ME:I、Click、大正解!
なんだこれ?
最初の感想は誰しも、すべからく、そうだと思う。
新しさとは、つまりそういうことなのだ。
オーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」より誕生したガールズグループME:I、
彼女たちが世に放つデビュー曲「Click」を聴いた。
僕は専門家ではないし、ポピュラー音楽にとりわけ詳しいわけではない。
だが、それでも、この曲が緻密に計算されて作られていることは、聴けばわかる。
イージーリスニングをベースに、音数の少ないトラック、中毒性のあるフレーズとリズム。
K-POP第5世代から踏襲したこれらのボディに、日本を代表するピコピコボカロサウンドを着せ、
グループのアイコンやファンダム名でテンポ良く韻を踏み続ける。
昨今のポピュラー音楽市場におけるトレンドを、1曲に詰め込んでいる、と言える。
「ぼくのかんがえたさいきょうのデビュー曲」の爆誕である。
ところが、なんとなく引っ掛かる。
SNSを一通りさらっても、ティーンたちは口を揃えて「大好き!」となっていない。
何故だろうか。
それはひとえに、デビュー曲らしいキャッチーさが無いからであろう。
「未来のアイドル」は彼女らのコンセプトのひとつであるが、ここから感じる印象を、楽曲が超えられていない。
多くのリスナーが期待したのは、かつてNewJeansが提示したような"革命的な価値観"だったのではないか。
と考えると、そのハードルはあまりに高かった。
「Click」の曲自体には、今後の業界を引率するようなパワーは無い。
ヴィジュアルコンセプトの方が強い。
ジャパニーズKawaiiを全面に押し出したMVは、ご覧の通り圧巻である。
Kポ界隈に真正面から殴り込むより、イロモノとして参戦した方が勝率が高いという読みだろうか。
では、なぜ制作陣はデビュー曲に「Click」を選んだのか。
これは「ME:Iがオーディション番組出身だから」に尽きる。
彼女たちには、すでにコアなファンがついている。
この状態で、今、大キャッチーな新曲で勝負というのは、いささか単純すぎる。
新規顧客の獲得はほどほどにして、すでに捕まえているリスナーを留まらせる方が、理にかなっているように思う。
そこで選曲するのが「聴くほどハマる中毒的な曲」であり、この「Click」である。
いやぁ、痺れる。プデュでハマった層を離さない、見事な戦略ではないか。
きっと最初は爆発的に、そしてじわじわと売れていくだろう。良いデビュー曲だと思う。
世界的に見れば楽曲の新鮮さは足りないように感じるが、国内デビュー曲としては、個人的に大正解。
耳の肥えた音楽マニア向けへは、セカンド以降に新しい体験を用意してくれることを期待する。
まだまだ、道は切り開かれたばかり。
今後の活躍が非常に楽しみである。
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