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日々のことを綴ります。 映画、本、酒、旅行、DIYなどなど…

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本屋は文化の公園なんですね

京都にある本屋「ホホホ座」を運営する山下賢二さんと松本伸哉さんによる本「ホホホ座の反省文」(ミシマ社発行)を読んだ。 山下さんは以前、京都で「ガケ書房」を運営していて、「ガケ書房の頃」という本を夏葉社という出版社から出している。私はたまたまその本を読んでいて、今年の正月に実家の京都に帰省した際にはホホホ座の浄土寺店も見てきた。 今回「ホホホ座の反省文」を読んでみて、当たり前だけど、二人とも、この時代に本屋をやっていく理由や難しさ、そして本屋というものの存在理由について、深

    • 冷笑が強い時代だからこそ

      お笑いコンビ「オードリー」の若林正恭さんが書いたエッセイ集「ナナメの夕暮れ」を読んだ。ずいぶん以前に図書館で予約していて、長く待たされてからようやく借りることができた。でも、予約した時から時間が経ちすぎてなぜこの本を予約していたのかは、もはや思い出せない。まあよくあること。ともあれ、読んでみて、とても面白かった。最初は軽めの文章でさくさく読んでいたのだけど、徐々に深く納得させられる一説に出合い、「ああ、この人の書くもの面白いなあ」と素直に楽しめた。 本の中で若林さんは、趣味

      • 自分の居場所を生み育てていくこと

        noteを更新するのはものすごく久しぶりだけど、どうしても書きたくなったので、今回長らく放置状態だった自分のページをログインしてみた。 書きたくなった理由は、とある本に出合ったのがきっかけ。それは藤井聡子さんが書いたエッセイ「どこにでもあるどこかになる前に。」という本。副題は「~富山見聞逡巡記~」となっている。 藤井さんが雑誌編集者を辞めて、東京から故郷の富山に戻ってきて感じたことや日々の葛藤、そこで見つけた新しい出会い、町の魅力なんかが綴られている。読んでいて要所要所で

        • 「まとも」という概念を疑ってみる

          「まともがゆれる」という本がべらぼうに面白かった。 著者の木ノ戸昌幸氏は、京都の障害福祉NPO法人「スウィング」を運営している。本の中では「スウィング」を舞台にして様々な人のエピソードが紹介される。 読んでいると、運営する人も障がいを持つ人もそれぞれがユニークで、何だかうれしくなってくる。 障がい者とは果たして誰なのか、健常者との違いは何なのか。金儲けができるかできないかで、社会が定める「経済合理性」に沿えるか沿えないかで、健常者とそうでない人を分けているのではないか。

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          2本

        記事

          「ひとり雑誌の作り方」に行ってきた

          何かモノづくりというか、表現のようなものがしたいという欲求が高まっていて、自分に向いているモノとは何だろうと思っていた時に、いくつか浮かんだ中の1つに「ZINE」があった。 好きなテーマでインディペンデントな雑誌を作る。表紙イラストはあの人に頼んで、あいつとあいつに声をかけて文章を書いてもらおう、などと妄想が広がる。でも、冷静になってみて、本当にできるのかしらと不安になってみたり。 そんな時に知ったのがタバブックスという都内の小さな出版社がやっているイベント。その名も「ひ

          「ひとり雑誌の作り方」に行ってきた

          横山秀夫著「ノースライト」

          大好きな小説家の絲山秋子さんが絶賛してたので「64」を読んでみてすっかりファンになった横山秀夫さんの最新の小説。 主人公は一級建築士。バブルの頃の華やかさとは一転、今では小さな案件をこつこつとこなしている。そんな時に手がけた渾身の建築。それを依頼した家族は、あれほどまでに完成を喜んでいたのに、お金を支払ったものの引っ越しもせずに姿をくらませた──。 一家蒸発というミステリーを物語の「縦軸」にしつつ、主人公の建築士と元妻、あるいは建築事務所の所長で、学生時代の友達、かつての

          横山秀夫著「ノースライト」

          動画新時代の幕開けに君は何をすべきか?

          最近ではテレビにも露出し、有名人となりつつある明石ガクトさんが書いた本「動画2.0」を読みました。 まず著者の挑発的で軽みのある語り口がいいです。 映画からテレビ、ネットと動画メデイアが経てきた変遷をたどりながら、新しい動画の時代の到来を高らかに宣言する。 多少、“尖った”表現もそれほど気にならず、むしろ若々しさと受けとめられるのも著者の魅力なのかもしれません。本の中で少し触れられているようにご本人も 挫折を経験し、つまづきながらも、たくましく事業を続け、現在のポジショ

          動画新時代の幕開けに君は何をすべきか?

