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平尾台から屋久島という憧れの地への旅

先月末、屋久島へ行っていました。

ガイドを始めた頃からずっと行ってみたかった場所の一つ。
(※ガイドとして少し自信がついてきた今年は、屋久島へのツアーを企画してみようと思います!比較的雨が少ないであろう7月の終わりか8月の終わりくらいをまでのどこかで予定で、近日中にご案内します。)
初日はフェリーで屋久島へ。
興奮して、前日はあまり眠れず、行きのフェリーでも少しづつ変わっていく風景をずっと見ながら船内での時間を過ごした。
フェリーの発着場の目の前には桜島、1時間ほど進むと開聞岳、湾を離れると硫黄島、どれも見入ってしまった。

フェリー乗り場の目の前には桜島

1日目はピーカンでどれもはっきりと見えた。そして4時間ほどかけて到着。
屋久島が見えた時はうるっときてしまった…。
私たちのガイドの師匠である方に久しぶりに会え、その方に案内してもらえる事をとても楽しみにしていたからなのもあるが、やっと屋久島へ行ける程になった事とそれまでの色んな出来事が蘇ってきたからだと思う。
支えてくださった沢山の方々のおかげです。

薩摩富士「開聞岳」
宮之浦港の目の前には屋久島の山々

フェリーを降りた目に飛び込んできたのは、海抜0mから一気に2000mほどに聳え立った山々、まさに花崗岩が作り出した風景そのものだった。
昼食を食べ、早速、もののけ姫のモデルとなった白谷雲水峡を案内してもらう。
※昼食はフェリー乗り場近くのお土産屋で飛魚ラーメン!?を食べる。

もののけ姫のモデルとなった「白谷雲水峡」ここまではバスが通っている。

道中、一気に標高が上がるので、その都度、植生も変わっていく。これが屋久島の一つの特徴。白谷雲水峡は比較的歩きやすく、のんびりと歩くことが出来る場所だった。

もののけ姫のモデルとなった白谷雲水峡

途中から、屋久杉が現れ始め、ベタだがその大きさに驚いたが、それでも、屋久杉と呼ばれるものではないらしい。
花崗岩帯で土質も豊かではないのに、これだけの森ができているのにはきちんと理由があるが、説明しだすと長くなるので実際に屋久島を案内するときにとっておこう。
昼からだったので3時間ほどかけて森を散策。
その夜はガイドしてくださった方のお宅に泊めてもらい、これまでの事など色んな話をすることができた。

花崗岩の山には綺麗な小川がいくつも流れている

私たちはどうしてもイメージで原生林という言葉を使いがちだが、森の一部分しか原生林と呼ばれる場所は存在しないのだそう。歴史を紐解くと元々は杉を育て、それを材木として切り出し産業を成り立たせていた。今でこそ、もののけ姫のイメージになる程だが、白谷雲水峡もこれに該当するそうだ。特に激しかったのは昭和30年代頃だそうで、その後、切れる場所がなくなったタイミングでこの自然が認められ世界遺産に登録された。この流れは、平尾台ととてもよく似ている。
平尾台もその内、採掘できる場所がなくなってしまう。今後直面する問題の行き着く先を経験できたような気がする。

もう一つ驚いたのはガイドの多さ。
屋久島には登録ガイド制度というのがあって100名を超えるガイドが活動していて、登録されていない方を含めると200名くらい?とにかく、ガイドが多い。
トレッキングや川遊び、ダイビングなどを様々なアクテビティを通して活躍している。それが、きちんと職業として認められていて、誇りに思っているのだそう。それが証拠に、移住しガイドをする若い方もいれば、屋久島住民がその職についているケースも珍しくない。道中、数名のガイドとすれ違ったが、みんな楽しそうに屋久島を案内していたのがとても印象的で、さらに、すれ違う人にも声をかけ、周りを注意しながらの案内は見ていて気持ち良く、とても刺激を受けた。
屋久島ガイドのレベルの高さを肌で体験できた事はとても良かったと同時に、私たちのガイドも十分勝負できるレベルだとも感じた(自分で自分の事を褒めてもしょうがないが…)
屋久島の知識は比べられないが、自然に対するベースの知識やプロとしての責任や覚悟、みたいのものを感じた。これがプロとボランティアガイドとの違いなのだろう。見た目などを派手にして惹きつけるのではなく、ガイドというサービスで利用者を惹きつけている。

私たちのやってきた事は間違ってなかったと思った瞬間だった。

淀川(よどごう)登山口

2日目は淀川登山口から出発。
前日とは打って違い、雨と霧という屋久島の洗礼を受けた…が、これはこれで森の雰囲気とあって良いし、雨を楽しむ余裕があって良かった。
この水の循環があるからこそ、屋久島なのだ。

高層湿原「花ノ江河」この辺りから植生がガラッと変わる

休憩を入れつつ2時間ほどかけて高層湿原の「花ノ江河」へ到着。
1600m程の高所に湿原があるのも中々ない。高度が上がるにつれ、植生が目まぐるしく変わり、面白い。この辺りに来ると、晴れたり霧がかかったり、景色を楽しいながら歩く事ができたが、景色が見れたのも湿原を抜けた先まで…その後は、みぞれと雨。
そんなこんなで宮之浦岳に登頂…ガスガスで全く何も見えない。

九州最高峰「宮之浦岳」

ここからの屋久島の風景を楽しみたかったが、それはまたのお楽しみ。
手短に食事をしていたら、途中、抜いたパーティーの方々が追いついてきて、軽く談笑。明日は、荒川から縄文杉らしく、「また明日会いますね」と言って別れた。

