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弱点は創る為の大切な素材。弱点とクレームから生まれた絵本体験型施設「トロピカル王国物語」

沖縄フルーツランドは、「トロピカル王国物語」という絵本の世界を冒険するテーマパークです。
たくさんの秘密やフルーツ魔法に囲まれた絵本体験型施設です。


お客様からのクレーム「フルーツがない!」

観光施設が、絵本の世界を創るきっかけは、お客様のクレームでした。

「沖縄に来たのに、フルーツがない!」

沖縄には「南国フルーツがいつでも実ってる」というイメージがあります。
しかし、熟したパイナップルやマンゴの果樹が見られる時期は、
夏場の「約1ヶ月間」です。

つまり、それ以外の約11カ月間は、見る事ができないのです。

その声がそれまで出てこなかった理由は、当時の旅行スタイルによります。
1990年代までの主要な観光は、「団体旅行」でした。

団体旅行では、バスが到着すると、
ハンドスピーカーを持ったスタッフが、
苗の植え付けから収穫までの流れを説明する事ができたのです。

しかし、「個人旅行」への変化で、全てのお客様へ説明ができなくなり、
2010年頃にクレームが出てきたのです。

フルーツの研究で分かったこと「調和」

その対応策として、
毎月フルーツを実らせる事ができないか?」という研究を
農業試験場 協力のもと始めました。
光や水の与え方、土や肥料のあり方など数年に渡り試してみました。

結果は、
パイナップルの成熟期を、夏から秋頃へスライドする事に成功しました。

しかし、予想外の事が起きたのです。

果実を収穫した後、
ほとんどのフルーツは、枯れてしまったのです。

フルーツも人間と一緒で、
無理をさせるとダメージを負ってしまったのです。

その経験から、
「水や光、土や肥料や人間の愛も含め、全てが揃った上で、
実るべき季節に実る果実が、一番美味しくなる事」

つまり、フルーツは【調和】が大切だと気づいたのです。

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そして、もう一つ大切な事

園内に「パンの木」という面白い名前の木がございます。

早速、由来を調べてみると、
中南米では、果実を蒸してお芋やパンの様に食べる事から名付けられたそうです。

そちらでは、パンは主食です。

この木を庭に植えておくと、
「パンが実る木」→「主食が実る木」→「食事に困らなくなる木」→「お金持ちになる木」という言い伝えがあったのです。

つまり、フルーツには「人との幸せな話」が詰まっていたのです。

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自然を操作するのではなく、
フルーツの「調和」と「幸せの話」を伝える施設にしようと決意しました。

このコンセプトであれば、365日、いつでもお客様をお迎えできます。

早速、それを伝える為に「看板」を立ててみました。
結果は、誰も読んでくれません。

読んでいただく為に、看板を大きくしたり、位置を変えたり、
デザインを変えてみたりしましたが、結果は変わりません。

「強制的に読んでもらい、なおかつ楽しんでもらえる方法」はないか?

「見せたいものは、隠す!」そして生まれた絵本の世界

なんどもなんども考えて出た結論は、
「見せたいものは、隠す!」

お客様が「見ない」ではなく、
私達が「見せない」に変えました。

次に、それを開けたくなるような「仕掛け」をつける事にしました。

最後に、それらを一つに紡ぐ必要性が出てきました。

調和や幸せ、施設内の全てを包み込む事ができる仕組みを考えた結果、
2012年に生まれたのが、絵本の世界「トロピカロ王国物語」です。

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現在、沖縄フルーツランドは、
その絵本の世界を冒険するテーマパークとなっております。

トロピカル王国物語の内容は、
『ある日、優しい妖精たちが、トロピカル王国の王様をさらってしまいました。
王様を救う為に妖精の国へ行かなくてはいけません。

妖精の国へ入るための条件は2つ、
1つ目は、19個のフルーツ魔法を覚える事
2つ目は、4つの鍵となる印を見つける事


さあ妖精の国へ王様を助け出しに行こう!』

まず、「看板を読む」を「フルーツ魔法を覚える」に変えました。

魔法を覚える為の台座には、フルーツ魔法を覚える為の問題があり、
表面の下には答え(フルーツの説明:看板)が隠されています。

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2つ目の条件、4つの鍵となる印は「順路」に繋がります。

園内には、順路を示す「矢印サイン」がありました。

しかし、その通りに進んでいただけない事が多々ありました。
また、スタッフオンリーや禁止の場所に入るお客様もいます。

思い切って、サインでの誘導をやめ
お客様を誘導する為に「目的」を用いる事にしました。

それが王国に隠された4つの鍵を見つけ出す「目的」つながります。
今では、目的に沿って順路通り冒険を楽しんでいただいております。

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トロピカル王国物語は、「弱点」から生まれた物語です。

トロピカル王国物語の製作以降、
弱点やマイナス要素は、全て「素材」として考えるようになりました。

弱点は、人も企業もそれぞれ異なります。
異なる弱点を「素材」にして創りこんでいくと、
自然とオンリーワンのものが生まれてきました。
そうすれば、他と勝負する必要もなくなります。

マーケットを探すのではなく、「創る事」が重要だと気づかされました。

さて、トロピカル王国物語は、2013年にグランドオープンし、
年々バージョンアップしておりますが、まだまだ続きます。

実は、現在公開されている物語は「Ⅰ」です。

スペシャルサイトでは、サイドストーリーの公開が始まっております。
今後、物語は、Ⅱ・Ⅲへと進んでいき、
最終は「調和」というテーマに進んでいきます。

物語は、Ⅰの後半以上にどんどん急展開していきますが、私達もワクワクしながら創りこんでいきたいと思います。

トロピカル王国物語:遊び方とイントロダクション動画↓↓

トロピカル王国物語の過去編「忘れられた伝説の話」の制作秘話↓↓

トロピカル王国物語HP(物語を遊んだり、物語の本編やサイドストーリーやメイキングなどを読む事ができます)↓

沖縄フルーツランドHP↓


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