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「憐憫」 島本理生


子役で活躍した後、家族が稼いだお金を使い込んでいたと分かる。母親は、付添も仕事みたいなものよ、と一蹴した。しかし、無理に現場に来る母親を社長は嫌がっていた。
私は心の調子を崩した。

空白の期間があり、ディレクターと結婚した。
旦那は協力的で優しい一方、私は、刺激欲しさに行った出会い系バーで柏木さんと出会う。

私は彼に心を奪われていた。
彼と会う機会を重ね、多くの時間を過ごした。
私は彼を求め、彼は受け入れてくれた。
彼と私は仲良いのかもしれない。仕事にも良い影響がある。

彼の素性も知らないまま半年が過ぎた。
2人の時間が唯一の休息だった。

私は多忙になる。憎い親族や夫、新しいマネージャー、様々な要素が物語を複雑化させる。

彼との別れ、夫との関係。
酸っぱい恋愛小説は切なく、題目が憐憫だが、共感はまだ出来なかった。

終盤まで彼の事を知らなかった。
2人の男女は互いに、深く理解し合っていた様にも取れるし、薄い関係性ともいえる。

世の中には合わない人がいる。
只管に合う人もいる。

寂しさの見せしめで、浮気をする人もいる。
嬉しくても悲しくても涙は出る。

その一方、惰性的な関係こそが美しいと思う。
ないものねだりは、時に自我を見失い、環境をも変えてしまう。

1番魅力的な年齢を過ぎたら、お金をかけたり、経験で別の価値を補ったりするものじゃない?でも、1番良い時に1番良いものを掴む準備はしておいた方が良い。

本文で、私は友人からそう言われた。
以前に、尊敬する知人から「チャンスはチャンスという名で降って来ない」と言われた。毎日が何かの転機という事を忘れてはならない。

「私はお金という名の物質」
という表現が尾を引く。

最後に。
人間は簡単でない事を知っている人。
彼は私をそう例えた。
多面から裏切られた“憐憫”な彼女。彼女は最善の選択をしたと言った。それこそが憐憫に思えた。

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