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[映画感想]ロストケア 日本が抱える介護問題に肉薄する社会派作品

この春、国家試験に合格した。その合格発表の当日に公開されたこの作品。前々からずっと気になっていた。

主人公は訪問介護センターで働く期波宗典(松山ケンイチ)。介護家族からも慕われる献身的な職員だ。しかし、とある事件をきっかけに、彼が40人以上の老人を殺害していたことが発覚。
事件を担当することになった検事の大友(長澤まさみ)に、期波は語る。いわく、自分の行動は、寝たきりの老人やそれを支えるために生活を犠牲にする家族への「救い」だと。

認知症、介護地獄、嘱託殺人、生活保護制度、死刑制度等、死に向けた人間の生とそれを取り巻く社会環境にまで言及している。
でも結論は明示しない。観た人が各々考えろと。

認知症介護の職場で働いているが、預けたら預けっぱなしで、全く会いに来ない家族がいたり、自分の母親に持ってきたおやつを毎回''エサ''と言って渡してくる人もいる。
その人とお年寄りの間に今までの人生で一体何があったのか、詳しく知ることは出来ないが、何ともやるせない気持ちになる。

お年寄りは毎日、家に帰りたいと言ったりされるがあなたの居場所はもうないと言わんばかりの対応する家族、まだ認知症が軽い方は自分が何もかも忘れてしまうんではないかと恐怖し、早く死にたいと言う人もいる。一概にどっちが正義とか悪とか決められない。

正直、相手が他人だから、尚且つ仕事だから割り切ってできてると思っている。24時間働く訳でもないわけで。
将来仮に親の介護が必要になった時、「介護士だし、国家資格も持ってるんだから介護余裕だね。大丈夫だね。」と思われるのが怖い。


どうすれば少しでも多くの人に観てもらえるのか。
"介護"になんらかの形で関わっている人、関心のある人、観ようか迷ってる人は是非見てほしい。現時点で今年イチの予感しかない。
松山ケンイチの澄んだ瞳と柄本明の凄まじい演技、これだけでも観る価値は十分ある。

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