もう一仕事あるわ」

 白壁に体を預けてずるずると座り込もうとする小春を、シーズが止めた。

「も、もう一仕事······?」

「そう。あの子のコトナリを食べなきゃいけないの。あの生意気なメスネコをね」

「······わ、わかった。が、頑張って歩く」

 小春は鉛のような全身にどうに

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【小説】キヨメの慈雨 第三十四話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

【小説】キヨメの慈雨 第三十四話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

↑前回までの話をまとめたものです。

 四月二十八日、午前十一時二十四分。意澄と武蔵野が西園と交戦していたのと同時刻。

 若元小春は地下通路を抜け、旧福富邸へとやって来ていた。一通り見て回ったが、どうやら早苗はここにいないらしい。小春の能力にも反応しなかったから、どこかに押し込められているという訳でもなさそうだ。

(こ、ここに展示されてる資料の中に地下通路に関するものがあったけど、あれは美術館

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【小説】キヨメの慈雨 第三十三話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

【小説】キヨメの慈雨 第三十三話(マガジンのリンク付。これまでの話に飛べます)

↑前回までの話をまとめたものです。

 早苗の居場所の見当はついた。あとは西園を倒して助けにいくだけだ。しかし意澄は攻めあぐねると同時に、攻めかねていた。

(この人達が抱えてるものは何となくだけどわかった。でも、肝心の『早苗が犠牲になる』ことが具体的にどうなるのかがわからない!制限時間はあるの?条件は何?たぶんこれから戦わなきゃいけない大伴さんの能力は?まだ探りたいことが多すぎる······だけ

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