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50代以降の人生設計。役職定年・定年後再雇用、人生100年時代について考える。

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週刊東洋経済のタイトルに興味を惹かれて、さっそく購入して読んでみた。

『地獄』だの『失敗しない』だの、煽り感に苦笑しつつも、現在、企業内キャリアコンサルタントとしてアラフィフ社員のコンサルティングもちょこちょこ担当し、日々実践・勉強の身でもある。読んでおいて損はないかと。

注目したのは、再雇用者の賃金格差についての裁判を特集した記事だ。
名古屋自動車学校の元教官が、再雇用後も同じ業務内容・責任であるにも関わらず、基本給がほぼ半額となったことについて、同一労働同一賃金の観点から不合理だとして自動車学校を提訴した裁判だ。名古屋地裁・高等裁判所が主張を認めこれを違法とした判決を、2018年7月、最高裁が『基本給の性質や目的を踏まえて不合理かどうかを判断すべき』とし破棄・差し戻しされたというものだ。
この名古屋自動車学校の判決(2023年7月)以外には、2018年以降の5件の待遇格差についての裁判・最高裁の判決が掲載されている。

労働基準法では正社員と非正規社員の待遇格差を禁じているし、最近では、派遣会社でも非常に盛んに叫ばれている同一労働同一賃金の視点からも『え、そんなのあり??』というのが率直な感想だ。
この結果に、企業の経営者/人事部門責任者たちは胸をなでおろしただろうか。それとも、遠くない将来自分の身にも起こる不合理なことと、複雑な思いだっただろうか・・・。

定年後の再雇用制度は、シニアの雇用を保証し、長く働き続ける権利を確保した一方で、企業側にとって『安く使える便利な駒』としての手段としての側面が色濃くなっているようだ。
あなたの会社でも、定年しているはずが、以前とほとんど変わらない内容・職種で働き続けている先輩方がいないだろうか? 私の現職場でも、本人も上司も、再雇用であることを忘れているのでは?というような働き方をしているシニア社員のが何人かいる。(まあ、元々ブラックな働き方で有名な企業・業界ではあるのだが…)

60~65歳という年齢は体力・気力的には陰りの出始める頃ではあるが、熟練のスキル・経験・知識はまだまだ健在であり、若い人々にはそう簡単に負けない人も多いだろう。企業内の新陳代謝、後輩へ活躍の場を譲るために、役職定年の制度は必要だとは、私も思う。ただ、前述の同一労働統一賃金の観点から、同じような仕事を続けているにも関わらず、定年した途端に給与を半額にすることに対しては、やはり、疑問を感じている。

働き手不足が深刻だという事実は、私のような普通の人間でも、日々、仕事を通じて肌で感じている。以前勤務していた人材会社ではもちろんのこと、大企業の人事関連部門に勤務する現在も、どこでも皆が口々に『人が足りない』と言う。良い人材を得るために、新卒はもちろん、中途採用活動にも必死だ。それもそのはず、人口ピラミッドの示すとおり。今や優秀な20代の求職者を見つけるのは至難の業、30代後半〜40歳でも若手と呼ばれ、労働人口の中心は40代・50代。働き手がこの日本からどんどんいなくなることは、以前から分かり切ったことだったはず。

今後、60歳~65歳、さらに70歳までのシニア層に対して、日本という国が何をどうして欲しいと考えているのか。この最高裁判決を見ると、安い国日本、老人の労働力を安く使い倒す気満々のこの国の未来に、暗澹とした気持ちになる。

一方で、新しい時代の幕開け、働き続けたい60代にとっては、チャンス到来だとも考えている。きっとこれから、50代以上の転職もより一般的なこととして定着していくだろうと、明るい兆しも感じている。(実際の案件でも、50代でも気にしない職場が増えてきた実感)
もちろん、健康であること、若い社員と上手くやっていける協調性・柔軟性があることが前提にはなるが、経験豊富でスキルとモチベーションの高い50代を活用したい企業は、今後どんどん増えていくはずだ。悪いことばかりではない。


そのためには、長くなった勤労期間と自身の働き方について、企業内のサラリーマンであれ、フリーランスや独立であれ、ライフキャリアを戦略的に考えていくことが必要だ。人生100年時代、リスキリングの必要性が叫ばれる今日において、既にキャリア形成の主体は会社組織ではなく個人、すなわち自分自身である。自分は何をしたいのか、そして何ができるのか。では、それはどこでどういう形で仕事として求められ実現できるのか? 自らを掘り下げ、学び、バージョンアップしながら、環境の変化に適応できるように備える。自分にとって望ましいライフ・キャリアを作り上げる。『プロティアン・キャリア』の考え方は、一年後の未来さえ予測不能な時代においては、必須の時代となった。人生後半戦、様々な突発的ライフイベントや問題が起こりうる50代以降の働く人々にこそ、必要な考え方であろう。何があっても動じない、翻弄されない自分であるために。

50歳で20年ぶりに企業へ再就職、大きくキャリアチェンジした私自身の経験からも、始めるのは何歳からでも、今からでも決して遅くはないと思う。これについては、またの機会に。