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【エッセイ】始まらなかった初恋とその続き

私は自分が同性を
好きであるということを自覚したのは
おそらく中学生の時だったと思う。

友人とちょっとした
じゃれあいとか触れ合いをした時に

何だか恥ずかしいような
なんとも言えない
感情になっていたのを思い出す。

「顔が赤くなってる!」

と誰だったかに指摘されて
とても恥ずかしい思いをした。

明確に恋をしたと思えるのは
高校の同級生に対してだ。

彼は同じテニス部に所属していた。

同じクラスになったことはないけれど

なんとなく仲良くなって。

家も割と近かったので
いつからか毎日一緒に帰るようになっていた。

相手よりも先に授業が終わった時には
どちらかがそれぞれの教室の前で
授業が終わるのを待っていた。

好きと認識したのが
いつからだったかは分からない。

しかしある時
彼が女の子と二人で帰るのを見て
とても悲しくて苦しくなったのを覚えている。

別に付き合っていた
とかではないと思うけれど。

彼はいつも私が話すことを
面白いと言って聞いてくれた。

私はその当時から本当に友達が少なくて
休みの日に遊びに行くような同級生は
一人も居なかった。

でも彼だけは違った。

決して頻繁にというわけではないけれど

カラオケに行ったり
修学旅行用の服を一緒に買いに行ったりと
何度か遊びに誘ってくれた。

ある日、私の授業が終わって
いつものように彼を探したら
どこにも見当たらない。

どうやら終わるのが遅かったので
先に帰ってしまったらしい。

嫌だ。

会いたい。

私は全速力で自転車を漕ぎ始めた。

ひたすら立ち漕ぎ。

休憩なし。

しかし行けども行けども
彼の姿は見当たらない。

もう追いつけないか、、

諦めかけたけど
彼の家のすぐ近くまで来て
ようやく彼の背中を見つけた。

その後どんな話をしたのか
全く覚えていない。

たぶん驚かれただろうと思う。

何となくオレンジ色の夕焼けが
背景に思い浮かぶけれど綺麗な記憶に
改ざんしただけかもしれない。

オチも何もないけれど
私の初恋はこんな感じ。

彼とどうなったかというと
どうにもなっていない。

当時の私は本当に
コミュ障で人が怖くて
自分から他人に連絡を
することなんてまずなかった。

だから高校を卒業して以降
彼とはメールも電話も一切していない。

連絡を取りたいとも
会いたいとも
話したいとも

なんとも思っていなかったと思う。

それくらい
人と関わることが苦手だった。

大人になって

やっと自分を少し認められて

ようやく人のことが好きになって

時々
「彼はどうしているだろう?」
と思うことがある。

連絡をしてみようかと
思ったこともあるけれど
マルチの勧誘と思われても困るのでやめた。

30歳になるタイミングで行われた
高校の同窓会にも彼の姿は無かった。

たぶん、今後も会うことはないだろう。

私は一人で勝手に恋をして
誰にも知られずに終わらせたのだ。

もしかしたら始まっても
終わってもいなかったかもしれないけれど。



*



大人になって初めて私はちゃんと恋をした。

ちゃんと好きだと伝えられた。

始まりもしなかった初恋は

ようやく動き始めて

あっという間に終わってしまった。


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