記事一覧
「棕櫚を燃やす」 野々井透
「これからの1年を余さず過ごそう」
「まるごと感じながら、みんなでそこに身を置く」
父が余命1年と宣告され、娘2人を併せた3人が残された時間を大切に過ごそうと決め、その1年が本書では描かれる。
「今って瞬間は、言った瞬間に終わっちゃうけれど、その今を捕まえて、貼り付けて止めておきたい」「貼り付けて永遠にしたいようなことを、きれいだなとか、美しいって呼びたくなるのかな」
回顧出来る様に、“今”
「変な家2」~11の間取り図~ 雨穴
本書は、信仰心を描いている。
家族のカタチが家(間取り)に表される。
11の話が紡ぎ、大きなストーリーを作り出している。
弱みを握り、それに漬け込む。
そうして芽生える信仰心は、教育にも通じる所があると考える。
洗脳(宗教)と教育の違いについて。
教育:内から引き出すもの
洗脳:外から注ぎ入れるもの
定義としては反対であるが、実態に大差ないと思う。先生が⚪︎を言えば正解であり、先生の思い通りに
「ルポ 歌舞伎町」 國友公司
困苦欠乏で数奇な人生を歩んでいるのは本当か、確かめる為に歌舞伎町に赴いてみた。
摘発後の大久保公園には、少しの娼婦と覆い被さる様な勤め人が。歌舞伎町も外国人が多く、見世物目当ての人(小生の様な)が多いと見えた。
以前に人寄せをしていた時、歌舞伎町では無いが、多くの人を見ていた。1番印象に残るのは、皆話が出来る事だ。馬鹿でどうしようも無い人間は、一部の客を除き居なかった。
渋谷駅前で、フリーハ
「10歳で私は穢された」 橋本なずな
子は、感情を表現できなくて泣く。
主人公は、うさぎに置き換えて感情を表した。
父のDVと離婚。母の新しい恋人に性的虐待を受ける。洋画に憧れてアメリカ留学するも、失望し体を売る毎日。帰国し彼氏が出来るものの、些細な諍いから心を病み、2度の自殺未遂と母を殺そうとする。
現在23歳の彼女は、何度も人生に絶望した。
失望して、何度も正義感を歪められる。
性依存症になる事象のみを切り抜き、マイナスな表
「手紙屋」 喜多川泰
就活活動に苦戦する僕が、偶々入った喫茶店の玉座で手紙屋と出会う。10通まで手紙を返してくれる“手紙屋”と文通をし、自分の仕事観や人生観を見つめ直していく物語。
私は、就職活動期に多くの人に会った。高校の先生、海外でプレイするサッカー選手、サッカークラブを立上げた方、書道家など数え切れない程だ。全ての人に意見を乞い、今の自分の価値観が養われていると思う。
彼等との出会いは偶然だったと思う。無論自
「月と散文」 又吉直樹
帰省した。思い出を形として再想する。
再層された記憶には色があり音がある。
ビルの3階を不意に見てみる。
柱の影にある塵の堆積を見てみる。
離れた所に住む人を思い出して、土産を選ぶ。
花はどうだろうか。
汚れた壁に触る子と嫌悪な顔をする父
父にはまだ遠いのに、父に同情してしまう。
日々感慨に耽ている筈なのに、何も残さず、時間は流れていく。勿体無いのかだからこそ良いのか。
そうしてSNSで
「辺境の路地へ」 上原善広
新しい人と会う機会が多い。
殆どの人が50代(私の倍、生きてる)で、多岐に渡り、知見を教授頂く。
彼等全ての人が輝いて見え、安穏な日々を送るものと信じている。しかし、そういう訳はなく、見難い事を経て(現在も)、過ごしている事に気付かされる。
先日も、商社のマネージャーと話し込んだ。
5人の子と専業主婦に囲まれている。
しかし、奥さんと長く口を効かず、予期せぬ出産もあり、最後の子は已む無い言い様
「ポンコツ一家」 にしおかすみこ
本書は、にしおかすみこさんが、
母、八十歳、認知症。
姉、四十七歳、ダウン症。
父、八十一歳、酔っ払い。
が居る実家に戻り、そこからの生活を綴ったものである。
文章はユーモアに溢れるが、情態は中々に受入難い。世話に追われ、家族には槍玉に挙げられる。
