見出し画像

グローバルな環境で効率的に働くために気を付けるべきこと

ほとんどの人が母国の文化の影響を受けています。自分はニュートラルだと思っている人もいるかもしれませんが、現実にはそうではないでしょう。そもそも文化的にニュートラルというものはなく、常に相手との相対関係で自分の文化的立ち位置は変わるのです。例えば、フランス人から見たらイギリス人は時間に厳しいと思われたとしても、ドイツ人から見たらイギリス人は時間にルーズだと思われるといった具合です。

もちろん出身の文化にあまり影響を受けていない例外的な人も少なからずいますが、彼らはむしろ不適切で受け入れられ難い存在となっていることが想像できます。基本的には出身の文化ごとにある幅の中で分布しており、各個人はその幅の中で自由に選択を行なっています。他文化の人々と働くときは出身地によって各人の性格を決めつけるべきではないのも確かです。しかし、だからといって文化的コンテクストを学ぶ必要がないということにはなりません。あなたの仕事の成功が世界各国の人々と上手に働く力にかかっているのであれば、個性の違いだけでなく文化の違いも理解する必要があり、どちらも重要なのです。文化か個人の性格かではなく、文化と個人の性格が問題なのです。

コミュニケーション

画像1

多国籍チームでのコミュニケーションは明示的(ローコンテクスト)にすることが重要です。日本のような単一民族の社会では、暗示的(ハイコンテクスト)な言葉遣いをすることが多いです。暗黙の了解が多かったり、空気を読む文化ともいえます。特に日本は単一民族の島国社会で、その歴史の大部分は他の国から閉ざされた状態(鎖国)でした。数千年かけて、人々は互いのメッセージを汲み取る能力に長けるようになったのです。

一方で共有する歴史が数百年しかないアメリカは、世界各国からの移民で成り立っており、それぞれが別々の歴史、別々の言葉、別々のバックグランドを持っており、共通のコンテクストをほとんど持っていないため、世界でも最高レベルでローコンテクストな言語を用います。アメリカの人々はメッセージを伝えたいと思ったら曖昧さや誤解が生じる余地をなくて、できる限りはっきりと明快に伝えなければならないと経験から学んだのです。多国籍なチームでは、国で言うアメリカに近い状態と言えるでしょう。つまり、なるべく明示的な表現を心がけないとミスコミュニケーションが多発してしまいます。例えば、何かを同僚に頼まれたときに「難しいです」と答えても、断ったことにはならないと思っておいた方がいいでしょう。文字通り「うん、難しいよね」って認識されるだけかもしれません(笑)

また、インターナショナルな環境では、言語は英語となることが多いと思います。第二言語として英語をビジネスで用いることは決して簡単ではありません。特にネイティブ同士のディスカッションのスピード感についていけなかったり、会議で自分の意思をうまく伝えきれなかったりすることは日常茶飯事です。仮に自分の英語力に一切問題がなくても、チームにそういう状況のメンバーがいるかもしれないと認識しておきましょう。一方でノンネイティブであっても読み書きは得意という人はかなり多いため、チャットを用いた方がより高度なディスカッションができることも多いです。私の経験上、チャットでのコミュニケーションを効率的に使用していくことが多国籍チームではかなり重要だと思っています。

否定的なフィードバック

否定的なフィードバックの際にはコミュニケーション同様、明示的に表現することが必ずしも適策とは言えません。当たり前の感覚かもしれませんが、直接的なネガティブなフィードバックは、受けた相手の気分を害してしまうことも高いからです。

実は多くのヨーロッパ諸国では、直接的にネガティブなフィードバックをぶつけ合い、建設的な議論が行われることが好まれてたりします。そうでない文化の人から見ると喧嘩しているようにも見えることもありますが、白熱した議論が終わった直後に仲良くご飯を一緒にしていたりします。一方で多くのアジア諸国では、直接的なネガティブな発言は人格そのものを否定しているように思われかねません。先ほど多民族で最もローコンテクストなコミュニケーションをとると紹介したアメリカも、実はネガティブなフィードバックの際には間接的な表現を好みます。一つの否定的なフィードバックをするために、その前に何個も褒め言葉をかけられることが多いです。

