ピロやま

くちびるにビールを

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最近の記事

自分のことばを探す旅

言葉を失っている! 自分の言葉で、自分の気持ちを語れなくなってしまっている。 そんな気がする。 映画を観たあと、アーティストの新譜を聴いたあと、自分の感想が固まる前に、他人の感想をネットで検索してしまう。 自分の意見を代弁してもらっている気になって、誰かの言葉を借りて、いかにも自分の考えかのように、人にあれこれ語ってしまっている。 そんな気がする。 数年前、音楽雑誌でコラム執筆のオファーを受けたとき。納得のいくレビューが全然書けなくて、自分がこの状態に陥ってることに気づ

    • ME:I、Click、大正解!

      なんだこれ? 最初の感想は誰しも、すべからく、そうだと思う。 新しさとは、つまりそういうことなのだ。 オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」より誕生したガールズグループME:I、 彼女たちが世に放つデビュー曲「Click」を聴いた。 僕は専門家ではないし、ポピュラー音楽にとりわけ詳しいわけではない。 だが、それでも、この曲が緻密に計算されて作られていることは、聴けばわかる。 イージーリスニングをベースに、音数の少ないトラック、中毒性

      • 17歳でうつになった僕が大人になるまで

        『胃がキリキリする』という言葉を覚えたのは中学校に上がってからで、登校前にやってくるお腹の痛みは、小学生の頃から続いていた。 時折、内臓がねじ切れるような痛みでベッドから起き上がられなくなり、内科へ連れて行かれても異常が見つからない。家に帰れば元気になるので、母からは仮病を疑われていた。 思い返すとあれは完全にストレスによるもので、その原因は学校にあったと思う。 酷いイジメに遭っていたわけじゃない。 遊んでくれる友達もいたし、勉強もそれなりにできたし、学校は好きだった。

        • 多様性社会で自分をアップデートさせたい話

          今の多様性社会って「自分がされてイヤなことを他人にしない」ってだけじゃ全然足りないじゃないですか。「自分の知らない気持ちや感覚を想像する」ってところまで求められるのがこの時代で、でもそんなに簡単にできるものじゃないと思うんですよね。他人のことって基本的によくわからないし。 だから、自分にできることと言えば「キャッチャーミットを相手に向けて構えておくこと」だと思っていて。単語に代えると「包容力」って言葉が近いかもしれないですけど、「もし相手からボールを投げてもらわなくてもミッ

        自分のことばを探す旅

          熊猫堂と僕の4年間が宝物になった日

          訓練生時代から追いかけること4年、やっと、やっと本物の熊猫堂ProducePandasに会えました。 最近知り合った方は、ピロやまさんって何者?って思ってるかもしれないので、これまでの経緯をじっくり話そうと思います。 僕が熊猫堂のメンバーで1番最初に見つけたのは、十七君でした。まだ訓練生時代で、ゲームセンターでBIGBANG「LIES」を踊る十七君の動画を見て「好きすぎてキレそう」「何もかもが完璧」と全僕がスタンディングオベーションしました(笑) そのあと彼がProdu

          熊猫堂と僕の4年間が宝物になった日

          ないものねだり

          僕はどう伝えるか、どう表現するかを考えるのが好きだ。神経質すぎない?って自分でも思うくらいめちゃくちゃ細かく考える。 人と喋るときも、DJも、この文章を書くときも、相手の受け取り方を計算してリリースしている。例えば人と喋るときはトークの間や言葉選びを、DJは文脈や作品感を大事にするし、物書きは読みごたえを持たせるように推敲する。 ただし毎回うまくいってるかと言えば違う。ちょっと考えすぎちゃったなぁということもよくある。 これに比べて感覚ベースというか、天才型の人が世の中

          ないものねだり

          Sunday Bath Time

          さっきシャンプーしたのを忘れてしまい シャンプーのボトルを1回2回 やけに泡立ちいいなと思ったら さっき洗ったの忘れてた だけどもったいない もったいないから そのままちん毛を洗う ちん毛を洗う日曜日 作詞・作曲 ピロやま

          Sunday Bath Time

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          DJ童貞、爆射精

          先日、縁があってDJイベント「ピコロック」に出演させてもらった。初めての経験だった。僕がDJ機材を触り始めたのはコロナ禍からで、友人の誘いで練習会に参加したのがきっかけ。 2、3年ほど内々で音を鳴らしていて、折角だからお客を呼ぼうとのことでイベント開催に至った。主催には感謝の念が尽きない。 結論から言うと、イベントはめちゃくちゃ楽しかった。お客のみなさんが助けてくれたのも大きかったし(大感謝です!)、とにかくまず自分が1番楽しもうという気持ちがあったので、その通りにはできた

          DJ童貞、爆射精

          夏の終わりの昼下がり

          朝、すこし涼しくなった通勤路を歩く。夏の終わりは、どこか儚い。命が燃えたあとの静けさみたいなものを感じる。あぁ僕たちもきっとこうして緩やかに終わりへ向かっていくのだと、ぼんやり思う。 家事とNetflixだけの日曜だったのに、休ませたはずの体が重い。ブルーな月曜だ。デスクに荷物を置き、コーヒーを淹れ、スケジュールを確認して仕事の続きに取り掛かる。こうしている間にも少しずつ終わっていくな、と思う。今日の業務と、だれかの1日と、そして僕の人生も。 またたく間に午前中が過ぎて、

