ゲイの僕が田舎を捨てた理由 #14
僕の地元は、田園風景が広がる典型的な田舎です。目の前には山。自転車を5分走らせれば海。
近所の人たちはたいていが顔見知りでみんなが僕のことを知ってくれていて、気さくに声をかけてくれる。そんな温かい環境の中で育ちました。
僕は、地元が大好きです。
今は大好きな地元を離れて東京で暮らしています。
西日本の田舎から上京して6年が経ちました。
上京後は慣れない電車での移動、人の多さに終始圧倒されていました。
知り合いもほとんどいなかったため、東京での生活には不安がたくさんありましたが運良く友人関係に恵まれ、東京にも馴染めてきました。
東京での暮らしにはとても満足しています。
東京が居心地がよすぎて、今では地元に帰って生活をするなんて考えられないです。
そんな僕になってしまいましたが、学生時代の僕は地元を離れるなんてことを考えたことはありませんでした。
自分は一生、地元で暮らして、大好きな地元のために働いて貢献するんだ!
そのくらいの心持ちだったように思います。
地元いる友人たちのことも家族のことも、地元の空気感も全部が大好きで当時の自分にとってそこはとても居心地のいい場所でした。
しかし、年齢を重ねていくごとにその居心地のよかったはずの場所に僕の居場所はなくなっていきました。
それを初めて感じたのは大学を卒業して、社会人になったときです。
社会人になってから少しずつ友人との関係性が変わっていったように思います。
学生時代は、たくさんお酒を飲んで、酔っ払って、バカ騒ぎをして。
何も深く考えることはなくて、ただただ純粋にその場を気楽に楽しむことができていました。
しかし、社会人になると話題の中心は仕事や結婚などの話に変わっていきました。
当時の僕は、恋愛の話になるとお付き合いしている男性のことを女性に置き換えて話をしていました。
しかし、同性を異性に変えて話をするのにはそもそも無理があるし、会話を成立させるためには嘘を重ねていく必要がありました。
友人たちとコミュニケーションを重ねるたびに、嘘が増えていきました。
嘘が増えると会話の内容に違和感が出てきたり、辻褄が合わなくなってきたりします。
それがとても苦しかったです。
僕は大好きな友人と当たり前に仲良くしたいと思っていました。
学生時代と変わらず、ずっと仲のいい友人関係でいられるのだと疑いもしていませんでした。
しかし、だんだん大好きだったはずの友人たちと会うことが辛く感じることが増えていきました。
嘘がないと成り立たなくなる関係性が素直に辛かったです。
学生時代の僕と、社会人になってからの僕は何も変わってないはずでした。
きっと、僕だけが変われていなかったんだと思います。
友人たちは、年齢に応じたライフステージに進むために自然と変わっていったんだと思います。
どんどん、話題やお互いが大事にしている価値観がズレていくような感覚が強かったです。
少しずつ友人たちとは疎遠になっていきました。
そして、家族や親戚との関わりもその辛さに拍車をかけていました。
両親は、どちらかといえば放任主義だったため僕の恋愛事情には干渉してくることはほとんどなかったのですが親戚で集まると
「ひろト、彼女はできたん?」
必ずその話題になります。
ここでも僕は嘘を重ねていきます。
大好きな家族や親戚の人たちとのコミュニケーションにも嘘が必要でした。
僕は、大好きな人たちと関わるために嘘を使わないと正常にコミュニケーションがとれなくなっていました。
嘘が増えるたびに自己嫌悪感が強くなっていきました。
そして、だんだん自分が何者なのかわからなくなりました。
僕にとって男性と恋愛をすることは“普通”で
普通に恋愛をしていて、普通に幸せで。
しかし、僕にとっての普通は僕の周囲の大多数にとっての異質でしかありませんでした。
異性と恋愛をして、結婚をして、子どもができて、親になる。
この一連の“普通”のビジョンが僕には描けない。
“普通”を期待されていることが僕にとってとても窮屈でした。
みんなが普通だと思っている僕と、本当の僕とのギャップが大きすぎてその期待に気持ちが押しつぶされそうになっていました。
社会人になってからも、地元が大好きだという事実は変わりませんでした。
大好きな友人たち、大好きな家族。全部が大好きでした。
しかし、僕の居場所はここではないのかなとなんとなく感じるようになりました。
友人たちは自分たちのライフステージに合わせて変わっていっている。
自分に合った人生を選択していっている。
僕も自分に合った人生を選択するべきなんじゃないかと、漠然とそう考えました。
地元を離れることに名残惜しさや寂しさはありましたが、それよりも環境を変えて自分自身を変えたいという気持ちが強かったです。
結果的に、地元を離れたことでよかったことがたくさんありました。
それが僕が地元を離れて上京した理由の一つです。
家族やノンケの友人関係に悩んだこと意外にも、田舎のゲイコミュニティの人間関係に苦労したことや、僕に上京する大きなきっかけをくれた元カレとのエピソードがあります。
その話も次回以降に投稿したいと思います。
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