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「ポンコツ一家」 にしおかすみこ

本書は、にしおかすみこさんが、
母、八十歳、認知症。
姉、四十七歳、ダウン症。
父、八十一歳、酔っ払い。

が居る実家に戻り、そこからの生活を綴ったものである。

文章はユーモアに溢れるが、情態は中々に受入難い。世話に追われ、家族には槍玉に挙げられる。

1冊をあっという間に読み終えた後には、長編小説を読んだ後の様な、どっと重い、煩わしさが込上げる。

彼女は、已む無く実家に戻り、想像絶する状態を前に、逃げたいと思わなかったのだろうか。
認知症が進んだ母に、自分だけが忘れられた事すらも、平穏な日常の一部に喩えられていた。


最近歳を取る事を考えてしまう。

この先をどの様に生きるのか、どうにも想像が付かない。会社があるか分からない。お金があるか分からない。誰と何処にいるのか。部署で引退を控えた方々に囲まれるからか、焦ってばかりいる。何も見えていない23歳なのに。

しかし、怖いのは、認知症になる自分は想像できてしまうのだ。

盲目という意味で、親和性を感じてしまう“母”。
悶着する娘、毛嫌いする父。
1番世話になる著者より、2人を覚えている事は、母なりに心配し、気に掛けている所以だろうか。

新幹線のお供に本書を手に取った。斜め前の席には、3人掛け席を寝床にしている老婆が。

愛情があれば、物事を肯定出来る。

離れて在る実家に、1年に1度戻るとする。そう考えると、あと何度、帰省の機会があるだろうか。カウントダウンが始まっている事を心付き、焦り出す自分がいる。家族を感じたくなってきた。

西岡さんの、実家に戻る選択が、正しかったと思える事を祈る。

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