比良岡美紀

小説を読んだり書いたりする人。2022年からアンソロジーに参加して作品を寄稿しています…

比良岡美紀

小説を読んだり書いたりする人。2022年からアンソロジーに参加して作品を寄稿しています。2023年は新潟SF、鳩ほがらかアンソロジーに寄稿しました。zine(小冊子)製作はおやすみ中。

マガジン

  • 古賀コン応募作品

    古賀コンに出した作品です。第二回と第三回の二回分です。

  • フィクション以外の記事

    フィクションではない記事、読んだ本の感想など

  • 短編小説いろいろ

    スピンオフコンテスト企画に応募した作品を含め、短いお話を集めてみました。

  • BFCとイグBFC(BFC=ブンゲイファイトクラブ)

    2022年開催のBFC4とイグBFC3、2023年開催のBFC5とイグBFC4に応募した作品をまとめました。 2023年のBFC5についてはこちら https://note.com/p_and_w_books/n/nd16c3604ea7f ブンゲイファイトクラブについてはこちら https://note.com/p_and_w_books/n/n58e7a21f9899

  • バスジャック三部作

    一「ある事件/小田嶋悠人」 二「テロリストの肖像」 三「許されざる者たち」 この3作品をまとめたマガジンです。最初の2作は2022年のBFC4用に、3作めは2023年のBFC5用に書きました。

最近の記事

古賀コン4応募作品「コンビ解消するときに起きるかもしれないこと」

 漫才コンビを解消することになった。俗に言う方向性の違いというやつだ。方向性なんてあって無いようなもので、そう言っておけば体裁が保てるみたいな意味しかない。    ネタは僕がずっと作っていた。それを相方が適当に、超テキトーに演じて僕がツッコミを入れる。相方あってのコンビと言われ、やっこさんすっかり得意になっていたが、僕のネタがなければ何もできない。そう指摘するとぶち切れて、つかみかかってくるのだが、本気でないのは僕にだってわかる。ポーズだ。俺をディスるのは許さないというポーズ

    • 2023年振り返りと2024年への抱負

       2023年も大変お世話になりました。たくさん書くことはできませんでしたが、古賀コンには二回応募しました。BFC5と第三回かぐやSFにも応募して、阿賀北ノベルジャムのスピンオフ掌編も書いたりと、それなりに充実していたと思います。阿賀北ノベルジャムをきっかけに始まった『新潟SF』のアンソロジーにも寄稿しました。それなりに、どころかめちゃくちゃ充実してますね。  そして何と言っても金子玲介さんのメフィスト賞受賞というビッグニュースがありました! 『死んだ山田と教室』というタイト

      • おかあさん(と、偶におとうさん)

        おかあさん あなたが私を産んだなら よかったのにと遺影を見やる 洗濯物 あいつの分はたたまない おかあさんなんかじゃないからね おとうさん どうしてわかってくれないの そいつはおかあさんなんかじゃない おかあさん 血は水よりも濃いのかな 私の血 あいつと同じなのかな 産んだけど 育てない女は「おかあさん」 産まずに育てた女はなんなの? おかあさん お願いそっちに連れてって もういや生きていたくない おかあさん ねえ見て私の血は赤い あなたと同じよねそうだよね?

        • 岸壁の日曜日(第三回古賀コン応募作品)

           どうしてこうなったのか。バスルームで髪を切って、東京タワーあたりをダッフルコート着た君と歩いているはずだったのに。肩で風切って、オッケーよ、なんて言いながら。それなのに、今いるのは2時間サスペンスで見たことあるような崖である。しかも君はいない。もしかしたら最初からいなかったのかもしれないが、考えるのはつらい。とてもつらいのでやめておこう。  それでだ。問題は、目の前に立って僕をにらんでいる女性。仁王立ちである。腕組みをして、にらみつけている。僕は何もしていない。誓ってもいい

        古賀コン4応募作品「コンビ解消するときに起きるかもしれないこと」

        マガジン

        • 古賀コン応募作品
          3本
        • フィクション以外の記事
          4本
        • 短編小説いろいろ
          7本
        • BFCとイグBFC(BFC=ブンゲイファイトクラブ)
          7本
        • バスジャック三部作
          3本
        • 小説『純愛ラプソディ(仮)』
          8本