1冊をあっという間に読み終えた後には、長編小説を読んだ後の様な、どっと重い、煩わしさが込上げる。
彼女は、已む無く実家に戻り、想像絶する状態を
「他人をバカにしたがる男たち」 河合薫
自身の保身だけを考え、行動する人達(ジジイ)は何故に生まれるのか。慕われる人と2極化する根源とそうならない為には、が描かれる。
他人を馬鹿にしたがる“老害”か否かは、SOC(首尾一貫)人生の辻褄合わせが出来るか。つまり、自己受容が出来てポジティブな人は老害では無いとある。
また「自分の可能性を信じられるかどうか」が重要な因子とある。
もう50代だし。就職したから。
自身の保身に走る人は、性別
「今日、借金を背負った」 増田明利
借金という言葉に、毛嫌いする自分がいる。
しかし読了後、縁の無い世界であると、言い切れない自分がいる。
本書には、借金で人生が狂った11人の経緯が描かれる。
些細なところに魔の入口はあると知る。
生活の足しに10万円借りる。直ぐに手に入るカードで更に借りる。何に使おうか考えてしまう。
就活中の女性に、エステや美容アクセサリの契約を狙う。止む無く就職したサービス業で、日常的に罵詈雑言を浴び、
「ずっと、おしまいの地」 こだま
“招き猫”に例えられる著者が、日常をユーモア溢れる表現で纏めている。
怪しい商材に嵌る両親の事。自身の遍歴。日常の些細な1コマ。
彼女の著作は初めてだが、正直な(曝け出す)人と思った。心地良く読み終えた。
やらかした話。創意工夫により可笑しいのは勿論、上品さも持合せ、気持ち良かった。
人生は一方通行だなと思う。過去から未来に流れる中で逆流はない。「あの時こうしておけば」「やり直したい」は駄
「ビニール傘」 岸政彦
喪失感と虚無感。孤独。
本書を纏める事は不可能と思う。
ビニール傘を居場所と訳した。
重苦しい空気が流れている。大阪にいる男女。生きる為に働く。出会いと別れと同じ次元に、生きる死ぬがある。様々な人、断片的な視点は、彷徨い続ける人を浮き彫りにする。
社会学者の著者だからだろうか。あまり創作は感じられず、ただ苦しい感情だけ、呼び起こされた。
飽和する自分。
あるモノばかりに夢中になり、ないモノ
「これはちゃうか」 加納愛子
住みたい町上位のファシマーラに住む女性。
ワインの違いが分かる高収入な旦那と別れた。息子達に会う時に、少なくない小遣いと1番肌触りの良い服を着て会いに行く。しかし小さい頃から謙虚で思いやりのある子は、躊躇なく憐みの目を向ける。小遣いも丁重に断られる。
新しい駅が生えてくる。
駅だらけの町。家が無くなる。
15歳の少女が1万円を差し出す。
最終日が好きな主人公。
時間を掛けて描き上げただろう
「ゲーム反対派の僕が、2年で4000時間もゲームをするようになった理由」 小藪千豊
ゲームに意味を見出せないと思い、子をゲームから遠のいていた著者。そんな著者が、ゲームに虜になり、その意味を見出せる迄。
ゲームを通して、親子の関係性が一変し、教育的側面にも一役買う。子の主体性も育まれ、この上無いコミュニケーションツールになる。
本書には小藪さんの“子育て論”も描かれている。『子供を可愛いと思わない様にしている。大人を育てている感覚でいる為』という一節が印象的だ。
1つ気にな
「せなか町から、ずっと」 斉藤倫
せなか町のお話。
ひねくれカーテンと町で言われる、嘗て立派だったお屋敷にかかるカーテン。風の無い時はひらひらとカーテンを揺らし、風のある時には石の様に動かない。
町の皆は、ひねくれカーテンの歌まで作り、それを馬鹿にしていた。
それは実は、体の弱いマメルダばあさんを気遣っての事だった。暑苦しい日には風もないのにひらひらそよいで、部屋の奥まで、そよ風を吹かせる。肌寒い時には、どんなにすきま風が入