          夏の終わりの昼下がり

          フジロックの亡霊(成仏編)

          「やべーよ、見てこれ。すごくない?」 今年のフジロックフェスティバルのヘッドライナーを発表するニュースだった。Oasis、FRANZ FERDINAND、Weezer。どれも僕らが夢中で聴いているバンドの名前だ。 このニュースを見せてきたのは南條という僕のルームメイトで、専門学校時代の同級生だった。チビで天然パーマで、家ではいつもよれたジャージを着ている。勉強も運動もできなくて童貞臭い奴だったが、バンドでギターを弾く姿は異常にカッコよかった。 「うっわ、全部めっちゃ好き」

          フジロックの亡霊(成仏編)

          かつて恋人だった僕たちは

          「ひさしぶり。今度ご飯行かない?」 昔の恋人からLINEが届いた。 日常的に連絡を取り合っているわけではない。SNSでの繋がりも、今はない。いっしょに住んでいた部屋を僕が出ていってから4年が経っていた。痴話ゲンカをきっかけに別れた。きっとよくある元カレ像だと思う。 例えば「最近どうしてる?元気?」が最初のLINEなら疑問は無いけど、いきなり食事に誘われると"何か"がある気がする。それで考えを巡らせる。たぶん、今の恋愛になにかしらの悩みを抱えているのだろう、と予想する。おそ

          かつて恋人だった僕たちは

          だから僕は会話をやめない

          30代前半で小さな会社の管理職になった。若いころもずっとバイトリーダーみたいな立ち位置で仕事を続けていたが、自分の性質に合った立場を誰かが自然に見つけてくれるのだろうか、どの会社でも2番手ポジションに落ち着くことが多い。 いつも意識するのは、トップと社員の温度差を埋めることで、このバランス調整にはかなり注力している。社員が今どんな気持ちでいるか、どんなニーズがあるか、何が好きなのか、常にアンテナを立てていて、あの手この手で情報収集をする。それをもとにトップの意向をうまく伝え

          だから僕は会話をやめない

          三角関数とケンちゃんと僕らなりの普通

          高校生ぶりに数Ⅱの勉強をしている。資格でも取ろうと書店で参考書を買ったのがきっかけだ。熱いコーヒーを淹れて、ページをめくる。 それとなく見たことのある文字列が並んでいる。サイン、コサイン、タンジェント、正弦定理、余弦定理、ピタゴラスの定理。20年ぶりに再会した彼らをひとつずつノートに書き写していく。なんだか古いアルバムを眺めているようで不思議と嬉しくなる。 数式を解いていたら、ふと当時の教室のにおいがした。おなじ公式を使っておなじように計算をしていた、あの頃。急に感覚だけ

          三角関数とケンちゃんと僕らなりの普通

          漫才「ガリガリ君」

          (A:ボケ/B:ツッコミ) A・B「よろしくお願いします~」 A「ガリガリ君って知ってますか?」 B「あー好きですよ、みんな大好きアイスのガリガリ君、当たりが出たら嬉しいやつね」 A「俺ね、今当たり棒持ってるのよ」 B「おー、よかったやん」 A「いや、よくないんだよな」 B「何でよ」 A「当たり棒を持っていくのが大変なのよ」 B「えー、簡単やん、お店に持ってったらすぐ交換してもらえるがな」 A「はぁ、全然わかってないな」 B「なに、どういうこと」 A「あのな、唾液がべっとりつ

          漫才「ガリガリ君」

          堀江君の海賊旗

          小学生の頃、堀江君という友達がいた。 痩せ体型で"ホネホネロック"と同級生から呼ばれて、からかわれていた。 僕も低学年の時に堀江君のこめかみを拳でグリグリ攻撃したことがある。 それでも彼は明るい人柄であまり気にしている様子もなく、男子たちの輪の中で楽しく過ごしているように見えた。 高学年になって、僕は放課後のクラブ活動でイラストを描いていた。彼もそこに居た。 堀江君は皆と仲良くドッヂボールクラブに入るだろうと思っていたから少し意外だった。 そんな僕の気持ちを察したのか、彼は

          堀江君の海賊旗

          父と映画とブラキオサウルスと僕

          物心がつくまで、僕の田舎には複合映画館が無かった。その代わりにいくつかの単館が、各々契約している配給会社の作品を上映したり、人気がある洋画の放映枠を取り合っていた。東宝のスクリーンは、アーケード街にあったダイエーの上階にあって、ジブリ作品も扱っていたのでそれなりに賑わっていたと記憶している。そのほかにはホール型の独立したシアターもあり、県内でもっとも老舗だった"徳島ホール"は主に洋画のヒット作を上映することで知られていた。 "徳島ホール"は、僕の父がやたらと愛着を持っている

          父と映画とブラキオサウルスと僕