「手紙屋」 喜多川泰
就活活動に苦戦する僕が、偶々入った喫茶店の玉座で手紙屋と出会う。10通まで手紙を返してくれる“手紙屋”と文通をし、自分の仕事観や人生観を見つめ直していく物語。
私は、就職活動期に多くの人に会った。高校の先生、海外でプレイするサッカー選手、サッカークラブを立上げた方、書道家など数え切れない程だ。全ての人に意見を乞い、今の自分の価値観が養われていると思う。
彼等との出会いは偶然だったと思う。無論自発的な交流であるが、運が良かったと今は思える。
“僕”が如何にして成功し、失敗していくかをもう少し見たかったと読了後に思えた。その事由は、私がただ現実で、その佳境に入るだけであるが。
本書で気になった点が2つ。
①『失敗した人は才能を理由に挙げる。成功した人は情熱を理由に挙げる』
②『その人の人生に必要なものはその人の周りに過不足なく揃っている』
①について、友人と最近に話した事に通じる。頭の善し悪しはセンスだよね、というお題。間違っていない気もするが、私は如何にも認めたくなかった。現実を忌避し合う事は、負け集団の一員と自分が認める事になる。センスと認めたくなくて、勉強をしてきた自負もあるからだ。
②についても、腐れ縁というか、自分にとって有難い存在の人が、ずっと連絡を取合ってくれたりする。
学生時代に、塾講師のアルバイトをした。君はこの大学どうかな、と高校生相手によく面談した。
“手紙屋さん”が主人公の価値観を大きく変えた様に、僕もその舵取りをしていた。
個々の人生観は、周りの環境によって大きく変わるなと実感する。コンビニに集まる煩いバイクの少年達も、発起人がいなければ大人しく家に居る青年だろうし、私も先述の方々の御高見が無ければ、地元の企業に間違いなく行っていただろう。
難しいのは正解が分からない事だ。
誰か本当に素性の知らない人と、文を交わしてみたいと思えている。私の周りに、不足分を埋めてくれる人は居る筈なのだが。
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