        記事

          BFC5幻の決勝戦作「許されざる者たち」

           あなたは倒れている男を発見する。拘置所に入ってすぐの、守衛所の裏手にある小さな庭だ。刑務官を呼ぼうとして、男が小田嶋悠人だと気づいたあなたは、驚きのあまり左胸に手をやる。家を出たときと同じ膨らみがあり、小田嶋を傷つけたのは自分ではないと安堵する。  あなたは音を立てないよう気をつけながら小田嶋に近づいていく。だが革靴では難しい。自分の革靴が音を立てるたびあなたは顔をしかめる。  小田嶋の腹の辺りが血に濡れていることにあなたは気づく。かなり広い範囲だ。小田嶋の周囲を、あなたは

          BFC5幻の決勝戦作「許されざる者たち」

          BFC5一次予選通過作品「悪いのは誰?」

           自転車の前カゴに紙が入っていた。「K町を忘れるな」。何のことか分からない。紙はその場で捨てた。翌日、また紙を見つけた。そもそもK町なんて知らない。迷惑な話だ。  二日後、K町がニュースになった。死後二週間経つ女性の遺体が見つかったという。事件事故の両面で捜査中だとアナウンサーは言った。被害者の写真に息をのむ。唐川ミハル。十五年前、一緒に過ごしたことがある。私は小学五年生、彼女は中学一年生だった。  離婚したばかりの母は住み込みの仕事を探していたが見つからず、派遣会社の寮に入

          BFC5一次予選通過作品「悪いのは誰?」

          イグBFC4応募作品「筋肉は裏切らない」

           筋肉は裏切らない。それは本当だ。けれど男は裏切る。これも本当。  守ってあげたくなるのが魅力だと言われていた。でもあまりに非力なので、あるとき助言された。少し筋肉つけた方がいいよ、そうじゃなきゃ共倒れになる。  それは困る。共倒れになったら一緒に出かけられないし、いろんなことを楽しめない。だから筋トレをしようと決めた。  近所のジムの扉を開け、エネルギーに満ちていることに驚いた。熱気にあてられ、思わず扉を閉めた。ジムがこんなところだとは知らなかった。  回れ右して帰ろうとし

          イグBFC4応募作品「筋肉は裏切らない」

          「アメリカの入学式」(第2回古賀コン応募作品)

           時雄がそれを言い出したのは、いつもと同じメンツの変わり映えしない飲み会の最中。正確には誰もがお開きにしたいと思っているが言い出せずにいる、そんな時だった。 「アメリカの入学式っていうテーマがあったとするじゃん」 「おう」 「どうする?」 「どうする、とは?」 「何を書く?」 「それは脚本で、ということ? あるいは別の何か」 「何でも」  何でも。そう言われるのがいちばん困るんだよ。この言葉はなぜか美優の声で再生された。何でもいいなら何か言ってよね! そう言ってエプロンを放り

          「アメリカの入学式」(第2回古賀コン応募作品)

          ずっとあなたがいてくれた第三十一話

           核心をついたつもりだった。でも楢本さんは反応しない。眉すら動かさない。ダメか、と思った次の瞬間、震える声がした。「なぜ、そう思うのですか」大丈夫、いける。 「なんとなく、としか言えません。確たる証拠はないので」「そうですか」 安堵したような声だった。ここが勝負所かも。ゆっくりと深呼吸をして言った。「如月先生はタカシが私を恨んでると言っていました。タカシに尋ねても、そんなことはないと言うばかり。でもーー」「でも?」「さっき確信したんです。タカシは私を恨んでるし、憎んでさえいる

          ずっとあなたがいてくれた第三十一話

          ずっとあなたがいてくれた第三十話

          「いや、あんたの手は借りない。自分で話す」  タカシはふらついて、すぐにうずくまってしまった。 「無理だよ、病院行こう」 彼にスマホを返すよう頼む。「ダメだ、通報はさせない」「救急車くらいいいでしょう? 事故だって言えばいいんだから」  その瞬間、もしやと思った。タカシが言いたいことって、まさか。 「ねえタカシ、あの事故……」 脂汗を浮かべながら、タカシはうなずいた。「ああ、そうだ。俺が如月をはねた。事故なんかじゃない」「どうして……」タカシはもう何も言わなかった。言えなかっ

