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小説『純愛ラプソディ(仮)』

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竹内まりやさんの『純愛ラプソディ』から着想した小説を書き足していくマガジンです。 この曲で小説を、とリクエストをいただいて書きはじめたもので、4/19、ひと区切りついたので終わり…
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純愛ラプソディ(仮)について

純愛ラプソディ(仮)について

2020年4月19日、ひとまず終わりにしました。このお話は、マガジンの説明にも書きましたが、竹内まりやさんの曲『純愛ラプソディ』から着想したもので、リクエストによって書きはじめたものです。いただいたリクエストは、純愛ラプソディの曲から着想して、猫を登場させてほしいというもの。曲のイメージから言えば、最初のページだけでも十分だったかもしれません。

それを、『In her shoe』と続編の『HOM

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純愛ラプソディ(仮) 七

純愛ラプソディ(仮) 七

「ちょっといいかしら」はい、とうなずいて、彩花と二人席を立つ。「今、室長から話があったのだけど、毎年作っている会社案内と、就職説明会で配布する資料、その企画段階からうちが関わることになったの」「本当ですか!」彩花が喜びの声を上げる。「本当よ、これまでは最終段階でしか見られなくて、しかもただそういう意見があった、でとどめられていたのが、やっと今年から参画できるようになったの」「やったあ、嬉しい!」「

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純愛ラプソディ(仮) 六

純愛ラプソディ(仮) 六

翌朝はいつもより30分早く出社して、課長を待つつもりだった。なのに課長が出社していたので驚いて、おはようございますと言うのが精いっぱいだった。「おはよう森崎さん。体調はよくなった?」「はい、おかげ様でよくなりました。ありがとうございます」

あわてて返したけど、本当はもっと違う、ご迷惑をかけてすみませんとか、これからいっそう仕事に励みますとか、そんなことを言うべきだったのかもしれない。少なくともオ

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純愛ラプソディ(仮) 五

純愛ラプソディ(仮) 五

お湯を沸かしながら、少しホッとしていた。私への追及も緩んだし、課長が私たちのことを知っているかも考えなくてすむ。いつか直面するとしても、今は勘弁してほしかった。

「コーヒーでいいかな、インスタントだけど」返事がない。「ねえ彩花、コーヒーでーー」振り向くと彩花の姿がない。あわててリビングへ戻ったが、彩花はどこにもいなかった。「ちょっと何、どういうこと……」

やかんのお湯が沸く。火を止め、インスタ

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純愛ラプソディ(仮) 四

純愛ラプソディ(仮) 四

「そういえばさ」彩花が急に振り向いた。「だいぶ顔色よくなったね」「私?」「ほかに誰がいるのよ」まあ、たしかに。「さっきは真っ青な顔してたもの。まるでこの世の終わりみたいに」そんなにひどかったんだ…。「本当によかった。安心したわ」「ありがとう」

彩花は前を向いたまま歩き続けている。でも何か、言いたいことを言おうかどうしようか、悩んでいるようにも見えた。「何があったの?」だから突如発せられたこの質問

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純愛ラプソディ(仮) 三

純愛ラプソディ(仮) 三

「いいわけない……。いいわけないじゃない!」目を真っ赤にして彩花は言った。「常務のお嬢さんは同期入社なの。たった二人の総合職。部署は違っても、いつも助けあってた。私がコンプライアンス室に配属になったと言ったら、社長になったみたいに喜んでくれた。『これから会社を変えるのはあなたたちなのよ』って。自分もできることは何でもするって、言ってくれた。それなのに……」彩花がくちびるを噛む。その音が聞こえるよう

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純愛ラプソディ(仮) 二

純愛ラプソディ(仮) 二

「はる香、今日は遅かったね」翌朝、どんなに厚く塗ってもクマを隠せず、始業時刻ぎりぎりに出社した。彩花に言われ、あ、うん、とうなずく。電車がね、とつぶやき、ちょっと俯いた。目の下の濃いクマ、見られたくない。でも彩花の視線を感じる。「元気ないみたいだけど、なんかあった?」見破られた? まさか。彩花は何も知らないはず。「大丈夫。なんでもない」顔を上げ、平気だとアピールするつもりだった。でも彩花の顔を見た

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純愛ラプソディ(仮) 一

純愛ラプソディ(仮) 一

全身びしょぬれでアパートの外階段を駆け上がる。ヒールは片方だけ。どこで脱げたかわからない。震えながら、鍵を取り出す。ドアノブに挿そうとして失敗。鍵を持ったまま、かじかむ手にハアーっと息をかける。

もう一度鍵を挿し、ドアノブを回転させる。開けた瞬間、土砂降りの雨はさらに勢いを増し、窓に打ちつける音がした。外から打ちつけているのに、ドアを開けたとたん、部屋の中に雨が降りそそいでいるようだった。

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