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理科室まがった #毎週ショートショートnote

「これでよし」

少年の膝に絆創膏を貼り終えると同時に、保健室の扉が開いた。
入口には1人の少女。

「先生ありがとー!」

「こら、走らない!」

僕の声も聞かず少女に見向きもせず、少年は飛び出して行った。

「まったく...。さて、君は?」

返事はない。

「どうしてここに?」

何やらぱくぱくと口を動かしているが、その声は聞こえない。

「君...理科室、まがった?」

少女はこくんと頷いた。

うちの学校の理科室は2階の一番奥にあり、その先に廊下はない。
つまり理科室をまがることは物理的にできない。
もっと言うと保健室は1階なのでどう考えても理科室をまがってここにたどり着くことはありえないのだが、僕は時々、そう言ってここに来る生徒に出くわす。

「そうか、よく来たね」

僕は少女に歩み寄り、同じ目線まで腰を落としてから窓の向こうを指差した。

「みんな、ここを通ってあっちに行くようだよ」

不安げだった顔がほころび、少女は勢いよく窓から飛び出して行った。

「こら、走…ってはないか」

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