          ずっとあなたがいてくれた第三十話

          ずっとあなたがいてくれた第二十九話

           諦めかけたとき、タカシが呻いた。「うぐっ……」そして私を突き放す。不審に思ってタカシを見ると、右肩に矢が刺さっていた。うそ、なんで……。「抜こうとしても左腕じゃ無理だろ」はっとして振り向く。「如月先生!」 タカシは矢を抜こうとしながら言った。「ボウガンは所持することも禁止されているはずだ」「そうだな。だが、誰も知らない」彼がちらっと私を見る。「君たち二人がここから出なければ、警察に捕まることもない」  その眼はとても冷たくて、タカシに抱きしめられたときとはまったく別の恐怖が

          ずっとあなたがいてくれた第二十九話

          阿賀北ノベルジャム『有限会社新潟防衛軍』スピンオフ掌編『余はいかにしてバッドウーマンとなりしか』 #いぬねこグランプリ(作品本文2256文字)

           この作品『余はいかにしてバッドウーマンとなりしか』は阿賀北ノベルジャム2022の作品『有限会社新潟防衛軍』スピンオフ企画に参加している二次創作掌編です。企画の詳細は以下のツイートをご参照ください。 *ここから本文(2256文字)*  岸本真弓は懸命に、真摯に努力してきた。新潟のため、理不尽な要求にも、顎で使われることにも耐えてきた。しかし今、その忍耐は消え去ろうとしている。彼女にもたらされた党本部からの速達がすべてを変えたのだ。 「もう限界......」  天井を見上げ

          阿賀北ノベルジャム『有限会社新潟防衛軍』スピンオフ掌編『余はいかにしてバッドウーマンとなりしか』 #いぬねこグランプリ(作品本文2256文字)

          落選作を朗読していただきました

          BFC4に応募して落選した「ある事件/小田嶋悠人」を朗読していただきました。 Twitterに上がっているもので、こちらから聴いていただけます。作品へのリンクに続けて朗読音声がつながっています。 もしも2回戦に行ったら出すつもりだった「テロリストの肖像」も、続けて朗読していただいてます。 そして、イグBFC3に出した「ムダ毛の話」も朗読していただきました。こちらも作品リンクに続けて、ツリーで朗読音声がつながっています。 朗読劇みたいで私はすごく楽しめたので、よかったらぜ

          落選作を朗読していただきました

          テロリストの肖像(BFC4二回戦に進んだら出す予定だった作品です)

          ユーリの夢を見た。いつもと同じ笑顔だった。アメリカで、スクールバスの運転手をしていたユーリ。バスジャック事件を起こして射殺されたユーリ。子供の僕は下を向いたまま、ずっと黙っている。じゃあなユート、元気で。ーーユーリ!  大きく伸びをして身体を起こすと、留置管理課の「担当さん」と目があった。 「弁護士の接見だ」 「えっ、この前来たばかりなのに。何かあったのかな」 知るか、と顎で接見室を指し示す。おとなしく移動した。 「おはようございます」 「おはよう、急に悪かったね」 「いえ」

          テロリストの肖像(BFC4二回戦に進んだら出す予定だった作品です)

          BFC4落選作 ある事件/小田嶋悠人

          (BFC4に応募したものの落選した作品です) 居酒屋は混雑していた。十年ぶりの同窓会、そう聞いていたのに、大幅に遅刻してしまった。焦りながら森島を探す。 「おう倉橋、こっちこっち」 ホッとして森島のところへ行くと、いくつもの視線が注がれる。その鋭さにたじろいだ。 「ごめん、急にシフト入ることになって、二時間だけのはずが、なかなか代わりの人が来てくれなくて」 何を言い訳しているのか。誰も咎めてなどいないのに。 「気にすんなって」 森島が背中を叩く。力が抜け、思わず笑顔になった

          BFC4落選作 ある事件/小田嶋悠人

          ムダ毛の話

          ✳この作品はイグBFC3への応募作品です✳ 「まどかを返してください、お願いします。まどかをーー」 「以上、三日前に家を出たまま行方がわからなくなっている藤澤まどかさん宅前からお送りしました」 ちょ、消すなよ見てんだから! 自分のスマホで見なよ、ウザくてやだ そういうこと言うか普通? マジで憔悴してんだろ そんなことよりさ、ムダ毛剃るって言ってなかった? そんなことより、って……おーっマジか無料体験!  気に入った? あ? ああ、まあな、かなり魅力的だよ ふーん、じゃあ剃

          ムダ毛の話