もしあなたが間接的なフィードバックをする文化で育ってきたのであれば、インターナショナルな環境であえて直接的な表現をしようと心がける必要はないと思います。というのも、もしあなたがヨーロッパで働くことになって、現地の人々を見様見真似で直接的なフィードバックをしても、加減がわからずにやりすぎてしまい、むしろ関係が悪化するということが起こりかねないからです。大切なことは、互いに文化の違いを把握することです。間接的なフィードバックに慣れている人が仮に直接的なフィードバックを受けても、文化の違いの割り切って強くショックを受けないことが必要です。(これがなかなか難しいのですが、、笑)

思考パターンの違い

インターナショナルな環境では、コミュニケーションの方法の違いだけでなく、文化による思考のパターンにも違いがあるため、説得が難しいということがあります。決断を下すために原理優先の論理を使うメンバーもいれば応用優先の論理を使うメンバーもいる場合、出だしから衝突が起きたり非効率に陥ることがあるのです。さらに大変なのは、人は自身の思考パターンに自覚的でない場合が多いことで、そのため自分とは違う思考パターンをネガティブに判断してしまったりすることです。

多くの場合において、アジア人はマクロからミクロへと考える一方で、西洋人はミクロからマクロへと考えます。例えば、住所を書くときも日本人は県、市、区、地名、番地とかくのに対して、ドイツ人は反対に家の番地から書き始めて、それから市や州へと続けていくような感じです。同じように、日本人は苗字を先に書くが、ドイツ人は名前から書く。日本人は年、月、日と書くが、これもドイツ人は反対に書く。

こうした思考の違いがあるために、アジア文化と西洋文化の人々の間に行き違いや困難が生じるのももっともでしょう。西洋人はアジア人があえて本題に入らず回り道しているように感じる一方で、アジアの人々は西洋人が一つの要素だけを取り出し、相互関係の重要性は無視して決断を下そうとしているように感じるのがその典型例です。

信頼関係の築き方

画像2

仕事場での信頼の築き方も文化によって違いが出ます。タスクベースで信頼関係が築ける文化とプライベートレベルでの人間関係が仕事に影響する文化があります。言い換えると、ディナーを何時間も共にすることも仕事の一部な文化、仕事は仕事、終わったら家族や友人と過ごすという文化もあるということです。

日本文化では「接待」というものがあったり、社内の飲み会で同僚と打ち解けてその後の仕事もスムーズに行くということは珍しくないように思います。異文化チームでは、仕事中はすごく仲良くても、飲み会では複数人しか集まらないなんてことはよくあります。そこで私がお勧めしたいのは、コーヒーブレイクやランチを共にすること。仕事後は自分の時間を過ごしたいメンバーもランチやコーヒーブレイクなら参加してくれるでしょう。とはいえ、ランチも長すぎるものはよくありません。食事の時間に重きを置く文化出身のメンバーは、ランチに数時間かけることもあるかもしれませんが、できれば1時間以内で収めましょう。

最後に

「多様性」や「グローバル」という言葉が頻繁に使われる中、創造性を増しグローバル市場への理解を深めて利益を得るために多くの企業が多国籍・多文化的チーム形成の道を模索しています。しかしながら、これまで見てきたように文化の違いは多くの難題を伴います。効果的な文化間の連携は単一文化内での連携よりも時間がかかることがあり、より慎重なマネジメントが必要になることが多いです。

以下にリスクを回避しながら文化関連系の利点を享受する手助けとなる二つのシンプルなヒントを記して締め括りたいと思います。

  1. チームメンバー間でプロジェクトをスタートする前にお互いの文化を理解するためのワークショップを行うこと。相対的な自分の文化位置を把握することで、連携力を高めることができます。「異文化理解力」で紹介されているカルチャーマップ(8つの指標)をチーム内でシェアすると良いかもしれません。

  2. さまざまな文化で暮らした経験豊富なメンバーがいるときは、彼らに異文化間連携の大部分を任せること。多国籍チームで働くときには、文化のかけ橋的存在は大いに役立ちます。その一方で、残りのメンバーにはもっとも馴染みのある各国の方法で働いてもらうようにすると、文化間の連携によってイノベーションが起こると同時に、文化の衝突によって生じる非効率も回避することができます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?