          「へろへろ」になるまで人に沿う

          福岡に介護が必要なお年寄りたちを支援する「宅老所よりあい」という場があります。そこを運営する人々の奮闘の日々を記した書籍「へろへろ」がやばかった。 読んでみるととにかく面白くて止まらない。「よりあい」を運営する面々のキャラクターが濃すぎて魅力的なのですが、それを描く著者の描写力が素晴らしいです。時にどぎついユーモアを交えたかと思うと、ものすごく的を射た社会批評をさらっと入れてみたり。 「よりあい」は下村恵美子さんという人が一人のおばあさんの介護をできる場を作るために始まり

          「へろへろ」になるまで人に沿う

          パリの街の中年男と若い女

           2018年11月26日。イタリア人映画監督のベルナルド・ベルトリッチが亡くなりました。77歳だったそうです。  彼の死を悼んだ追悼上映があったので観てきました。作品は1972年製作の「ラストタンゴ・イン・パリ」です。  妻に自殺されたばかりの40代の男と、若い女性の出会いから別れまでを描いたものです。男性をマーロン・ブランド、女性をマリア・シュナイダーが演じています。  パリのアパートの一室を借りようと下見に来た2人が鉢合わせし、そのまま肉体関係を結びます。互いに名前も過

          パリの街の中年男と若い女

          ある“女性”の孤独と絶望を描いた作品

           先日、東京の名画座「早稲田松竹」で「13回の新月のある年に」という作品を観てきました。  監督はライナー・ヴェルナー・ファスビンダーというドイツ人です。ファスビンダーは1945年生まれ。40本以上の作品を作り、1982年に37歳の若さで急死しています。  「13回の新月のある年に」は1978年製作。ファスビンダー自身が原案から脚本、監督、撮影、美術、編集、製作まで手がけているそうです。  この映画は、男性から女性に性転換したエルヴィラという主人公の死ぬ前の5日間を描いて

          ある“女性”の孤独と絶望を描いた作品

          映画にまつわる2本のドキュメンタリー

           映画には実写映画やアニメーション、現代映画と古典映画など、さまざまな区別が可能ですが、劇映画とドキュメンタリーという分け方もあります。劇映画はいわゆるフィクションで、つまり作り物。ドキュメンタリーは実際に起こっていることの記録を見せるというものです。  とはいえ、このフィクションとドキュメンタリーの区別は結構難しくて、たとえ実際に起こっている記録であっても「編集」という人間による作為的な処理が行われた時点でそれはもうフィクションだという人もいます。あるいはフィクションであ

          映画にまつわる2本のドキュメンタリー

          2人の建築家

          東京で海外の2人の建築家を取り上げた展覧会がそれぞれ開かれていたので、見に行ってきました。 1人はフィンランドの建築家アルヴァン・アアルト(アールトとも表記)。 1898年生まれのアアルトは公共施設や教会、個人宅などを数多く手がけたそうです。海外の仕事もいくつかあるようですが、ほとんどはフィンランド国内。残念ながら日本には彼の建築物はありません。 展覧会では彼のドローイングや模型なども展示されていて、図書館の設計では読書時の光の当たり具合まで細かく考えているのがわかりま

          2人の建築家

          あたしも僕も、みんな不完全

          王谷晶さんの短編集「完璧じゃない、あたしたち」を読みました。 23編からなり、中には戯曲も一つ入ってるけど、帯に書かれてるように主人公はすべて女性です。 短編の中でいろいろ好きなのはあったけど、大麻取締法違反が原因で生まれ故郷に戻ってきた演歌歌手の付き人を描いた「北口の女」とか、ゴミ屋敷に住む女から泥水をかけられて何かが始まる予感で終わる「春江のトップギア」、外国人女性2人が東京で偶然出会う「東京の二十三時にアンナは」、30年の時を経て女友達を作る「タイム・アフター・タイ

          あたしも僕も、みんな不完全

          三重県大台町の酒蔵さん

          三重県に元坂酒造という日本酒を醸造してる酒蔵があります。 伊勢に行ったのでこの元坂酒造さんにも寄ってみました。建物がすごく立派で、見とれちゃいます。 酒蔵見学などはしていないようですが、商品の販売はしているみたいなので、中に入って少しお話を聞かせてもらいました。 こちらでは「八兵衛」というブランドのお酒を扱っています。 いろいろな八兵衛があるのですが、チーズや中華なんかにも合うという山廃純米無濾と、ベーシックな純米酒の二種類を買いました。 で、さっそく宿で山廃純米無濾

          三重県大台町の酒蔵さん

          小津安二郎の十代

          旅行で伊勢に行ったので、どうせならとレンタカーで松阪まで足を伸ばしました。 松阪には映画監督・小津安二郎をフィーチャーした建物が2軒あります。 「小津安二郎青春館」と「小津安二郎資料室」です。 東京・深川に肥料商人の子として生まれた小津は、10歳の時に父親の郷里の松阪に引っ越し、19歳まで過ごしたそうです。 「青春館」は古い映画館のような外観で、中央には「券売場」とあり、「百円」の文字があるのですが、じっさいは無料です。 中に入るとまず15分程度の映像を案内されるので

          小津安二郎の十代