さぁ、ここからは完全に一人。

新高塚小屋

少し頑張って縄文杉近くの高塚小屋まで行く予定。しばらく、背の低い笹竹を抜けて歩くが、これが濡れていて、雨に降られるよりもびしょびしょになる…。
途中、新高塚小屋という大きな避難小屋をパスし、少し無理して高塚小屋まで足を延ばし、なんとか到着。小屋の近くでは若い雄のヤクシカに出会い、しばらく木道に座って様子を見ていた。

高塚小屋 3階建の避難小屋

彼らは、この環境で生きていて、多分人間にも慣れているのだろう。こちらが近づいても、全く動じる事なく、何か食べ物を探している。この鹿と自分しかいない空間がとても不思議で、伝わらないのに話しかけていた。やはり、南に行くほど生き物は小さくなり、キュウシュウジカよりもだいぶ小さい。
邪魔しすぎるのも悪いので、その場を離れる。
高塚小屋は3階建ての小屋で、各階はとても狭く、それぞれ5人くらいが横になれれば良い方。
お茶を入れ、休憩していると、縄文杉近くの木道を整備している作業員の方々が入ってきた。ここで、寝泊まりしながら、作業をしているそう。今日は、小屋に泊まる人間は誰もいないだろうと思っていたので、一気に賑やかになった。
しばらくすると辺りは完全に霧の中、元々暗かったのが、より一層暗い森となるが、なんせ洞窟探検で真の暗闇になれているので、これくらいは明るいほう。
18時30分頃だったか、食事も終わり、疲れていたのでシュラフに潜り込んで本を読みながらそのまま寝ようと思ったその瞬間、扉がガッと開く。
こんな時間にツアーの参加者とガイド(辺りは真っ暗、ちょっと大丈夫かこのガイド?と一瞬思ったが、そのまま受け入れる)
食事の準備を始めだしたので、こちらが寝ると、気を使わせてしまうかもしれないと思い、静かに本を読みながら終わるのを待っていた。
これが中々終わらず…おかげでかなり読み進んだ。
そして深夜、私以外の男性全員が小屋の外まで壮大に聞こえるイビキをかき始める。カエルの合唱を聞きながら田んぼのど真ん中で寝ているのかと錯覚するほど…ツアー参加者の若い女性は眠れたのだろうかと心配になったが他人事ではなかった。
おかげでほとんど寝れず、耳栓を忘れた事を後悔。
一番ひどかったのは私の横の若いガイド…叫んでるのかと思うほどのイビキに一瞬マジで蹴ってやろうかと思ったが、ガイドしつつ、参加者の食事なども全て運び、準備もしていたのでとても疲れていたのだろう。同じガイドとして痛いほど気持ちがわかるので、蹴ってやりたい感情をグッと抑え、良いネタができたと思い、とりあえず目を閉じてそのまま横になる。

豊富な水が湿潤な環境を作り、多くの苔を生み出す

翌朝、雨は止んだが、霧は晴れない。
6時前に起きて?(ほとんど寝ていないが)、軽く食事をとり、早々に小屋を出る。小屋から縄文杉までは5分もかからない。

霧がかった縄文杉はとても神秘的
木道から見ることができる

縄文杉はくっきりとは見えなかったが、とても神秘的で、思わず手を合わせて泣いた。数千年も生き続けている生き物としての生命力の高さに気押されながらも、しばらくじっと見ていた。感動すると同時に、人間の一生の儚さと生き物としての圧倒的な敗北感を感じた。ここからは木道、縄文杉を目指す方々とすれ違う。

ウィルソン株 元々、この杉の前は神社があったそうで、今でも、社が残っている。

途中、お決まりのウィルソン株にも立ち寄るが、人が多く、中を見て写真を撮り、直ぐにその場を後にする。トロッコ道下で降りてくると、昨日のグループに出会い、お互いの無事を祈り、別れる。

かつて屋久杉を伐採していた名残り

この辺りから、沢の近くを歩き出す。屋久島は森に目が行きがちだが花崗岩帯なので谷ができ、そこには沢が作られ、膨大な量の水が絶えず流れている。トロッコ道から白谷雲水峡に入り、13時くらいに登山口へ帰り着く。

屋久島の自然もとても素晴らしかったのだが、だからと言って他の場所が優れていないという事ではない。私たちはどうしても目に見てわかりやすいものや何かしらの数値で表されているもので優劣を決めたり、興味がいきがち。世界遺産になった屋久島というネームバリューや、縄文杉という存在に目がいってしまうのはしょうがないが、これはこの自然が作り出されたプロセスの一部でしかなくて、この歴史のストーリーをきちんと説明する事ができる人たちがいるからこそ、この魅力や価値が理解されるようになったのではないかと思う。

どんな場所でも同じような価値があり、そこにしかない歴史がある。どことも比較せず、同じように自然と向き合ってほしい。

久しぶりに3日間ほど山の中にいて合計30kmくらいは歩いただろうか。いつもは平尾台を離れると直ぐに帰りたくなるのだが、不思議とそんな気持ちは湧いてこなかった。もっといたい、そして帰りたくないと思うくらい屋久島は自分にあっていた(ゆくゆくは2拠点での活動ができれば最高)
今回は、山がメインで町の雰囲気などは見る事が出来なかったので、次に行く時の楽しみができた。
急遽、天候の関係で1日早く帰らなければいけなくなったが、屋久島での数日間は最高だったし、改めて、平尾台の素晴らしさを見直すきっかけにもなったのは大きな収穫だ。
出産前の体で送り出してくれた妻には感謝しかない。

★1日目 
白谷雲水峡
★2日目〜3日目
淀川登山口〜花ノ江河〜宮之浦岳〜高塚小屋※無人小屋泊〜縄文杉〜トロッコ道〜太鼓岩〜白谷雲水峡を縦走 約24km

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