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【後編】エンドレス24時間パックが生んだマルゴの悲劇


漫画喫茶に24時間パックという今思うとアホみたいな料金プランがあったせいで、ブースを家化され、住み着かれてしまった私のバイト先。


どうやって退店してもらおうかと考えあぐねていたところ、転機は突然訪れた。


「社員さん!事務所にいらっしゃいますか!? マルゴ、今カウンターにいるんですが!精算のお金が足りなくてお金をおろして戻って来たいって言ってるんですけど、どうしましょう!」


今日も平和に臭かったフロアに、突如緊張が走る。
おそらくフロア中に散らばっていたスタッフ一同が、一斉にインカムに耳をそばだたせた。

その時の社員さんの判断はとても早かった。
「一時外出と同じように身分証預かってお金下ろしに行かせて下さい。でも、未精算での処理になるので再入店も予約もできないって伝えて荷物を持って一度通常通り退店させて!
それで退店処理したら、すぐ調整中のマークをつけましょう!戻って来て入ろうとしたらカウンターで止めて下さい!一応他のペアのブースも、全部利用中にして!」


その時、私の頭の中には踊る大捜査線のテーマが流れていた。
レインボーブリッジを封鎖せよ!ならぬ、マルゴのペアブースを封鎖せよ!である。

「スタッフのみなさん、聞こえますか?お客様が退店したら、急いでブースを開けます。多分残置物とか匂いとかすごいだろうから、各フロア1人だけ残って、残り全員で対応しましょう。
カウンターの方、彼女たちが戻ってきたら僕が応対しますんで。入口で待たせて下さい。絶対店内に入れないで。」


「はい!」
「わかりました!」
「私ゴミ袋とファブリーズ持ってきます!」
「カウンターから調整中の貼り紙も持ってきて!」

指示を聞いたスタッフの動きは皆まさに、敏腕刑事のようだった。
このチャンスを逃してはいけない。誰もがそう思った。
あの匂いから、あの負(腐?)のオーラをまとった空間から、マルゴを救い出さなければならない。
なによりもマルゴのせいで、もげかけている他のお客さんや私達の鼻を救わなければならない。

カウンターのスタッフから再び、インカムが入る。

「退店しました!マルゴ!今キャリーケース持って店出ます!」

もはや、部屋なのか彼女たちなのか、興奮しすぎて一体何がマルゴなのかわからない。


私は一緒に階上を担当していた女の子のスタッフが「私くさいのやだからここにいていいですか〜?」と聞くので「全然いいよ!私、下行ってくるね!」と言って駆け出した。
別に優しさなどではない。ただの野次馬である。
臭いのはわかっているが、あの閉ざされたマルゴが、マルゴの中がどうなっているのか、ちょっと...見てみたい...!

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