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短編小説

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短編小説だけまとめました。お時間のある際にご覧頂けたら嬉しいです。
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夜更かし【小説】

夜更かし【小説】

「東海道中、、、膝、栗毛、、、、、」
呟きながら寝返りを打つ恋人を見て表情がゆるむ。

仰向けになった頭を撫ぜた後で読書に戻ろうとしたが、ユニークな寝言を思い出すとわらけてしまい目が滑る。

どうにも集中できそうにない。
一服しようと、インスタントの紅茶を淹れることにした。

恋人を跨いでベッドを降り、キッチンに向かう。

一部コンクリートあらわしの白い部屋の奥には、拘りのシンプルな白の冷蔵庫があ

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キズナNFT【小説】

キズナNFT【小説】

本日は「キズナNFT」ローンチ4周年記念パーティーにご出席頂き、誠にありがとうございます。
CEOを務めております木村太一です。

いま皆さまの目の前のテーブルにございます芸術品のようなフレンチの数々は、世界有数の料理人である坂田充博さんによるものです。
普段はオーナーシェフとしてパリで忙しい日々を送る彼を、この晴れがましい日に、キズナNFT東京本社にお呼びできたのは、私と彼のキズナデプスが非常に

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コワーキング商店街【小説】

コワーキング商店街【小説】

漂う金木犀の香り。風に揺れて枝葉が擦れる音。ガラスの天蓋を見上げるとひつじ雲がゆっくりと流れていた。雲間から漏れる日差しがオフィスワークで疲れた肩をやさしく温める。

愛知県にある某商店街。店に挟まれた歩行者天国には緑が生い茂り、まるで植物園かのようである。その植物の間を縫うようにして、かたちの変わったストリートファニチャーが程よい距離を保ちながら並んでいる。

ガラスの塊でできたソファの上ではO

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ドライバーが消えた日【小説】

ドライバーが消えた日【小説】

今日は素晴らしい日だ。世界からドライバーが消える。免許証を持っていないことでマウントを取られることもないし、去年免許を返納した田舎に住む祖父の移動の足を心配する必要もなくなる。

20XX年、自動運転技術が世界的自動車メーカーによって確立。その翌年には日本でも法整備が進められ、自動運転車の公道での走行が是認された。今日は新法施行1日目。記念すべき日。

自動運転になって大きく変わったことのひとつ。

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