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春の風

写真と俳句 その十四から十七

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不忍に鷁首の船や春の風 正岡子規 
明治三二年  *1

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*1  鷁(げき):鵜(一説にはサギ)に似た中国の想像上の水鳥の名。天子の船などの先端にこの鳥の首を刻むことがあり、そのため、その船をさすこともある。
「竜船鷁首(りょうしゅうげきしゅ)」:天子や貴族などの地位の高い人が乗る船。「鷁」は、強風の中でも難なく飛ぶことができるので、水難避けとされている。竜や鷁の頭の彫り物を船首に飾りつけた二艘で一対の船で、平安時代から室町時代に祭礼や宮中の行事、貴族の水遊びなどで使われていたとされている。(「四字熟語辞典ONLINE.」より)
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芝浦にて

 明治時代、現在の港区芝浦一丁目 と芝四丁目の一角に、小規模な料亭兼置屋が開業されました。

 1872年(明治5年)、新橋から横浜までの鉄道が完成すると、芝浦は、風光明媚で駅から近いため、行楽地として発展していきます。海水を沸かした温泉が楽しめたため、病気の療養や、海水浴による健康増進をしました。旅館が建てられ、料亭や茶店も多く、人々は、花火や潮干狩りなどをして、遊んだようです。
 以下<写真2>、1901年(明治34年)の「風俗画報臨時増刊」によると、浜辺の景観の良い場所に、旅館などが建っているのが見てとれます。

 その翌年、置屋が営業を始めると、芝浦芸者が生まれ、1907年(明治40年)には、置屋28軒、芸妓81名、待合20軒になっていたそうです。芝浦花街として、賑わいを見せますが、その頃から埋立が進み、明治末期になると、経営不振に陥ります。<写真4>の赤枠のあたりが埋立地です。 

 1923年(大正12年)、関東大震災が起こったことで、他の花街から移転してくる業者があり、また港に近い芝浦は、復興のための資材輸送で、賑わいをみせていきます。芝浦製作所(東芝)や、東京瓦斯(ガス)などの工場ができ、築地の魚市場は芝浦で一時営業を始めます。細川力蔵氏が、1928年(昭和3年)に自邸を増改築し北京料理店の「雅叙園」を開店、また1936年(昭和11年)には、寄附により見番*2 (現在の港区立伝統文化交流館<写真1>)を造ったこともあり、芝浦三業地(置屋・料亭・待合)は、再度、活気付きます。

<写真1> 港区立伝統文化交流館 (旧協働会館 、見番)

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春風や闘志いだきて丘に立つ 高浜虚子 大正二年(1913年)二月十日 
              東京芝浦 三田俳句会にて 
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<写真2> 港区立郷土資料館 資料より (一部、加筆させていただいています)

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花冷えに見番入りて暖をとる 広在 *2
桜鯛芸者の頬も薄ピンク 広在
潮干狩大波浴びて笑いあう 広在 
ロセッタという船に泊まりて春の風 広在 *3

俳句入門講座「芝浦の歴史と風景を詠んでみよう」 
令和三年(2021年)三月五日 港区立伝統文化交流館にて
講師:岸本尚毅先生、港区立郷土資料館 学芸員 大貫先生
 (岸本先生の名誉のために申し上げますが、
  こちらのご講座は一度のみです。俳句の弟子ではございません。
  ご講座は、とても楽しかったです。またの機会を。)

*2 見番:芸者に口がかかった時の取次や玉代(ぎょくだい)の計算、芸者屋の取締りなどをする事務所。「置屋」「料亭」「待合」の三業を取りまとめて芸者の取次や遊興費の清算などをする。

*3 ロセッタ:芝浦埠頭に係留されたイギリス製の大型汽船のホテル名。
その大型船は、1931年(明治34年)に東洋汽船が購入し、尾城汽船へ売却。ホテルとして利用されたのは、その後とのこと。当時のガイドブックや広告などによると、500人もの人々が会食できる大広間があり、和洋中の食事も提供されたそうです。1,000人以上の園遊も可能だったとのこと。その海に浮かぶ優雅なホテル「ロセッタ・ホテル」は、一時、流行したそうです。
               (「港区ゆかりの人物データベース」より)

<写真3> Rosseta Hotel   国立国会図書館デジタルコレクションより
(著作権保護期間満了)
<写真4> 港区立郷土資料館 資料より (一部、加筆させていただいています)

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 港区立伝統文化交流館(旧協働会館 )<写真1>は、1936年(昭和11年)に造られた都内唯一の木造建築の見番。西に8メートル移動する曳家(ひきや)工事により、現在の場所へ。バリアフリー施設は、建造物に支障がないように、増築されています。青木茂氏によるリファイニング(再生)建築。

 港区立伝統文化交流館<写真1>の右奥に、囲炉裏の跡がご覧になれます。クローズアップは後ほど。

 喫茶室がありますので、美味しいお茶を是非どうぞ。
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以下の項目について、現在の写真(21枚)、若干の説明と感想などを記しました。
よろしかったら、ぜひ、ご覧ください。よろしくお願いいたします。
 (*ご返金設定はしておりません。)

 御穂鹿嶋神社:御穂神社、鹿嶋神社、鹿島橋と香取橋
 雑魚場:芝うらの風景、落語「芝浜」、台場
 芝浦花街
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